二人の出会い 1
「西に逃げたぞー」
男の声が森中に聞えた。
森の中に居た男たちは一斉に西を見た。
その視線の先には、赤い生き物。
その生き物は、ドラゴン。
そのドラゴンの鱗は、日の光を受けて輝いている。
鱗はルビーの様だが、ルビーよりも赤く、紅蓮と言うに相応しい。
ドラゴンの飛んでいる早さはとても速く、とても男たちは追いつけないだろう。
ドラゴンの金色の瞳は、鬼ごっこを楽しむ子供のように爛々と輝いている。
「急げー、見失うな!」
ドラゴンの耳に、男たちの声が届く。
「グルルルル」
ドラゴンは喉を鳴らした。
そして、紅蓮の鱗に包まれている翼を先ほどよりも早く動かす。
すると、さらに速くなり男たちはすぐに見えなくなった。
しばらく飛んでいると、岩山に赤い物が見えた。
ドラゴンは首を傾げた。
彼が見たことのある赤い物と言えば、生き物以外のものしか見たことなかった。
興味を持ち、そのものの近くに着地する。
そして目を見張った。
赤い物体、それは、人間だった。
赤、いや、紅蓮の髪に亜麻色のローブを身にまとった少年だ。
ドラゴンは、少年の瞳も気になった。
髪と同じ色か、ドラゴンと同じ金色はたまた、他の色か…。
ドラゴンは顔を近づけ、鼻で少年を突いた。
「うっ」
唸り声と共に、少年が動いた。
ドラゴンは、徐々に開く少年の瞳を見た。
ドラゴンは更に驚いた。
少年の瞳はドラゴンと同じ金色。
それは、パートナーの印。
こんなことは珍しく、一万人に一人の確率だ。
「誰だ、お前?」
少年は、ドラゴンを見てそう言った。
普通なら怖がるが、少年は一切驚かない。
それはドラゴンをさらに驚かした。
ドラゴンはゆっくりと、意識を近づけた。
少年はそれをすんなりと受け入れ、話し始めた。
(もう一度聞く。お前は誰だ?)
(俺はヴェルリス。)