表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生、千里を駆ける〜乱世最速の男の三国戦記〜【第一部】  作者: トベ・イツキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/28

第二十二話 関羽(二)

 楼桑里(ろうそうり)劉備(りゅうび)馴染みの商人が訪ねてきた。劉備(りゅうび)はこれから旅立つ安喜県(あんきけん)への準備を、僕は(あぶみ)(くら)の用立てを頼みたいと思って待ち構えていた。


 僕ら劉備(りゅうび)軍の面々は、村の入り口に赴いて、その商人一行を出迎えた。


世平(せいへい)殿、遠路はるばるよくお越しくださいました」


 軍を代表して劉備(りゅうび)が一歩前に出て、その商人に挨拶をした。敬語ではあるが、馴染みというだけあって、親しみのこもった口調だ。


 商人一行の中から、代表者と思わしき四十を過ぎたくらいの年齢の男性がそれに応えた。


「いえいえ、楼桑里(ろうそうり)は我が郡のお隣。そこまで遠い道のりではございません」


 成人男性にしては背は低い。だが、眉は太く、立派な口髭(くちひげ)(たくわ)え、背の低さが気にならないほどの威厳をもった顔つきをしている。着ている灰色の衣服は綿が入っており、だいぶ暖かそうだ。華美な装飾は着けていないが、綿入りというだけで豊かさが伝わってくる。僕は自分のペラペラの衣服を見て、少し恥ずかしくなった。


 僕は少し後退(あとずさ)ったが、そんな事に構わず、劉備(りゅうび)は僕を呼んで前に引き出した。


「こいつはうちの新入りの劉星(りゅうせい)です。


 馬に詳しいので何かと世平(せいへい)殿に頼ることがあるやもしれません」


 確かに今回、僕は馬具を新調してもらわないといけない。恥ずかしがって下がっているわけにはいかないな。僕は改めてその商人に挨拶をした。


劉星(りゅうせい)(あざな)辰元(しんげん)と申します。


 よろしくお願いします」


 僕はこの前決めた(あざな)を早速使って挨拶をした。


「これはこれは。


 私はお隣の中山国(ちゅうざんこく)を本拠に活動している馬商人の張泰(ちょうたい)(あざな)世平(せいへい)と申します。

 こちらこそよろしくお願いします」


 張泰(ちょうたい)世平(せいへい)殿か。お客様でもあるから、(あざな)世平(せいへい)殿と呼ぶべきなんだろう。先ほど、劉備(りゅうび)もそう呼んでいたようだし、それに(なら)おう。


 その世平(せいへい)殿は僕への挨拶を終えると、また劉備(りゅうび)の方へと向き直った。


「さて、商談に入る前にこの度は玄徳(りゅうび)殿に県尉(けんい)への就任祝いの贈り物がございます」


「それは、気を使わせてしまって申し訳ない」


 これには劉備(りゅうび)も恐縮しきりな様子であった。


「いえいえ。


 何しろ懇意(こんい)にしている玄徳(りゅうび)殿がこの度、我が故郷の中山国(ちゅうざんこく)にある安喜県(あんきけん)()に就任されました。安喜県(あんきけん)は私共の拠点・安国県(あんこくけん)とも近しい。これを祝わずにおれましょうか」


 そう言うと世平(せいへい)殿は手を叩き、部下の男を呼びつけた。


「おい、玄徳(りゅうび)殿に例の品を」


 一行は数頭の馬を()き連れて来ていたが、そのうちの二頭が部下に()かれてこちらに連れてこられた。


「就任祝いです。


 この二頭は差し上げます。お収めください」


 両頭とも鹿毛(かげ)(茶色)の成馬で、肉付きの良い立派な馬だ。あの二頭が劉備(りゅうび)軍に加わるのは心強い。


「これは過分な贈り物。ありがとうございます」


「いえいえ、県尉(けんい)は悪人を取り締まる大事な役職です。馬が有ったほうが良いでしょう。


 それに今後の付き合いもよろしくという意味もこもっておりますれば」


「では、喜んでいただきます」


 今回で劉備(りゅうび)も新たに馬を購入する予定であったようだが、即戦力になり得る二頭を譲り受けたのは、随分助かったことだろう。


 しかし、タダより高いものはない。二頭の馬を受け取ったのを見届けると、世平(せいへい)殿は神妙な面持ちに変わり、劉備(りゅうび)の側近くに寄って(ささや)いた。


「実は今回なのですが、もう一つお預かりしていただきたいものがあるのですが、よろしいでしょうか」


 その声色ですぐに劉備(りゅうび)も察した様子であった。


「そりゃ、訳アリですな」


「ええ、玄徳(りゅうび)殿でしか手に負えないものでございます」


 そう言うと、世平(せいへい)殿は一行の中へと進んでいった。彼が声をかけたのは一行の中でも一際体の大きい男であった。


 一行の中に図抜けて背の高い男が先ほどから目に入っていた。その風貌からもしやと思っていたが、どうやら僕の予想は当たっていたようだ。


 その長身の男は世平(せいへい)殿に並んで、のそりのそりと僕らの前に現れた。その男を示しながら世平(せいへい)殿が紹介を始める。


「この者は河東(かとう)からの流人(るにん)(ちょう)……関羽(かんう)と申す者でございます」


 その紹介後に一礼し、ようやくその長身の男が口を開いた。


「私は関羽(かんう)(あざな)雲長(うんちょう)と申します。


 訳あって故郷に戻れなくなりました。幽州(ゆうしゅう)にその名を(とどろ)かす玄徳(りゅうび)殿の傘下に加えていただきたく(まか)り越しました」


 うちで一番デカい張飛(ちょうひ)(しの)ぐ二メートルの長身。筋骨隆々で、常人の二人分はあろうかという広い肩幅を持ち、まるで壁のような威圧感を与える巨体。胸まで届く長い顎髭(あごひげ)は、漆黒で光りを反射しており、ふさふさしていた。赤みがかった褐色の肌に、吊り目気味の長い眼は、まさに物語に出てきそうな関羽(かんう)像そのままであった。


 だが、その身なりは黒のボロい衣服で、小綺麗な世平(せいへい)殿とは真反対の服装。それだけでここまでの道のりが平坦でなかったことを物語っていた。


 その関羽(かんう)の登場に、劉備(りゅうび)は興味津々なようであった。


「ほぉ、関羽(かんう)


 お前は何が出来る?」


 想像以上の好感触な反応に、関羽(かんう)は少々面食らいながらも答え出した。


「私には人に誇るほどの芸はございません。


 ただ、武術であれば一廉(ひとかど)の才はあろうかと思います」


 その返答に劉備(りゅうび)と思わずニヤリと笑う。


「ほう、それはぜひ、見せて欲しいな。


 うちで一番の強者と戦ってみせてくれないか」


 関羽(かんう)(ひざまず)いてそれに応ずる。


「ご所望とあらば」


「さて、うちで一番の強者と言うと誰になるかな」


 劉備(りゅうび)が周囲へと振り返る。すると案の定、あの男が真っ先に手を挙げた。


「ハイハイ、兄貴、オレを出してくれ。


 俺は成彦(せいげん)にも祖達(そたつ)にもさっきの試合で勝ったぞ!


 うちで一番の強者はオレだ」


 やはりというかなんというか、劉備(りゅうび)の弟分・張飛(ちょうひ)が我こそは一の強者だと立候補してきた。いつもなら成彦(せいげん)祖達(そたつ)も負けじと手を挙げる場面ではあるが、先ほどの試合で負けたばかりなので、挙げ辛いのか誰も立候補しなかった。


「まあ、俺たちは負けちまったからな。張飛(ちょうひ)でいいんじゃないか」


「よし、それなら張飛(ちょうひ)、戦ってみろ。


 しかし、もし負けたら罰を与えるぞ」


 劉備(りゅうび)は少し脅しをかけたような物言いで張飛(ちょうひ)を任命する。だが、乗りに乗ってる張飛(ちょうひ)はどこ吹く風といった様子でまるで気にしていない。


「へへ、負けたらなんでもしてやるぜ!


 あんな大きいだけの野郎なんて、ちょちょいのちょいだぜ!」


 あまりの大言壮語(たいげんそうご)っぷりに見ている方は不安になる。しかし、関羽(かんう)張飛(ちょうひ)なんて三国志好きからすれば夢の対戦カードだ。張飛(ちょうひ)に不安はあるが、それらそれとして是非とも見たい戦いだ。


 僕らは先ほどまで試合会場だった村の一角へと移った。


 関羽(かんう)は先の試合で使われていた木の棒を見つけると、一本を張飛(ちょうひ)に投げ渡した。


「ちょうどよい棒があるな。


 棒術の試合ということでどうかな?」


 張飛(ちょうひ)はその一メートル数十センチほどの棒を受け取ると、大口を開けて笑い飛ばした。


「ガッハハ、このオレ様に武器持たせるなんてな。


 オッサン、死ぬぜ!」


「ふん、ここで死ぬならそれまでよ。


 それと私はまだ二十二だ。オッサンではない」


 その言葉を聞くなり張飛(ちょうひ)は失礼な態度で笑い出した。


「は、二十二だぁ?


 三十二の間違いだろ?」


 挑発のつもりなのか、随分失礼な笑い方だ。しかし、失礼ながら、自分も関羽(かんう)が二十二歳にはとても見えなかった。あんな立派な(ひげ)を生やしていて、そんな若かったのか。


 僕はこちらの記憶がないので、こちらの世界での実年齢は不明だ。だが、転生時の肉体の感じから二十歳ということにしている。この時代はまだ数え年。数え年は誕生日が無く、年が明けると皆一斉に一つ歳を取るのが特徴だ。こちらの世界で一度、年を越したので僕の年齢は二十一歳。つまり、関羽(かんう)は僕の一つ年上ということになるな。


 そう思って見ると、やはり老け顔だ。


「どうやら目も節穴のようだな」


 関羽(かんう)も負けじと挑発を行い、両者先ほどの円の中へと入っていった。


 関羽(かんう)張飛(ちょうひ)。三国志好きなら夢の対戦カードになるだろう一戦が今、始まろうとしていた。


 《続く》

 

ここまでお読みいただきありがとうございます。


感想やご意見などいただけると、とても励みになります。


本作は別の場所でも掲載を行っておりますが、内容自体は同一のものとなっております。更新状況などに多少の違いがある場合がありますので、もしご興味があれば作者のプロフィール及び(ツイッター)アカウント等もご参照ください。


トベ・イツキ(ツイッター)アカウント

https://x.com/tobeitsuki

↑作者のtwitterアカウントです。


この作品の続きの話や三国志のことを話してます。よければよろしくお願いします。


引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ