鎧、魔術改良する
(さっきの見張りとは違うやつだな。しかも倉庫の外にいるわけで、チャンスだな。)
おれは、静かになった倉庫内で周囲の気配を探る。
「しくしく、姉さん、どうしよう、、、」
「わからないわ。でも気を強く持って。今頃、村からの救助隊が出ているはずよ。」
(どうやら姉妹のようだな。かすかに会話が聞こえるが、、、あぁそうか、さっき途中まで読んでいた4つ目の魔術効果かな。空間検知とか言ったか、、、)
俺はさっきの盗賊が放置していった魔術書をもう一度読み返すことにした。
(ほぉなるほど、この空間検知は浮遊と同じように魔力消費が殆どないのか。意識を集中させれば検知の精度も調節できるのか。)と、俺は、ふと疑問に思った。
(あれ?俺、今、灯りをつけていないよな。)
周りは暗い倉庫内だ。
(あれ?なんで魔術書を読めるんだ?あ、ここに空間検知の説明書きがあるな。)
空間検知の効果:周囲が暗闇でも視える。逆に強力な光源に照らされても視ることができる。
と、書いてある。
(これはこれですごいな。鬼火も不要だし、ゆっくり読ませてもらうとするか。)
火球、水流感知、土塊、そして空間検知。
それらの4つの魔術で一冊の魔術書が完遂していた。
(おっと、そうだ。ガストのじぃさんからもらった魔術書も読んでしまおう。)
外にいる見張りは、倉庫というよりさっきの姉妹を見張っているようだ。
空間検知の意識を少し高めただけで倉庫の外の様子が手に取るように感じることができた。
(ほぼ透視だな、これは。男のロマンがここに!いやいや、馬鹿なことを考えてないで、もうちょっと魔術の知識を得ないとな。)
俺は、魔術書に意識を戻した。
ペラリペラリと紙の音は出てしまうが、牢屋の方に意識が行ってる見張りには気づかれないだろう。
(ほぉこの魔術書は、少し違った視点で書かれているな。複数の属性を扱えることが条件となるが、それぞれ違う属性の魔術を組み合わせて、より効果の大きい、より複雑な魔術にするのか。じぃさんのチョイスはナイスだぜ。つまり、今の俺に出来そうなのは、鬼火と水膜を合わせて噴霧、霧を作り出す、とか。お互いの力の込め方が難しそうだが、活用の幅が広がるな。あとは、水流感知と土壊で地面を泥とすることができるのか。)と、次々とイメージしていった。
魔術を習得するということは、それぞれの術式を理解して覚え、イメージを魔力によって具現化することなので、ほぼ習得したと言っていいだろう。
あとは、俺の魔力の容量がどれだけあるかだが、そんなのはわからない。
一度使ってみないことには、なんとも言えないな。
(これとこれはどうかな?水流感知と空間検知を組み合わせてみたぞ。おっと、何か発動してしまったが、、、いや、これは?はぁ、なるほど生体感知ね。倉庫の外にいる見張りの盗賊や牢にいる姉妹の位置取りが瞬時に感知できたぞ。ついでに生命力も視えた。
生物内の血の流れと空気中の水分の違いによって、生命力を感知できるのか。これも使えるな。)
俺は、これで12個目の魔術を覚えたことになる。
と、また夢中になっていたら、盗賊数人が倉庫のすぐそこまで来ていた。
(やべ!)俺は、魔術書をそぉーと置いた。そしてすぐにそいつ等が倉庫に入ってきた。
「頭ぁ、信じてくださいよ。倉庫内に灯りがあって、あっしが入ると消えたんでさ。」
「だが、数人で倉庫内をチェックしても何も誰も居なかったんだろ?」
「へぃ。ですので、怪しいと思ったこの白い鎧をこんな風にロープで縛って、中に人が居ないかまで確認したんでさ。」
「そうか、こんな風になってる状況はわかった。もしかしたら、呪いか、亡霊かもな。」
「ひぃ、お、お頭ぁ〜びびらせないでくだせいよ。」
「あぁん?馬鹿野郎!!お前らそれでもこのコージ率いる東の盗賊団ファントムの一員かよ!亡霊ごときでびびってんじゃねーわ!」
「ひ!すいやせん!」
「まぁよ、次の仕事が終わったら、こいつらを売っぱらうからよ。それまでちゃんと見張ってろ。亡霊がいようが何もできやしねぇだろうし、装備しなけりゃ呪われもしないだろ。気合い入れろや!」
「へ、へい、、、」
(なるほど、しばらくしたらここをひきはらうようだな。こんだけ派手に強盗してるんだ、そろそろ国の兵隊が動くだろうしな。)
「よし、じゃぁ行くぞ。ここの見張りは一人でいいぞ。」
と、コージとかいう悪党の頭目は、表へ出ていった。
残った盗賊は三人。
誰が見張るかもめているようだが、結局、俺の鬼火を見たやつでもなく、ロープを巻き付けた奴でもない奴が見張るようだ。
「まぁ、お頭がああ言ってんだ。よっぽどのことがない限り大丈夫か?」
一人残された盗賊は、誰に言うわけでもなく独りごちている。
(脱出するならチャンスだな。)
俺は覚えたての魔術を使いたくてウズウズしていた。
、、、、、、、、、、、、、
「だぁんなぁ。」
「おわ!また、急に白い世界かよ。」
(ほんと、心臓にわるいぜ)
そんな俺の動揺を気にした様子もなくキョウカが現れ、一方的に喋ってくる。
「だんな、実はすごかったんだねぇ。」
「ん?何がだよ。」
「いやぁ、火、水、土の属性魔術を使えて、おまけに空間属性までも短期間で扱えるようになるなんて、並の人間じゃないよ?」
「お?おう。見てたのか。そりゃ、人間ではなく魔族だからな。」
「なんと、魔族だったん?でも魔族っていっても色々いるじゃん?デーモンって感じでもないし、かといって獣人や妖精族でもない。」
「あぁ人魔族ってやつだな。」
「そうかぁ、ならこの魔力量も納得かな?すごいよ、だんな。この短時間でレベルが上がっているよ。」「そ、そうかぁ?俺自身はその変化はわからないんだが?そもそもレベルって何だよ?」
「おっと、ここでこのキョウカからのアドバイスぅ。」
「人の話を聞けって、、、まぁいいか、で、何?アドバイス?」
「だんな、魔術を使いたそうにしてたけどね、今のだんなの魔力量では、覚えた魔術を連続で使うのはちょっと厳しいんだけど、このキョウカの魔力も共有してるから使えるんだよ。だから、そこは心配なくじゃんじゃん使っちゃっていいよぉ〜いいよぉ〜ぃぃぉ〜、、、」
(あ、倉庫に戻った。)
「え?どれだけ使ってもいいって?でも際限はあるだろう?」
(って、もう返事もないか。でも、魔力量については、気にしなくてもいいようだな。いっちょ派手にやってやろうじゃないか。)
とは言うものの、盗賊団をまとめて相手するのは流石に無理がある。
(そうだなぁ、まず、これとこの魔術を使って、あとは、これで仕留める。大体こんなとこかな。)
俺は、脱出の算段を考え、盗賊団が次の仕事へ出かけるのを待った。
俺がいるこの倉庫から少し行ったところに広間のように広くなった空間があり、そこに盗賊団が集合しているようだ。
(人数は、、、20人程度かな。いやぁ生体感知、便利だわ。お?いよいよ出かけるのか?)
集合していた盗賊団が外へと移動を開始した。
(2人、残ったな。留守番かな。)
よし、じゃぁ。始めるか。
まずは、俺を縛っているロープを鬼火で燃やす。
ジジジッパサ。
(ほどけた、これで動ける。)
しかし、このまま動くと鎧の各部が擦れる音がガチャガチャと出てしまう。
動く前に、キョウカに教わった次元収納を発動し、倉庫内のほとんどの物資を収納した。
そして、倉庫の扉周辺をドロ化する魔術を発動。
あと、さっき盗賊団が運び入れた物資の中で大きめの細長い木箱を扉の上に浮遊魔術で浮かせておく。
これで、準備OK。




