鎧、盗まれる
「そうじゃな。まず、我に兜を取り付けられていない状態であったために、防犯機能が働いたようじゃ。」
「防犯機能?」
「そう防犯機能、つまり呪いの発動じゃな。」
「あ。盗難というやつか。」
「そうじゃ、それとその呪いの作用の一つが触れた者を取り込む。というものじゃな。」
「創造主というのは、キキョウのことか?兜がついてれば、こんな風にならなかったのか?元に戻るにはどうしたらいい?お前は、鎧なのに、どうして、そう人族っぽいんだ?」
「これこれ、一度に問うてくるな。順を追って説明してやるから。まず、創造主はキキョウ様じゃ。我は、キキョウ様の手によって作られた。そして、お主が見えている姿は、お主が姿を現せというたから、このような姿でお主に見えているだけじゃ。そして、お主は、元に戻りたいのか?そうは思えんが?」
「うっ。むぅ、いや、言ってみただけだ、、、正直、文句を言いたかっただけだし。」
「うむ、素直でよろしい。あとは、トリセツによるとだな、鎧装備一式揃った状態で我が起動するらしい。つまり、兜がついてれば、こんな事にならなかったし、館から出ることも無かったはずじゃ。」
「トリセツ?らしい?」
「創造主が我に記録したものがトリセツじゃな。っと、この兜は、中々出来はいいが、魔力は感じんの。」
「そりゃ、ガストっていう鍛冶師が間に合わせで用意したものだしな。」
「ふむ、本来の兜であれば、、、お?それはそうと、周りが大変な事になりそうじゃの。」
「え?なに?」
そういえば、周りが騒がしい?
「では、また会おうぞ。これから、お主のことはダンナと呼ぶがよろしくじゃ。」
「え?なんで?」
「それは、トリセツに、、、、」
「ヒヒーン!!」パッカラパッカラ!
(うぉ!なんだ?)
俺は、馬の鳴き声と激しい揺れで目が覚めた。
どうやら、俺の収まっている木箱は、すでに荷馬車に積み込まれているようなんだが、、、
「やばいやばい!!逃げ切れない!!」
「オラオラ!止まれぇ!積荷を全部おいてけぇ!」
「ひぃ誰かぁ助けてくれ〜!」
周りの声から察するに、盗賊に襲われているようだ。
(、、、、早速、呪いが発動しちゃってんじゃん、、、)
荷馬車が全速力で走っているようだったが。
急に停止した。
ガタタン!「ヒヒーン、、、」
馬の鳴き声が遠のいていく。
「よっしゃ、積み荷は荷車ごといただきだぜ!」
「おぉー!!」
どうやら、運び屋は、荷車をおいて馬と一緒に逃げたようだ。
周りで歓声が上がっている。
「お頭、やりやしたね。」
「お前ら、気を抜くな。なにが積み込まれているか確認しろ。確認したら、すぐにここから離れるぞ。」
(的確な指示が出てるな。今のままじゃ、戦うすべはないし、戦ったとしても、勝てないだろうな。まぁ勝とうが負けようが、どうなるものでもないしな。ここは静観するか。)
盗賊の一人が荷車に入ってきて、検分しはじめた。
「麦と芋、、、これは何だ?」
盗賊が俺の収まっている木箱に手をかけたようだ。蓋が空き、さっと光が入り込む。
「お?おー!お頭ぁ!!」
「何だ、いいもんでもあったか?」
「これ、見てくだせい。立派な鎧一式ですぜ。」
「ほぉ。これは高く売れそうだぜ。上々だな。よし、引き上げるぞ。」
「おー!」
ってなわけで、俺は、盗まれてしまった。
呪いのせいとはいえ、今後もこんなことが続くかも知れないと思うとうんざりする俺だった。
それにこの鎧、鏡花水月の思念体?
あの白い世界は、俺の意識内だったようだ。
そう思うと声をかけてきたのは、やはり鎧である鏡花水月なんじゃなかろうか?
鎧に思念があるのかどうかは疑わしいが、、、
俺はいったい、どうなってしまうんだろうか、、、
そうして、俺は盗賊たちに運ばれ、荷馬車が停止するやいなや、盗賊たちのアジト内に運ばれた。
で、今は、まわりには誰も居ない。
(倉庫か何かの部屋かな?)
部屋の外に見張りが居るようだが、俺の木箱にまで、いびきが聞こえており、寝てしまっているようだ。
俺は、浮遊魔術で木箱の蓋を開けて、、、
おっと音を立てずに、そっと蓋を地面に置く。
外の見張りは相変わらず寝ているようだ。
(さて、蓋を開けたものの、まっくらじゃ、なんにもわからんな。少し明かりを点けるか。)
俺は、鬼火を空中に浮かび上がらせた。
本来、ライトという魔術があり、火ではなく明かりなんだろうけど、俺は仕事がらこちらを使っている。
ぼうっと、真っ暗な部屋が明るくなり、周りを確認する。
やはり倉庫なのか、様々なものが雑多に置かれている。
金品、装飾品も多いが、俺の興味を惹きつけたのは、二冊の書物だった。
その書物は、案の定、魔術書だった。
俺は、思わず小躍りしそうになった。
(思わぬところで収穫があったな。いずれ売っぱらわれてしまう魔術書だ。気兼ねなく読ませてもらおう。)
浮遊魔術で魔術書を浮かせ、俺自身は、木箱に横になった状態でペラリペラリと読んでいった。
ちなみに、この倉庫、洞窟を利用しているのか、ゴツゴツとした岩肌の壁となっており、扉のついている面だけ、木で作られている。
しっかりとした木で隙間なく組まれていて、外に灯りが漏れることはないようだが、一応、鬼火の火力を調節して、手元だけ見えるくらいの明るさにしている。
(問題は、覚えた魔術を試せないことくらいか、、、ほぉこれは、すごい。この魔術、魔力の消費も多そうだが、こいつは威力がありそうだな。今の俺では、魔力が足りないだろうが、いつかは使いたい。切り札としては十分だ。魔力ってどうやって底上げできるんだろうか?)
などと、覚えた魔術が3つほどになった時、扉が急に開いた。
バタン!
「だ、誰だ!!」
(うぉ!やべ!)
俺は、とっさに鬼火を消したが、時すでに遅し。
見張りに見つかったようだ。
「誰か居るのか!!」見張りは、扉から中には入ってこない。
見張りの持つトーチで、部屋内を照らして確認している。
そこへ、もう一人やってきたようだ。
「どうした?何かあったのか?」
「いや、倉庫内で物音がしたんだ。怪しいと思って中を見たんだが、、、」
「侵入者か!ちょっとまて、応援を呼んでくる。お前は、動かずに見張っていろ。」
「お、おぉ、わかった。」というやり取りの後、一人は仲間を呼びに行ったようだ。
もう一人は、相変わらず、部屋に入らずに扉のところで部屋を照らして様子を伺っている。
(さて、どうしたものか。ちょっと読むのに夢中になってしまったな。まだ、ガストからの魔術書も読んでいないのに。大人しくしていれば、見張りの勘違いですまないかな。いざとなったら、覚えた魔術をぶっつけ本番で使うか?)
そう、俺は、鬼火から発展させた火球という火魔術を習得したのだ。
他には、水系魔術の水流感知や土壊の上位魔術である土塊を覚えた。
火球は完全に攻撃魔術だ。
水流感知はそのまま名前の通り、川や池を探す魔術だ。
ただ探せる範囲は限定的だと思う。
土塊は、火球同様、土の塊を射出できる魔術だ。
書によるとこれも当たれば小さく爆発させることもできるようだ。
雨天や火が使えない場所での攻撃手段として有効な魔術だな。
(試したいが、今はまだ無理か?って、それどころではなかったな。)
ほどなくして、応援を呼びに行った盗賊の一人が何人か連れて帰ってきた。
「なんなんだ。こんなとこに忍び込むやつがいるか?亡霊っていう時間でもないしなぁ。」
「まぁ何かあったら、お頭にしばかれるだけじゃすまないんだから、念の為だ。」
どっかで聞いたことがあるような会話をして、近づいてきた。
「おい、どうだ?」
「いや、あれから変化はないです。でも、確かに見たんです。扉を開けた時に倉庫内に灯りがあって、すぅっと消えたんです。」
(チッ!やっぱ見られていたか。)
「よし、俺は、倉庫内の右から調べる。お前は左からだ。残りの者はここを固めろ。」




