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鎧、新アイテムを作る

(すまん、エルト)

偉そうに言ってエルトに注意した自分が恥ずかしい、、、


「ビルハインドさん、どうしたんですか?それと、兄さん、どういうこと?急にビルハインドさんが兄さんの肩を掴んだだけで喋ってないと思うけど。」

(おっと。もう一つ想定外だな。キキョウを知っているこの男、魔力特性を持っているのか。妹の方はわからないが。)


『ハイド君。実は、これは念話といってな。俺は、触れた相手と念話でしか会話ができないんだ。』

「そ、そうだったんすか。わかりました。そ、それでですね。そろそろ手を離してほしいなぁ、なんて、、、」

『おっと、失礼。』

つい、力が入ってしまっていたようだ。


「皆さん、一旦落ち着きましょう。詳しく説明しますね。」

エルトが場をまとめようとする。

この際、念話のことも説明してしまおう。

「まず、私の師、ビルハインド様は、鍛冶師で魔術も扱える心優しいお方です。ワケあって、鎧姿ですがその理由は言えません。」

(うん、心優しいうんぬんはいらんけど。)


「そして、私達はハイラックへ向かいたいのですが、土地勘がなく少し困っていました。

それと、師匠は口が聞けませんが、こうやって触れることで意思疎通が可能です。」

「あ〜念話というやつですね。ああ、それで兄さんは、ビルハインドさんの声を念話できいたんですね。」

(察しが良いな、この娘。)

「それで、馬車と剣を返してもらう見返りの一つで、俺達がハイラックまでの道案内と護衛をする。ここまでが決定事項だな。」


「はい。で、今日は、無理せずにここで野営するそうです。」

「あぁ、助かる。まだ身体がうまく動かせないから。」

「そうだね兄さん。僕も安心したら余計に動けなくなったよ。」

「お二人は、ここで安んでいてください。私は食べ物を用意いたします。」


俺は、二人が休みやすいように次元収納から、大量の枯れ草と大きな布を取り出して、馬車の荷車全体をベッドのように整えた。

「、、、なんか、すごいね?」

「、、、また、これ、どっから出したんだ?」

俺は、その質問に答えずにエルトと一緒に馬車を降りた。


(キキョウの話は、、、ま、あとでもいいか。)

さて、二人の食事だが、ロクに食べ物を口にしていなかった人間には、それなりの食事方法がある。

食べるものは、なんでもいいわけではない。魚か肉を少量と麦を入れたスープ。

これで一食。明日の朝も先程の量にパンを追加する。

体調が戻れば、あとは通常の料理を食べてもいいが、食べ過ぎるとこれまた体調が悪くなるので、あくまで半人前まで。俺は、この内容をエルトに伝えた。


『師匠、なんでそんなに詳しいんですか!』

『いや、まぁ、昔、受けた修行の一環でな。断食と言うんだが、3日間を水だけで過ごし、体内の毒を出し切って、その後の食生活を改善させるという修行だ。そして、断食開始から3日後、俺の師匠の奥さんにエルトに話した通りのことを教わったんだ。』

『そうだったんですね。興味深いですね。』

『エルトこそ、急に食べるとショック死に繋がることを知っていたじゃないか。』

『ええ、父母から聞いた旅の話を思い出したんです。』

『そ、そうか。』(、、、エルトの両親の旅って、、、)


とりあえず、今、道を塞いでしまっている馬車を移動させる。

すぐ近くの森の中のひらけた場所で、ルドルフを解放させてやった。

日は、まだ高いがまもなく夕刻だ。

(持て余した時間は、魔術修行に充てさせてもらうとするか。)


食事は、エルトを含めて三人分。

まぁそこは、エルフの村から出る時にもらった物資で足りるだろう。

二人の世話をエルトに頼み、俺は馬車から少し離れて、さっき思いついた魔術付与と属性付与を試すことにした。


まず、手のひらサイズの天樹の枝葉をいくつか取り出し、この枝葉が持っている精霊力と同程度の魔力を付与する。

なじんだら空間属性の波長を合わせて付与する。

(できたな。付与、慣れてきたな。)

同じものを10個、作ることができた。

さて次は、火球魔術を仕込んだ天樹の樹皮を沢山、作っておく。

樹火玉じゅひだま、とでも名付けるか。)


そうして、気づくと辺りは暗くなっていた。

エルトはエルトで、俺が渡した天樹の樹皮で何か練習していたようだ。

俺は、馬車の近くに戻り、エルトに手招きをした。


『はい、師匠。』

『二人の様子は?』

『夕食を召し上がった後、また、寝てしまわれました。』

『そうか、安心したからかな?朝まで起きないかもな。それで、エルトの寝る場所なんだが、あの二人に馬車の荷台を貸しているから、、、』

『ご心配には及びませんよ。木の上でもどこでも眠れますので。』

『そ、そうなのか?』

『私、エルフですよ?』

『それもそうか、、、、、、、、いやいやいや、それは俺が不安になるから、この中で寝てくれないか?』


俺は、次元収納から天幕とベッドを一つ出した。


『師匠のその次元収納って、いったいどのくらい入るんですか、、、』

(村でもらったベッドが役に立ったな。)

『まぁまぁ、それはともかくだ。この天幕は、さっき天樹の木と布で簡易的に作ったものだ。俺は寝る必要はないから不要だけど、エルトはそういうわけにはいかんだろ?』

『ありがとうございます。』

また、エルトが目をキラキラさせている。


『それで寝るには、まだ早いだろ?エルトの魔術修行をしておこうと思う。』

『あ、はい、よろしくお願いたします。』

『おっと、その前にこれを渡しておく。天樹の枝葉で作ったんだが、これは画期的だぞ。空間属性を仕込んだだけなんだが、これをお互い身に着けているだけで、念話ができるんだ。』

『え〜!すごいですね!』

『触れなきゃ念話できない不便さがなくなるんだ。ちょっと試してみよう。』


そう言って、ペンダント風に紐で仕上げた天樹の枝葉をエルトに渡した。

そして、エルトから少し距離をとり、試してみる。

『どうだ?伝わるか?』

『はい!感度良好です。』

『おそらく、見通し距離くらい離れても念話が可能だと思う。』

『遮蔽物があった場合でも念話が可能でしょうか?』

『ん?そ、そうだな。少し試すか。』


俺は、馬車の裏に周り込み、エルトから見えない位置から念話を試す。

『どうだ?』

『す、し、、き、、、くい、す。』

『ふむ、少しでも間に何かが存在すると、十分には伝わらないんだな。』


俺は、再びエルトのそばに戻り、課題を伝える。

『ありがとう。課題が見えてきた。とりあえず、今のところは、”互いが見える範囲での念話が可能なアイテム”として使おう。』

『はい。でも、このままでもすごいアイテムかと思いますけど、空間魔術?いえ、空間属性でしたっけ?』

『空間魔術の付与ではないから、魔力を持たない人間でも扱えると思う。ちなみに同じものを10個つくった。この10個は、全て仕込んだ魔力波長を同じにしているから、これを持った全員と念話が可能だ。つまり、特定の相手のみの念話ではないことに注意が必要だ。今はまだ、二人だから問題ないが。』

『ということは、特定の相手のみと念話が可能な枝葉も作れる、ということですね。同じ波長のものが2つあれば。』

『お?逆説的に物事を捉えることができるのか?そう、その通りだ。ただ、そうなると持ち替えの手間がでてくるし、間違うこともあるだろうし、、、いや、まだまだ課題が多いアイテムだな。』


(エルトを少し褒めたが、この娘と話していると自分では気付かない点が見えてくるな。)

俺は、この天樹の枝葉を腰ベルトに紐で括り付けた。

これで、エルトとの念話が格段にスムーズになる。

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