鎧、人を助ける
「た、たすけてください、、、」
そう言って、そこでバタン。
(おいおい、こんなとこで行き倒れか?目覚め悪いわ。)
「だ、大丈夫ですか?」
俺たちは、その子に駆け寄り、症状を診てみた。
息が荒いが目立った怪我はない。
(これは、脱水症状?)
俺は、エルトに触れて、念話で指示を出す。
『エルト、この子に水を飲ませてやってくれ。俺は、もう一人の方を見てくる。』
『は、はい!』
エルトは、慌てて馬車に積んでいる水を取りに行く。
俺は、茂みにいるもう一人を探す。いや、探すほどのものではなかった。
やはり、茂みの中に男が倒れていた。
(こいつは意識を失っているが、、、いや、こいつも脱水症状か?)
俺は、意識を失っている男を浮遊で茂みから馬車の荷車に運び、寝かせてやった。
(エルト、こっちにも水を)
子供の方に水を飲ませていたエルトにジェスチャーで伝える。
「そちらの方にも水ですね?」
(うまく伝わったようだ。)
俺は、子供の方も浮遊で荷車に運び、並べて寝かせてやった。
水を飲んだせいか、顔色は良くなっているように思う。
ほどなくして、二人とも意識が戻った。
戻ったようなんだが、何か言っている。
「た、たべものを、、、」
すぐさま、エルトが村を出るときにエルノからもらったパンやら野菜やらを用意し始めた。
それを二人に少しづつ食べさせてやった。
「、、、お腹が空いてたんですね、、、」
あきれたような、安堵したような気持ちが現れているエルトの言葉だった。
『エルト、二人に事情を聞いてくれ。』
『はい。』
「お二方、こんなところでどうされたんですか?あと、まだ食べ物はありますが、急にたくさん食べると死んでしまいますので、しばらく時間をあけて、お出ししますね。」
「あぁ感謝する。」
「空腹過ぎて死にそうだったんです。ありがとうございます。」
(やっと二人のまともな声が聞こえたな。)
男の方は、薄い茶髪の中肉中背で20歳くらいだろうか?
顔は、やつれきっているが生気は戻ったようだ。
もう一人の子供の方は、女の子かな?同じく茶色の短髪で、きれいな顔立ちをしている。
15歳くらい。人間に化けてるエルトと同じ年頃に見える。
二人ともまだ身体の自由がきかないはずなんだが、少し半身を起こして、ぽつりぽつりと話してくれた。
「俺は、ハイド。こっちは、ハイリン。冒険者をやっている。ただこの3日、食べ物を口にしていなかったんだ。」
「この3日、誰とも出会わなくて、、、死ぬかと思いました。」
「魔物にでも襲われたんですか?」
「いや、恥ずかしいから言いにくいんだが、盗賊に襲われて荷物を全て奪われてしまったんだ。」
「あぁ、あの盗賊たちでしょうか?」
エルトが俺に向かって聞いてくるが、そんなのはわからん。
「あの盗賊?君たちも盗賊に遭遇したのか?」
「はい、でも師匠が殲滅しま、、、」
俺は、あわてて、エルトの口を塞ぐ。が、遅かったようだ。
「何!あの盗賊団を殲滅!?マジかよ、、、。」
「ほ、本当ですか?」
『ごめんなさい、師匠。つい。』
『いや、いい。だけど、今後気をつけてくれ。相手によるが悪い人間も居る。こちらの事を知って利用してこようと企むような、な。今回、この二人は、大丈夫だろうと思うが。それより、俺がしゃべれないことを伝えてくれ。ついでに名前も言っていい。』
「えーと、私は、エルトと申します。こちらは、私の師匠のビルハインド様です。」
二人は、顔を見合わせ「?」みたいな顔をした。
「えと、失礼だが、君は、エルトさんは、剣術を嗜むのかい?そうは見えないんだが?」
(あぁそうか、俺が師匠なら、そう考えちゃうか。)
俺は、引き続きエルトに代弁してもらう。
「師匠は鍛冶師です。私は見習いです。」
「え?鍛冶師?そんな立派な鎧姿で?どこかの国の騎士様なのかと思ったが。」
「これは、商品だそうです。ただわけあって、装備しているのだと。」
「そ、そうなのか、いや、失礼を言ってすまなかった。いや、しかし、普通の鍛冶師は、盗賊団を殲滅なんてできねぇぞ。」
「師匠は、口がきけませんので、私が説明します。その前に、お二方は、盗賊に何を奪われたんですか?」
「俺達は、王都からハイファーに向かっていたんだが、あの盗賊どもに馬車と、、、って、あれ?この馬車、、、」
「はい、兄さん。僕も気が付きました。」
ハイリンは、そう言って、這いつくばりながら馬の方を見た。
「やっぱり、ルドルフ、、、無事だったんだね。兄さん!ルドルフも無事です。」
どうやら、この馬車の持ち主だったようだ。
そして、馬はルドルフというらしい。
「なぁ、えーと、ビルハインドさん?この馬車を俺達に返しては、くれないだろうか?いや、ただとは言わない。ちゃんと見返りはする。」
俺は、ただただコクリと頷いた。
そして、エルトに代弁を頼む。
「えーとですね。返すのはいいが、いくつか条件があるそうです。今、ここの国のことを教えてほしい。ハイラックまでは貸してほしい。一番近い村か街までは、どのくらい離れているか。ついでにハイラックまでの道のりを教えてほしい。とのことです。」
二人は、また、顔を見合わせ、怪訝な顔つきになっている。
「あの、エルトさん。それ、その、ビルハインドさんとどうやって話しているんですか?それに、この国にどうやって来たんですか?」
(あ、やべ、質問が具体的すぎたか。仕方がない、秘密を話すか?)
「それも後で説明しますが、、、まずは、私達の質問に答えてくださいませんか?」
「うーん、まぁ、助けてもらった上に馬車を返してくれるって言うんだから、そうだなぁ、ハイラックまで俺達が道案内と護衛という形なら、少しでも恩を返せるか?もちろん、ハイファーまで行けば、他に謝礼はする。」
俺はOKサインを出す。
「よし、じゃぁ。まずはこの国、ムハインド王国について説明しようか?」
「よろしくお願いします。」
「これは知っていると思うが、2000年以上も前に始まりの勇者ハイドランドが魔王を倒した後、興した国がこのムハインド王国だ。北には、エルトラン大陸の北部となるエルトラン山脈、南には、大陸最大の湖エルトラン湖。西にはキョプロクス砂漠。東に大森林。っと周囲を過酷な自然に囲まれている。」
(なるほど、魔族の居るエルデンリングと同じ大陸なのはエルフの村で聞いたが、だいぶ離れているようだな。ならば、言葉が通じるのも納得できる。)
「ありがとうございます。おおよその自分たちの居る位置が掴めました。と、師匠がおっしゃっています。私も自分の村から出ることがなかったので、そういう国だとは知りませんでした。」
「おいおい、知らないって、、、家族や他の村人から聞かなかったのかい?」
「まぁまぁ、兄さん。仕方ない事情があるようですよ。」
「、、、、」
(エルトは、どう説明すればいいか悩んでしまったようだ。エルフって言うわけにもいかんしな。)
「まぁいいか。それで、ここから一番近い街がハイファーで、馬車なら半日程度で着く。が、今から走らせても、日没には間に合わないだろう。」
エルトが言いにくそうにしているのを察してか、ハイドが外の太陽の位置を確認しながら、説明してくれた。
「この先、街まで村もないが、この道を南に進んで行くだけだから迷うことはない。そして、ハイファーから道が2つに別れる。更に南に行けば、隣国の大国フーエル公国だ。北東への道に行けば、ハイラックの街へ続く道だ。ハイファーからハイラックまでは、馬車で三日程度かかる。」
「ありがとうございます。食べ物には余裕がありますし、そのハイファーまでいけば、補給もできそうですね。あ、少し気になったんですが、お二方が盗賊に奪われたのは、馬車だけですか?」
「いやぁ、俺が全財産をはたいて入手したブロードソード、、、」
(ん?直剣?あぁ、多分、これ?)
俺は、次元収納から盗賊のアジトで手に入れた直剣を出して、ハイドの前に置いた。
「うぉ、そうそうこれ!って、今、どこから出したんだ?いや、それはともかく、これも俺に返してくれるのか?」
俺は、またも頷く。
「うぉーありがてぇ!これで金策もなんとかなる!感謝する!」
(喜んでもらえて何よりだ。)
「で、どうやって盗賊どもを殲滅したんだ?」
「えと、ですね、、、」
俺の念話どおりにエルトが二人に説明する。
「師匠は鍛冶師ですが、多少魔術が使えます。盗賊たちは、国の討伐隊に返り討ちにあってアジトに帰ってきました。そこで師匠が罠にはめて、一網打尽にしました。」
「ほう、なるほど。しかし、鍛冶師で魔術師か。キキョウみたいだな。」
(!!)
俺は咄嗟にハイドの両肩を掴んで叫んでいた。
『キキョウを知っているのか!あ、、、』
「ちょ、びっくりした。いや、あんた、喋れるじゃん。」
(しまった。つい、念話してしまった。これではエルトに注意を言えたもんじゃないな、、、)
俺がエルトの方を見ると、エルトは、やれやれといった表情をしている。




