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鎧、鍛冶をする

俺は、少し暇なので部屋にあった机に、昨夜、キョウカから教わった魔力付与を試してみた。

なんの魔力も感じないただの机に魔力が宿る。

(!!え?できた?)

魔術付与、属性付与でもないただの俺の魔力を流してみただけの基本動作なんだが、机にじんわり魔力が伝わっているのがわかる。


(キョウカ、どういうことだ?)

(ん?ん〜?もしかすると、この机って、、、いや、まさか、この住処全体も?)

(なんだなんだ?一人で納得せずに俺にも教えてくれ。何かわかったのか?)

(だんな、ちょっとまって、おすわり!)

(おれは犬か、、、普通の机ならこんな簡単に魔力は流れないよな?)


練習のつもりで魔力付与を試してみただけなんだが、どういうことだろうか?

(可能性は2つ。エルフの結界内だから魔力が宿りやすい。もしくは、この机や住処の素材がすべて天樹様の素材からできているとか?)

(ほぉなるほど?)

(そもそも天樹様ってなんだろうね。)

(そうだな、あとでエルトに聞いてみるか?)


さすがエルフの村には謎が多い。

俺は、そこら辺にあるもの全てに魔力付与を試してみた。

まぁおかげで付与魔力量の調節までできるようになった。

次は属性付与を試そうとした時に、エルトが戻ってきた。


住処の外からエルトの呼ぶ声が聞こえる。

「ビル様ぁ〜」


俺は住処から出て、エルトの居る地上までふわふわと降りた。

エルトが俺に触れてきた。


『ビル様、申し訳ありません。村をご案内するつもりでしたが、一件相談事がありまして、、、』

『ん?村を見て回るのは、いつでもできるから構わないが、相談事?』

『はい、私の住処まで来ていただけますか?』

『わかった。』


エルトについて、彼女の住処に移動する。

やがて見えてきたのは、木と木の間を橋渡ししてその間にすっぽりはまった住処だ。

人の背の高さほどの位置に作られており、はしごが備わっている。


『ここがエルトの?』

『そうです。が、見て頂きたいのはこちらです。』


エルトの住処の裏手に回った地上に1件の小屋があった。

よく見ると結構痛んでいる。さらに焦げた後もあちこちにある。


『ビル様、ここが私の両親の仕事場であった場所であり、火事で死んでしまった場所でもあります。』

『そ、そうか、、、』

(なんと言えばいいのか言葉が出ないな。)

『今は私が引き継いで、、、といっても、火事で傷んだところの修復とか、掃除をしているだけで、使っていない場所です。』


『エルトの両親は何の仕事をしていたんだ?』

『この村で唯一の鍛冶師でして、土の精霊術師の父と火の精霊術師の母が様々な道具を作っていました。』

『ほぉ鍛冶師だったのか。』

『ええ、ですので、ビル様が鍛冶師であるとお聞きして、とても親近感が湧きました。そして、ご一緒に旅をすることが楽しみで仕方ありません。ご迷惑かとは、思いますが。』

『ん?それは構わないんだが、今はそういう話をしている場合ではないんじゃないか?』

『あぁ、失礼しました。つい、、、えっとですね。エルノという者が相談事を持ってきていまして。』

(生体反応がこの小屋の中にあるな。エルノとか言うエルフかな?)

『わかった。話を聞こう。』


そう言って、俺達は、小屋に入る。

「あ、エルト?と白騎士様!おっと、失礼。私はエルノという者です。」

(何だ、朝に見かけた農作業エルフじゃないか。あぁ、なるほど。)


エルトに念話で伝える。

『このエルノの相談事というのは、農具が壊れたとかで直す方法がわからない。そこで俺に相談?そんなところか?』

『ええ?まだ何も言っていないのにどうしてわかったんですか?』

『まぁな、、、大体察しがついたよ。』

(そりゃ朝に見たし、現にエルノが壊れたクワを持っているからなぁ。)


『さすがビル様です。』

とか言われつつ、俺は小屋の中を観察していた。

一番目を引くのが炉である。小さ目だがしっかりしている。

そして、その周囲には、それ用の道具たちが立てかけられていた。

(なんだちゃんとした工房があるじゃないか。)


鉄の素材も置いてあった。

俺はエルトに伝える。

『良く手入れされているし、すぐにでも使えそうな工房だな。』

『はい。ですが私は火をおこすことすらできませんでした。精霊と会話できない私では、、、』

『エルト、ここで落ち込むな。とりあえず、ここの工房を使ってもいいのなら、エルノとやらに伝えてくれ。』

『はい、工房は使っていただいて問題ありません。』


エルトは、気をとりなおし、エルノに俺の念話を伝えてもらう。

「ビル様が事情を察してくれています。そのクワは、今日中に直せるから明日の朝に取りに来てくれ。との事です。」

「ほ、ほんとですか!ありがたい。よろしくお願いします。」

「あと、他の農具も傷んでいるのなら整備すると、、、よろしいんですか?ビル様?」

俺はコクリとうなずき、エルノは礼を言いながら他の農具を取りに行った。

『さて、この村で鍛冶ができるとはな。っと、エルトは見とくのか?』

『はい、是非!あ、お邪魔じゃなければですけど。』

『かなり高温の火を使うから、炉に近づかなければいいぞ。』

『ありがとうございます。』


まず壊れたクワの鉄部分を柄から外す。

炉に火を入れるため、鬼火で炉にくべた薪を燃やしていく。

エルトはその様子を懐かしそうに見ている。

俺は、手招きをしてエルトを側に来させた。


『エルト、質問なんだが、エルフは、魔術で畑を耕さないのか?』

『えーっとですね、確かに土魔術でできそうなんですが、強力すぎて手加減しても畑になりにくいそうです。使うのは、開墾するときくらいですね。そもそも土の精霊と会話できるエルフが少ないんです。それで道具に頼っている状況ですね。』


炉の炎が十分に熱くなるまで少し時間がかかる。

その間にエルフの事情を聞いたわけだが、、、

(ふぅむそうか、土の精霊魔術が使えるエルトの父親が死亡して、よりエルトへの期待があったが、エルトはそれができなかった、、、か。他のエルフから風当たりが強くなるのも仕方が無いのかもな。)


炉が高い火力を保つ頃、農作業エルフのエルノが他の鉄道具をかかえて戻ってきた。

「この小屋の外にも置いています。」

「そこに置いといてほしいそうです。」

と、エルノが怪訝な顔で尋ねてくる。

「あのぅ鎧姿で暑くないんですか?」

(どきぃ!!)

「あ、いや、失礼しました!」

エルノは、俺の威圧を恐れたのか、すぐに工房から去っていった。

(そうだよなぁこんな姿で鍛冶をしていると不審だわな。)


『エルト、他に誰が来ても、俺が仕事をしている間は、誰も入れないでくれ。』

状況を察したエルトが頷き、工房の内側から鍵をかけてくれた。

(あのエルノから噂は広まるかもなぁ。あまり、この村に長居はできないか。)


そんなことを考えながら仕事をする。

鉄素材を溶かし、鋳物に流し込み少し冷えて固まったら水で冷やして鍛造する。

カンカンと音を響かせながら、日は暮れ、夜になる。

おっと夢中になってしまったな。


エルトは、あいかわらずずっと俺の作業を見ている。

(そうだ、他にも聞きたいことがあったんだ。)

俺は手をとめ、エルトの横に座り念話を送る。

『一つ聞きたいんだが。』

『何でしょうか?』

『このエルフの住処に使われている木材なんだが、もしかしたら、天樹様からもらったものではないか?』

『え?そんなことまでわかるんですか?そうです。天樹様から頂いたものを使用しています。』

『やはりそうか!その、どんなものでもなんでもいい。枯れ葉や小枝でもいいから、その素材をもらうことは可能だろうか?』

『どんなものでもいいのですか?皆に声をかければ色々頂けると思います。でも、何に使われるんですか?』

『俺の魔術の訓練に使いたい。バチあたりだろうか?この村のルールを知らない俺は、そこは慎重にならざるを得ない。エルフ達を怒らせたくないからな。こんなナリだが、俺は小心者なんだ。』

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