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鎧、エルトを知る

「それで、素材について。」

「おぅ、まず、完成した武具に付与するという話があったが、武器や防具って、一種類のパーツだけでできているわけではないだろう?刀身や柄、鎧だったら各パーツに別れているだろう?さらにその刀身も一種類の鉱物から作り上げているわけではないんだ。」


「ふんふん、でも鉄の剣、とか銀の盾とか、あるよね。」

「それは、使われている素材として大部分を締めている素材を名指ししているだけで、実は、何種類か別の鉱物もわずかながらも使われている。例外はあるものの純粋に完全に一種類の鉱物でできたものは壊れやすいんだ。これは、自然の摂理だそうだ。また、その製法も素材に合わせて変化させるし、配合によっても変える必要がある。もちろん不純物も混じっているから、そういうのも取り除く必要がある。これが鍛造と言われる作業だな。硬すぎず、やわらかすぎず、かつ、性能の良いものをつくるのには、鍛冶師としての経験が必要になる。ここまでいいか?」

「うんうん、そこはもう職人技だよね。」


「そして、素材によっては、付与する魔力との相性も大事だと師匠から教わった。例えば、銀の盾なんかは、物理強度は鉄に比べて落ちるが、銀は魔力を付与しやすいため、さっき言ってた魔術シールドなんかを付与しやすいんじゃないか?」

「なるほど。」

「鉄の剣、っていっても鉱物としての鉄以外にも様々な鉱物が多少配合されている。その量、配合によっては、強度や耐久性が段違いになるんだ。で、魔力との相性の話がでたが、その様々な鉱物にも属性に対して相性がある。火に強いとか水に馴染みやすいとか。一般的な素材だとその効果は限定的だけど、その配合に魔石や魔晶石が入るなら、その効果は絶大になるっていう話だ。」


「そこら辺は、旦那もよくわからないんだね?」

「まぁな。魔石なんて希少も希少、市場に出回ることもないからな。あとは、強度に関して言うなら、さっき言った鍛造で手間をかければかけるほど良い品に仕上がる。ただし、やはり、素材の良し悪しに影響されるけどな。最高品質の武具を作るなら、最高の素材と最高の鍛冶師と長い時間が必要ってことだな。」


「となると、姿見の護符は、元々天樹様の枝を利用していると言っていたから、素材に魔力特性があると見て間違いないわね。」

「お?そうか。武具と違って護符なんかのアイテムだと強度は不要だから、素材さえいいものがあれば、魔術付与が簡単にできる?だが、そんなアイテムなんて見たことがない。あ、いや少し前にドワーフのガストの爺さんが使っていた鍛冶用の手袋があったな。確か鑑定能力が付与されていたマジックアイテムだった。しかしだ。珍しいのは間違いない。それは、その方法が秘匿とされていて一般的でないのか、もしくは、そんな素材が簡単に入手できないって感じかな?」


「多分、どっちもだね。私は付与の方法は知っているけど、素材の特性がそんなに重要だなんて知らなかったわ。っていうか、そのマジックアイテム、興味があるわね。いったい誰の制作物なんだか、、、」


「まぁそれはともかく、色々と試したいなぁ。その天樹様の枝葉なんか入手できないかな?」

「さぁエルトちゃんに頼んでみるしかないわね。」

「そうだな。入手できたら試すってことで。で、その付与の方法を具体的に教えてくれ。」

「そうだね。えーと、まず、最初は対象物に魔力を流し込む方法ね。こういう術式でね、、、」

「ほうほう、なるほど。」


そうして、どのくらいの時間が経過したのかはわからないが、とりあえずコツは掴めた。

「旦那、一晩で覚えちゃうって何者さ!」

「いやぁ楽しかったぞ。」

「あとは、属性付与、魔術付与ね。ここからは練習あるのみ。」


ほんとに何か試したくてうずうずしている自分がいた。

「今日はここまで。第一回、キョウカと学ぼう!終了〜」


はっ!っと、気付くとエルフの村に朝が来たようだ。

小鳥のさえずりが心地よく森の早朝を教えてくれる。

(さて、エルトに文字を教える以外に、今日は何をしようか、、、)


俺は、色々とやることが増えていることに気付いた。

(状況を整理したら、課題がはっきりとはしたが、山積み感があるな。)


俺は、樹の上の住処から顔を出し、見える範囲で早朝のエルフの村を観察した。

エルフたちは、すでに活動している。

狩りに出かけるもの、採集に向かうもの、、、


(、、、と、あれ?あの一団はなんだろう?なんか農耕具っぽいものを担いでいるな。エルフって畑仕事をするんだっけ?)

ふと疑問に思う。

まだエルトは来ないだろうし、俺は、こっそりついていくことにした。

見つからないように浮遊でついていく。

程なくして森がひらけている場所にきた。


(おぉ!なかなか立派な畑だ。そうか野菜かぁ。考えてみれば当然だな。エルフと言っても食事は必要だし、肉や魚だけで生きているわけではないものな。)

納得したので、帰るか、、、と、住処に戻ろうとした俺の背後で。


「うぁ!これは困ったな。」

「あちゃー、これ、どうする?」

(ん?農作業エルフに何かあったのか?)

木に隠れて、遠目から覗いてみる。

(あれは、、、クワかな?壊れたみたいだな。)


土をおこす鉄部分が折れて使い物にならなくなってしまっている。

直したい気持ちはあるが、話ができない上に、直すためには工房が必要となる。

どうしてやることもできないので、俺は、そのまま住処に戻った。

住処に戻ると、住処の樹の下にすでにエルトが来ていた。


「ビル様、どこに行ってらしたんですか?」

俺は、エルフの畑のある方向を指さした。


「私を待っていてくだされば、案内しますのに。」

まぁまぁとジェスチャーをしながら、俺は、エルトと共に住処に入った。

俺は、住処の中央に座り込み、エルトは、魔術書の一冊を脇に置いて向き合う。

エルトの手をとり、念話する。


『まずは、人間の使う文字や単語を教える。』

『はい、よろしくお願いします。』


こうして、朝のうちは、エルトに文字を教えて、疲れたら村の中を案内してもらうことにした。

『さて、今日はこのくらいにしようか。』

『ありがとうございます。』


エルトは、物覚えがよく、すんなりと日常使う文字は、覚えたようだ。優秀な娘だ。

『さて、昼からは、村を案内してほしい。』

『はい。ビル様、楽しみにしてらしたんですか?ビル様がびっくりするようなものは、ないと思いますけど。』

『折角、珍しい村に居るんだ。何も無いと思うより、何かあると思って見てみる方が楽しいじゃないか。』

『それもそうですね。さすがビル様です。』

『いや、何がさすがなのか?俺は、こんなんだから、食べ物の飲み食いはできない。その楽しみがない分、知識を得たいという気持ちが大きいのかもな。まぁ見聞を広めるとは、そういうことだ。エルトも多分、人間の村に行ったらわかるさ。』

『はい、それは、とても楽しみです。そしてビル様に感謝しています。この状況で村に残るより幸せな気分です。』


エルトは、顔を紅潮させて笑顔を俺に向ける。

俺は少し気恥ずかしい気分だが、他人が喜ぶ顔を見るのは、久しぶりだ。

この鎧になる前の鍛冶をやっている時は、魔王軍に納品しても何の感謝も喜びもなかったものな。


『それはそうと、エルトは、その護符は外さないんだな。』

『はい、これは、村の宝物ではありますが、その昔、私の母が人間の村へ旅に出た時に身につけていたもので、私にとっては、形見みたいなものです。長老様からは許可ももらっています。』

『そうか、、、君の両親は、、、』

『はい、もう居ません。数年前、火事で。ですので、形見としていただきました。身に着けていれば、いつも母が一緒に居ている気になれますので。』

『そうか、それは、大切な物だな。』

『はい!』


その護符を大切そうに抱きしめるエルトは、両親を失った事も関係して村を出るつもりだったようだ。

(それはそうと、エルトの母親は、なんで村から旅に出たんだろうか?まぁそのうち話してくれるかもな。)


一つの疑問を残し、朝の授業は終了した。

エルトは、昼食をとりに一度、自宅に戻った。

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