鎧、エルフの村へ入る
「もうよい!お祖父様をここまで連れてくればいいじゃないの!」
(うぉ!更にエルミの迫力が増したなぁ。牢屋で泣いていた少女とは思えない迫力だ。)
「心配ないよ、ビル様。このエルミに任せて。」
『いや、任せてって、、、実はすごいエルフなのエルミって?』
『ごめんなさい、ワケはあとで話すよ。』
「姉さま、ビル様と馬車に乗っておいてください。」
「では、私が長老様に報告してくる。エルタ、見張りを任せる。」
っと、エルテという男エルフが森の奥へ飛んでいった。
俺は、すごすごとエルトと馬車に乗り込んだ。
『エルト、少し聞きたいんだが、、、』
『すいません。あの二人の無礼を許してあげて下さい。』
『いや、それは気にしていない。村を守る役目なんだろう?責任があるんだから厳しくもなるさ。それより、エルトに対する態度が厳しいと思ってな。あと、エルミと姉妹というわけではなかったんだな。』
エルミは尚もエルタという男エルフと言い合いしているみたいだ。
『はい、私を姉のように慕ってくれていますが、エルミは長老様の孫に当たる、この村の姫様です。私とは立場が違います。』
『そうかぁ、いや、エルミはエルミで大変なのだろうが、エルトも他のエルフからかなり風当たりが強いような気がしてな。』
『はい、正直言いますと、エルミがいなければ、私は、村から追放されていたかも知れません。魔術が使えないエルフは村にいても役立たずですから、、、あ、でも、ビル様にお聞きしたお話でずいぶんと救われました。もっと調べる必要があるというのもわかりましたし。引け目を感じることなく頑張ってみます。』
『とは言うが、今のままでは中々やり辛そうだな。部外者の俺に何ができるかわからんが、何かしら手助けできればいいのだが。』
『いえ、その、お気持ちだけでも充分です。あまり甘えるわけにはいきません。なんとかしてみます。』
(えらく気合が入ったな。)
と、そこへ
「エルタはわかってくれたわ。」
エルミが外から馬車に声をかけてきた。
その声で外を見たとき、見知らぬ女エルフがそこに居た。
(だれだ?)
俺が首(兜)をかしげると、そのエルフは、クスクス笑いながら言った。
「姿見の護符を外したんですよ、ビル様。」
(エルミなのか。)
確かにエルフの特徴でもある耳が少し長い。
髪の色も薄い緑色となっているが、声はエルミだった。
しかし10歳くらいだった少女が20歳くらいにまで大きくなっている。
『この姿見の護符は、人間のようになれますが、見た目の年齢を幼くしてしまうようで。』
俺の後ろにいるエルトが伝えてきた。
あぁそうか、エルフの寿命は知らないが、その長さを推し量るに現在の彼女の成長具合は、人間で言うところの10歳くらいなのだろう。
(実際は50年以上生きているのかもなぁ。いや、キョウカが言ってたな。俺より年上なのかもって。)
「エルフの領域から出るとあんなにも能力が落ちるなんて思わなかったよ。」
「エルミ、それは長老様から散々言われていたことですよ。」
「まぁそうだけど。」
(お?前から飛行物体感知。いや飛行エルフか。)
俺は、二人とエルタに馬車の前方を指差し、合図した。
「長老様ね。」
(エルフの飛翔魔術か、いいよなぁ。)
(まだ、言ってる、、、)
(だって、俺の浮遊はゆっくり浮かしてゆっくりしか動かせないんだぞ。その浮遊魔術の能力を上げるとか、別の魔術と組み合わせて似たような効果は出せないものか?)
(そうね。だんなだったら、可能性がないことはないけどね。私もなにか気づいたら教えるよ。)
(あぁ頼む。ちょっとしたヒントでも色々とイメージが出来るみたいで、、、いやぁ魔術を覚えるのって、こんなに楽しいのか。)
(いや、そんなこと出来るのはだんなくらいだろうけど。でも、その感覚をエルトちゃんに知ってもらいたいね。)
(そうだろう?エルトには、魔力特性はあるんだから、何かキッカケをだな、、、)
キョウカとくっちゃべってる間に前方から飛んできた二人のエルフが着地した。
一人は先程のエルテ。
もう一人が長老だろう。
長老って言っても、見た目では、年齢はわからない。
多分、数百年生きているんだろう。
髪の色が薄緑というか白に近いが、さすがはエルフ、歳をとっても端正な顔立ちだ。
「エルミ!無事だったか!心配させるな!このバカモンが!」
と、口で罵声を浴びせながらも涙を流しエルミを抱きしめている。
「おじぃ、、、長老様、ごめんなさい。」
二人が落ち着くのを待って、エルトが話しだした。
「長老様、あの、申し訳ありませんでした。」
長老がエルトを睨みつけるように言い放つ。
「二人とも無事だったからいいようなものの、、、いや、まずは、そこの武人の事だな。くわしく経緯を話せ。」
「はい、わかりました。」
エルトが長老に事の次第を話し出す。俺の秘密だけは避けて。
「長老様、この方は口がきけないのですが、こうして触れて思念伝達で会話ができます。」
エルトが俺の手に触れてみせた。
「む?なんだと?」
(お?長老が動揺している?)
動揺しているのにも関わらず、頭を下げてきた。
「こたびは、二人を助けていただき感謝します。私は、この先のエルフの村の長、エルフィンといいます。ぜひ、我が村へと言いたいところではありますが、この子らの話の中に貴方様の素性はありませんでした。素性がわからない方をこのままご案内するわけには行きませぬゆえ、失礼を承知でお聞きします。どういった方か、教えてはいただきませんか?」
俺は、争う意思がないことを示すため。
その場にどっかと座り込んだ。
「見たところ、ただの人間というわけではなさそうですな。」
俺は、軽く頷き、長老に向けて手のひらを上にして、腕を伸ばした。
長老はおそるおそる俺のを手をとり、、、
『不便をおかけして申し訳ない。俺の名はビルハインド。』
『ふーむ、この感じは、、、いや、失礼。貴方はいったい?』
『率直に聞くが。キキョウというエルフの鍛冶師の名に聞き覚えがあるか?』
『なんと、やはり、貴方は、、、』
そして、俺は、長老の手を外し、フルフェイスの兜を外した。
「!!」
「な!」
男エルフ二人がすぐに、驚きながらも魔術を発動させようとする。
「静まれぇい!」
長老の一喝で臨戦態勢に入ったエルフは、静止した。
「貴方は、インテリジェンスアーマー、、、ということですな。伝承どおりであれば、その昔、キキョウ様が作られた?」
「お祖父様は、ご存知だったんですか?」
「あ、いや、ワシも大昔に聞かされただけだ。直接の面識はない。」
(さすが長老と言われるだけあるな。2000年前のエルフを知っていたか。しかも村に伝承があるだと?)
俺は兜を戻し、長老に、この鎧に刻まれた鏡花水月と記した箇所を指で指し示した。
「ふーむ、鏡花水月とな、このいにしえの文字使い、間違いなかろう。」
(え?いにしえ?俺はスラっと読めたが、普通は読めないのか?)
俺は、村長の手に触れた。
『俺は、この村に危害を加えるつもりはない。ただ、そこに居るエルトを助けてやると約束した。どうか信用してほしい。』
『そうですか、わかりました。貴方の詳細については、村でお聞きしましょう。我が村までご案内しましょう。』
そうして、俺はエルフの村に招待されることになった。
飛翔している男エルフ二人を先頭に馬車を走らせている。
荷台では、エルミが長老に今までのことの詳細を伝えている。
「ビル様はすごいんです!」
ときおり、そんな言葉が聞こえてくる。
エルトは、二人の邪魔をしないように御者台の俺の横にいる。
『エルトに頼みがあるんだが。』
『はい?何でしょうか?』
『そのエルフの村に居る間、通訳として俺のそばに居てほしい。可能な範囲でいいのだけど。』
『そうですね。ビル様がお困りになりますものね。わかりました。長老様に許可をもらいます。』
『あぁ、助かる。村に着いたら、もう一度長老を話し合う事になっている。同席を頼む。』
『いいんですか?その話し合いの場に私がいても。』
『あぁ、かまわない。長老がずっと俺に触れていなけりゃならんというのは、申し訳ないのだ。長老からキキョウに関する伝承を聞いておきたいのもあるが、交渉事もある。』
俺は、この際、ここで自分の状況を整理しようと思っている。
ついでに次元収納の中身も。
(ここはどこなのか?そこからだな。)
(うんうん、そうだね、そこからだね。)
(キョウカか。そういえば、付与について、教えてくれるんだよな。)
(お?だんな、やる気だねぇ。いいよ、今夜待ってるわ。)
なんだ、その誘い文句は?とか考えていたら、エルフの村、エルトッキュに到着したようだ。




