鎧、エルフの領域に入る
(ん〜似ている。)
(キョウカ?何が似ているって?)
(この鎧の魔力付与とその護符の魔術付与の方法が同じ形、多分。)
(ってことはキキョウが作ったものか!)
(かもね〜)
(とすると、その村はキキョウの出身地?)
(それはわからないわね。もし仮に出身地だとしたら、魔術付与のアイテムの作り方の伝承なり記録が残らないのもおかしいけど?)
(あぁそうか、製法が伝わっていない、ということはその村で作られたものだけど伝えていない?
っていうか、魔力付与の仕方、キョウカはわかるのか?魔力付与や属性付与なんて天才だけだろ?)
(まぁまぁ落ち着いて。付与については、今度説明するとして、だんなは元鍛冶師だっけ?
逆に私は、素材のことがよくわからないの。落ち着いたときに技術のすり合わせをしようか。
で、生体感知に反応ありだよ!)
(む!ほんとだ。)
俺達の馬車の進行方向から20人くらいかな、まっすぐ向かってくる。
(全員、武装しているな。)
徒歩のようで、スピードは遅い。
きっと、盗賊団とやりあった集団なのだろう。
俺は両隣にいる姉妹の頭に触れ、念話で伝えた。
『この先にこちらに向かってくる集団がいる。俺達に害をなさないだろうが、事情を聞かれるだろうし、、、そもそも俺は怪しまれる。最悪、トラブルに発展しそうだから、隠れてやり過ごそうと思う。』
『わかりました。人間の軍隊でしょうか?』
『軍なのか冒険者の集団かはわからないが、とにかく道から外れて隠れるぞ。』
ちょうど俺は、近くの水たまりを水流感知で見つけたので、馬車をそこまで進めて、馬を開放した。
この場所から向かってくる集団を生体感知でチェックしてみる。
音や会話まではわからないが、少し足早に移動しているようだ。
騎馬の一頭を先頭に後ろに20人が隊列を組んでいる。
これは、盗賊討伐の兵と思われた。
(彼らが洞窟にたどり着き、盗賊団が全滅しているのを見つけて、どう思うかな?まぁいいか、盗賊団の一つや2つ、珍しくもないだろうしな。)
「ビル様〜」
(ん?エルトとエルミが少し離れたとこ、森が深くなっている手前で手招きしているな。)
俺は、エルトの居場所まで移動した。
「ビル様、先程のところへ戻るより、ここから森に入ったほうが近いです。」
エルトの指差す先は、どうみても鬱蒼としており、馬車が通れる幅もないくらいだ。
『ここから入るって?無理じゃないか?人だけなら入れるだろうが、馬車が通れる幅ではないぞ。』
『ふふ、ご心配なく。エルミが封印を解いてくれます。』
『封印?あぁそうか、エルフの森への侵入を防ぐために何らかの防御結界が張られているのか。』
『さすがビル様です。では、エルミ、お願いします。』
『はい、姉様。』
エルミが両手を突き出して、何かを唱えると眼の前の森の空間が波打ち、さっきまで薄暗かった森に一筋の光と道が現れた。
『馬車でここを通っていきましょう。』
『お、おう。流石というかなんというか、、、エルフの結界なんて始めて見たな。』
(だんな、この結界もさっきの姿見の護符と同じ術式だよ。)
(ほぅこれもキキョウが作ったものなのか?)
(さぁ二人に聞いてみればいいんじゃない?)
(それもそうだな。)
俺達は再び馬車に乗り込み、森に忽然と現れた一本道を進む。
『二人に聞きたいことがあるんだ。さっき話した時空の館やこの鎧を作った人物なんだが、キキョウっていうエルフらしいんだ。知っているか?』
『いえ、聞いたことはないですね。』
『おじぃ、いえ、長老様なら知ってるかも。』
『ふむ、ありがとう。聞く機会があれば聞いてみるか。それはそうと、そのエルフの村?』
『エルトッキュっていう村です。』
『おぅ、そのエルトッキュに俺なんかが入っていいのか?』
『あ〜え〜と、ビル様は命の恩人です。ちゃんとワケを話せば、入れるかと、思います、、、』
『なんだなんだ、なんか怪しい返事だなぁ。まぁ入れなかったら入れなかったらで、君たちを送り届けたあとは、すぐに退散するさ。』
『いいえ、ちゃんとお礼もしたいですし、それに、、、』
『それに?』
『いえ、えーと、その、、、』
エルトが何かを言いかけてはいるが言いにくそうにしている。
『姉さまは、多分、ビル様と旅をしたいんだと思います。』
エルミが代弁した。
『ほぅ。』
『ちょ、エルミ、そんなはっきりと、、、ビル様が困ってしまわれます。』
『ん、いや、さっきも言ったが、俺には特に急ぐ用事もない。エルトが魔術を使えるようになるのを手伝ってもいい。ただ、俺がこんなナリなんで、人間の社会に入り込むには、人間の相棒が必要なんだ。それは、わかるな?』
『はい、確かに私達もびっくりしましたし。』
『人間の相棒って、その鎧を装備してもらうってこと?』
『そうだ。人間の相棒が見つかれば、あちこち旅もしやすくなるだろうからな。』
『えーと、ビル様のその旅の目的ってなんですか?』
『んっと、いや、目的か。本来は鍛冶師だし、どこかで落ち着いたら、鍛冶で暮らしていくつもりだが、まぁもう少し魔術を覚えたいっていうのがあるかな?』
『そうすると、私の目的とほぼ同じですね。』
『ん、あぁ、人間がどうやって魔術を扱えるようになったかを調べたいんだったな。』
『はい、でも、まずは村で未知の魔術について調べてみます。』
(む!前方に生体反応!?)
『ちょっと、止まれ。前から何者か近づいてくるぞ!』
『ご心配なく。おそらく、エルトッキュの者かと思います。私が前に出ます。』
俺達は馬車を止め、そこで、エルトとエルミが馬車を降りて近づいてくる何者かを待つ。
(しかし、恐ろしく早い速度で近づいてくるな。まるで飛んできているようだぞって、見えた!わっほんとに飛んできてる!)
(あれは飛翔魔術ね。)
(キョウカぁ、あれ、俺も使いたい!)
(いやいや、だんなは無理っしょ。あれは風の精霊魔術でエルフ特有のものよ。)
(そ、そうか、、、それは残念だな。いいなぁ。)
っと言っている間に二人のエルフが俺達の前にやってきた、いや、飛んできた。
二人のエルフが着地したと思ったら、エルミに駆け寄り。
「姫様!」
「ご無事でしたか!」
(ん、エルトを無視して?しかもエルミを姫様だと!)
「エルト、後でしっかり説明してもらうぞ!」
「姉さまを責めないで。ついていくって言ったのは私なんだから!」
「しかし、姫様、あなたにもしものことがあったら、長老はじめ我々はどうすればいいかわからなくなってしまいます。」
「そうです。姫様の勝手な行動は大問題です。長老様からのお叱りは覚悟なさってくださいまし。」
「ゔっ、、、」
「して、あちらの鎧の武人は何者ですか?」
「勝手に部外者をここまで招き入れたことも問題です。」
(ありゃ、こりゃまずいな。男エルフ二人にまくしたてられ、エルトも何も言えなくなっているようだし、俺も言葉を発せれないからな。)
俺は、おもむろに馬車を降り、とりあえず、この二人のエルフにひざまずいてみた。
「む。殊勝な心がけだ。」
「おとなしく我らに従うということか?」
「ビル様!」
そんな俺を見てエルミが駆け寄ってきた。
「ビル様がひざまづく必要はないよ。二人とも、この方は私達の命の恩人です。無礼は許しません!」
(あれ?エルミの雰囲気が変わった。なんというか妹属性が姫属性に変わった?)
「いや、しかし、、、」
「ですが、姫様、、、」
エルミがもの凄い表情で二人のエルフを睨みつけている。
(まさか、このコ、とんでもない実力者なのか?)
男エルフの二人は、エルミの迫力に押されて、たじたじになっている。
「エルタ様、エルテ様。ちゃんとお話しますので、姫様の話を聞いて下さいませんか?」
「いや、しかし、このまま其の者を通すわけには、、、」
「そうです。長老様の許可がないと、これ以上は通せません。」
エルタ、エルテと呼ばれた男エルフ二人は、何やら相談しだしたが、エルミが一言叫んだ。




