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鎧、静誕。”鏡花水月”の歴史が今始まる!

聖杯歴2030年、ムハインド王国の王都に近いのどかなムハイク村に一大事が迫っていた。


「戦えるものは武器を持って広場に集合!」

「王都には連絡したのか?念のため、増援も要請しておけ!」

村の守備隊が組織され、警備兵も来たる厄災に備えている状況の中、一人の若者が血気盛んに燃えていた。

(チャンスだ、有名になるチャンスだぜ。魔物がどれほどの強さかは知らんが、このチャンス必ず掴んで見せる!)彼の名はミハイル。

この村に住む下級騎士の次男坊である。


王都周辺は、滅多なことでは魔物や魔獣は出ない。

出たとしてもすぐに騎士隊に討伐されて片が付いてしまう。

それがなぜか、今朝、この村に向かってくると思われる人型の魔物が一体確認された。

全身強固な黒い鎧で身を包んだ騎士風の一体。

しかし、それにはついているべきものが無く、遠目から見た村人でも異常であることを察知させた。

そう、ついていないもの。頭部である。

普通なら兜がついていそうなものだが、兜もなければ頭もない鎧戦士。

村の子供でも知っている有名な魔物。そうそれは、

「デュ、デュラハン、、、魔物だ!デュラハンだ!すぐに村のみなに知らせないと!」

畑仕事に出ていたその鎧戦士を見た村人が大慌てで村に戻り、警備兵、冒険者ギルド、はては酒場の主人にまでその状況を説明した。

非番の警備兵や村の者もあわてて自宅に戻り、倉庫から武器を出し、村は緊張に包まれていた。


そうして、日が沈みかける頃、森からなにげに村に向かってくる一体の魔物が姿を現した。

守備隊長が組織された全員に勧告する。

「これから十分な距離まで近づくぞ。この守備隊には、魔術を使えるものがいない。

弓矢では、あの魔物に効果はないだろう。接近戦しか戦う手段はない。

なにやつは、一体。こちらは20人以上居る。

混戦にならないように3人一組でヒットアンドアウェイを連続で仕掛けるのだ。

こんなとこで命を落とすんじゃないぞ!」

隊長の作戦は理にかなっている。

これならいかに強い魔物であろうとも一体だけならば、戦線を維持できるだろう。

ただ一つの誤算を除けばであるが。

いや、隊長の誤算は2つあった。

「命を落とすんじゃないぞ!」と格好をつけている隊長のそばを一人の若者が飛び出していった。

「おぉ〜りゃぁぁぁ〜!」

「な!!まて!一人では危険だ!!」

隊長の静止も聞かずに飛び出していった若者。ミハイルである。

「チッ!しかたない、他の者も後をついていくぞ!突撃ぃ!」

(あれはミハイルといったか!あいつは猪かよ!)

命令を無視された守備隊長は、自身の考えていた作戦を台無しにされ、

”生きてたら絶対殴る!”と心に誓った。

そして、ミハイルが魔物との距離を縮め、その間合いに入るかどうか、その時、

隊長の2つ目の誤算が発現した。

ガラガラガシャーン。全身鎧の魔物が、なんの予告もなくその場に崩れ落ちたのだ。

「おわっとっと。何だ?」

これには、ミハイルも驚き足をとめ、崩れた鎧を剣先で突っつくしかできなかった。


(ここはどこだ?あぁそうか、俺は、人がいる村に向かっている途中で、兵隊どもに阻まれ、、、

そうだ、一人の若者のいきおいに驚いて、自らバラバラになったんだっけ。)

俺はその気迫にビビってしまったわけだが、(まぁ死ぬわけでもないし)と、ひとりごちた。

(結果的に村に入れたようだし、、、ん?ここは倉庫かなにかなのか?)

どういうわけか俺には目はない、どころか頭がない。しかし、ちゃんと視覚はある。

ここはトーチが一つだけの薄暗い部屋。周りにはいくつもの木箱がおいてある。

そして、俺の足元に、、、

(お?この術式の型は、なるほど。俺の周りだけ魔物封じの結界が張ってあるのか。

残念だったな、魔物ではない俺には全然効かないぜ。さてと。)

俺は、頭の無い鎧状態にもどって、この部屋の外の気配を探る。

誰もいないことを確認して扉を開けて部屋の外を覗いてみる。(目はないけどな。)

どうやら何かの建物内らしい。長い廊下の先に扉が一つある。

(うーむ、このまま廊下の先の扉に向かうと人間とばったりしちゃうことは予想できるな。)

俺は、倉庫に戻り思案する。(ここは、一芝居打つか。)


俺は、わざと大きな音が出るようにバラバラになってみた。

ガラガラガシャーン!

ド派手な音がしたあとは、静かなものだったが、、、

しばらくして、扉の開く音と、数人の足音、怒鳴り声が聞こえてきた。

「なんだ、さっきの音は!」「奥の倉庫からのようです。」「ここか?」

バン!と激しく倉庫の扉が開け放たれ、トーチを持った3人の男たちが入ってきた。

「あ、あれ?」「え?え?」って感じで部屋を見回している。

「おい、例の鎧が影も形もないぞ!」「あ、本当だ。やっぱり魔物?」

「いや結界は残っている?」「じゃぁ誰か盗みに入ったのか?」

「まさか、ギルドに盗みに入るようなそんな馬鹿がいるかよ!」

「だが、無いものは無い。」「と、とりあえず、ギルド長に報告!」

「そうだな。まだ犯人が近くにいるかもしれん。ついでにもっと人を呼んできてくれ。」

一人が部屋を出ていった。残る二人は床を調べたり、周りの木箱をチェックしている。


「おかしいな?」「何がだ?」

「いや、あの大きな音は、何だったのか、その形跡もない。」

「確かに」「無くなった鎧の音と考えるのが普通だけど、どうやって、、、?」

「そもそもあの鎧、やっぱ魔物じゃね?」

「だとしても、どうやってここから出たんだ?」「それがわからんよなぁ、、、」

(まぁ困惑はするわな。)

さて、倉庫内をチェックしている二人に気づかれないように、俺は扉から廊下に出る。

そして、廊下の先の扉に向かった。

ガチャ!急にその扉が開かれ、複数人が奥の倉庫へと向かっていった。

「おいおい、まじかよ。」

「ここに盗みに入るやつなんているわけないぜ。」

先程と同じようなことをいいながら、奥へと走り去る。

そう、俺に気づかずに。

開いた扉を通った先は、大広間だった。

(おお広い!)もう夜も遅い時間だからか、誰もいない。

(やはりギルドかな。受付やら商談する場所?お、このまま外に出られるな。)

俺は、倉庫や廊下の薄暗い天井付近を浮遊魔術で浮いていただけだったんだが、

夜ということもあって、誰に見つかるわけでもなくギルドから外へ出ることができた。

(人間というのは、自分の目線以上は見ないんだな。)っと、感じたのだった。

昔、仕事で利用するために覚えた、物を浮かす”浮遊”という魔術なんだが、

まさか、自分を浮かすことになるとは思わなかった。


(さて、これからどうするかな。ギルドと思しき建物から出たものの、いくら黒だからって鎧が浮いていたらそのうち見つかるだろうし、ウロウロするのも目立ってしまうな。)

そう思案していた時、ギルドの建物の並びの何軒か先、酒場だろうか?

灯りがついている建物から騒がしい声が聞こえた。

「あぁ、そうだよ!一番先に飛び出していったのは俺だよ!何が悪い!」

「わからん奴だな!お前の勝手な行動がみんなを危険に晒してしまうんだ!なぜ、わからない!」

(酔っ払い同士の喧嘩かな。どうやら、一人は昼間、俺に向かってきた奴のようだが、、、)

ドガ!その酒場から見覚えのある男が一人、突き飛ばされて出てきた。

「やりやがったな!表にでてこいや!」

どうやら一発喰らった男が酒場に向かって言い放ったが。

「ケッ、付き合ってられるかよ!」

建物の中からはそんな声が聞こえてきた。

「チキショー覚えてやがれ!」

酒場から追い出された男は、片側の頬をさすりながら、負け犬の遠吠えのように言うと、酒場から離れていった。

(酒場に戻る根性はないんだな。ま、ちょうどいいか。ちょっと身体を借りるとしよう。)

ここは、人間の村。この鎧状態では、村の探索どころか魔物扱いだ。

しかし、ちゃんと中身が居ればどうだろう。怪しまれずにすむはずだ。


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