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新たな噂

 太陽の光が窓から暖かく差し込む昼下がりの守闘士組合二階、吸血鬼討伐隊集合部屋にてヴィオはマヴィットに叱られていた。

「何度言ったら分かるんだ、小娘…」

 内容はというと、一人で突っ走りすぎ、人に相談しなさすぎ、と言う物だった。

 マヴィットが本当に怒っている時は、感情的に怒鳴るのではなく理論的に静かに怒るのだと言う事を目撃したナウワーは絶対にマヴィットを怒らせないようにしようと心の中で誓った。

「まぁまぁ、そんくらいでいいじゃねぇか。反省してるみてぇだしよ」

 サンラバはヴィオが長く叱られているのを見かねてマヴィットを止めようとしたがマヴィットに鋭く睨みつけられると「すまん」と一言言って黙り込んでしまった。

 マヴィットが長々とヴィオを叱っているのには理由があった。

 それは昨日の夜の事である。

 中央区の市庁舎前にて、ブルーが吸血鬼によって殺される事件が発生したのだ。

 事件当時、ヴィオはマヴィット達に黙ってスラム近くから中央区に移動して張り込みをしていたらしい。

 ヴィオは「相談する暇がなかったんです」と言い訳をしたがそれはマヴィットの怒りという火に油を注ぐ言い訳だった。

「確かに獲物を奪われた可能性のある吸血鬼がブルーを復讐の為に襲うのはオレ様も考えなかった訳じゃない、だがオレ様達は吸血鬼討伐隊として動いているのだ。行動するときは全員で話し合い、動きをある程度揃えなければ隊として機能していないと言う事は言わなくてもわかるだろう?」

 マヴィットは腕を組みながら淡々とヴィオを詰めていった。

 吸血鬼が獲物を奪われた可能性というのは、ブルーが守闘士を殺した直後に吸血鬼が現れたことから、吸血鬼が狙っていた守闘士を偶々ブルーが殺してしまい吸血鬼の獲物を横取りする形になった可能性があるという事だ。

 獲物を横取りされたことに怒った吸血鬼がブルーを殺すことはマヴィットも考えていたみたいだが結局その考えから行動を変えたのはヴィオだけだったらしい。

「全員で動いていれば、今頃吸血鬼を捕まえられていたかもしれん。小娘も守闘士としてウォダナと戦ったことがあるなら人数の有利がどれだけ有効なのかは分かっているはずだろう?」

 結局昨夜、ヴィオは吸血鬼にブルーを殺された上、逃げられてしまっていた。

 ヴィオは相当悔しそうにしていたが、一人で行動した挙句吸血鬼に逃げられたという事実がそれ以上にマヴィットの怒りを苛烈なものにしていた。

 それからマヴィットの説教はセブンが来訪してくるまで続けられた。


「お、いたいた」

 集合部屋の扉を開けて中に入ってきたセブンはその場の空気を全く気にせずにそう言った。

「なんだ、俺達を探してたのか?」

 ナウワーがセブンの言葉から推測して口を開く。

「うん、ちょっと頼みがあってね」

 セブンがそう言うとヴィオを叱っていたマヴィットが「オレ様達は便利屋じゃない、帰れ」とセブンの方を見ずに言った。

「フーン、吸血鬼の新しい噂を手に入れたんだけどそれじゃあしょうがないかぁ…」

「新しい噂って?」

 ナウワーが噂に対して興味を示すとセブンは「頼みを聞いてくれたら教えてあげる」と言って笑った。


「…で頼みって?」

 吸血鬼討伐隊は次の吸血鬼の動向を推理する材料を持っていなかったので結局全員でセブンの持ってきた噂を聞くことにしたのだった。

 マヴィットはまだ叱り足りないという感じだったが今は口を噤み、足を組んで椅子に座っていた。

「窃盗団同士の争いに巻き込まれて住む場所が無くなっちゃったって話したじゃん?」

 セブンはいつの間にかナウワーの財布からくすねたお金で買っていた白パンを齧りながら口を開いた。

「その住んでたところに大事なものを置いてきちゃって、取りに行くのを手伝って欲しいんだ」

「一人で取りにいけないのか?」

 ナウワーがそう聞くとセブンは頷いた。

「有名な窃盗団の縄張りになっちゃってさ、近づくと変な奴らが入れないようにしてくるんだよ」

「お前の頼みは分かった。で吸血鬼の噂とやらを聞かせろ」

 セブンの頼みなどどうでもいいかのようにマヴィットは言った。

「うん、実はその窃盗団、すごく強い仲間を手に入れたって噂があるんだ」

「もしかして…?」

 先ほどまでマヴィットに散々叱られてしょげていたヴィオは調子を取り戻したのか食い気味に口を開いた。

「そう、吸血鬼を仲間にしたんだって」

「その情報はどこからだ?」

 マヴィットが怪しそうにセブンに疑いの目を向けながら質問した。

「今じゃ、その窃盗団の奴ら全員そう言って脅しをかけてくるよ。自分たちに逆らえば吸血鬼にお前を殺させるってね」

「ふん、十中八九嘘だな」

 マヴィットはあきれ顔でそう言った。

「それでその窃盗団の名前は?」

 ナウワーがマヴィットを気にせず名前を聞くとセブンは嬉しそうに答えた。

「ボラ・スクーラ。聞いたことあるでしょ?」

 ボラ・スクーラ、パーヴリ内で一番の勢力を持つと噂される窃盗団。

 最近は、特に勢力拡大に力を入れているらしく他窃盗団との縄張り争いが絶えないみたいだ。それに縄張り内の店から盗みを働かない代わりにお金を自主的に納めさせていたり、ギャングのような集団になりつつあるらしい。

 裏ではパーヴリ内の豪商とも繋がりがあるという噂をナウワーは聞いたことがあった。

「今、吸血鬼の情報はそれ以外ありませんし闇雲に動くよりボラ・スクーラの吸血鬼の噂を追いかけたほうが良さそうですね」

 ヴィオはそう言って外していたマントを羽織ったりとせわしなく外に出る準備をし始めた。

 恐らくマヴィットの説教が再開される前に外に出たいのだろう。

「全く、仕方がない…」

 やれやれといった感じでマヴィットもヴィオに続いて準備を始めた。

 それを見たサンラバも黙々とマントを羽織って斧を担いだ。

「セブン、準備が終わったらすぐに出発するみたいだ。行く準備は出来てるか?」

 ナウワーがヴィオ達を見てそうセブンに言うとセブンは「いつでもいいよ」と頷いた。

 そうしてヴィオ達が準備を終えると吸血鬼討伐隊とセブンは組合の外に出た。

「アタシの住んでたところは、スラムの南側なんだ。案内するから付いてきて」

 セブンが歩き出すのを見てナウワー達も後に続く。

 ちらりとナウワーが空に目をやると遠くの空に暗い雲が浮かんでいるのが見えるのだった。


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