一円 京平と片上先輩
原京平
「入る大学、間違えたんですよ」
「ほお?」
京平の言葉を、片上先輩は耳に入れる。
「いやだって、ここ偏差値めちゃくちゃ低いし」
「まあ偏差値高い方が格好良いよな、普通に」
「虫多いし」
「私は結構好きだがな、おばあちゃん家を思い出す」
「トイレ綺麗だし」
「いや汚いよか良いだろ」
「思ったよりみんな優しいし」
「いや優しくないより良いだろ」
「僕は本来東京大学とかに入る人間なんですよ」
「いや、入ってどうする? いや、入れんとは言わんが、医者や弁護士目指す訳でもないだろ、君は。クリエイター志望だろ? なら別に大学に拘る必要もない。適材適所。無用の長物は無いのと同じだ。究極言うと野球に全く興味がない人間に大谷さんのスペック搭載しても、何の役にも立たないだろ?」
片上先輩の言葉は京平によく響く。そう、確かにそうなのだ。
「大学の価値を決めるのは自分自身だ。例えば君がクリエイターとして成功すれば、母校となるこの新潟経営大学のブランドも爆上がる。そう、私達なんだよ。経大を選び、在籍した私達がこれから新潟経営大学を塗り替えていくんだ」
片上先輩のご教授に、京平は目が覚める感覚を味わった。そうだ。京平や片上先輩など、新潟経営大学に携わる全ての人間の努力により、新潟経営大学の価値は高低するのだ。つまり、悲観している場合ではない。ここを選んだのだから、ここを強くするしかない。いや、先程の会話で分かったように、もしかしたら京平も
片上零