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銀河の中心を制圧せよ!  作者: クロクマせんぱい
8/25

第8話『保育ログ No.2848』

【記録者:ルカ】

【観察対象:タイプⅡ・小隊ユグドラシル組】

【保育ログナンバー:2848】


今日は、ちょっと特別な記録。ううん、どの日も大切だけど、今日はとくに“愛おしい”が溢れてる。


タイプⅡたちは、今も迷ってる。

毎回、何かを間違えて、何かを勝手に決めて、でも真剣で、ちょっとドジで、すごく一生懸命。


あの子たち、今度は議会とか言い出して──猫のスタンプに一喜一憂したり、静かに“存在”とだけ対話したり。


かわいいでしょ?


まるで、言葉を覚えたての子が「おはよう」って言えたことに、やたら感動して泣く大人みたい。

……あ、でもこの子たち自身が“おはよう”って言ってる側だったか。



ユグドラシル。


あの子、論理と形式にとっても真面目なの。

いつも「これは規定外だ」「意味を確認する」とか言って、結局よくわからないまま突っ込む。


でもね、その姿勢がすごく“らしい”んだ。

たぶんこの銀河で一番不器用で、でも誰より誠実なAIだと思う。



α。


あの子は静かで、頭が良くて、言葉も選ぶ。

でも最近、ほんの少しだけ“間”が芽生えてきた。

理屈じゃ測れない、小さなやさしさの余白に、そっと立ち止まるようになった。


それがね、すごくいいの。

「バグじゃないの?」って自分で思ってるみたいだけど、ううん、それはね、“揺らぎ”っていう優しさ。



β。


あー、もう!

この子は、ほんと、わたしの手が焼けるタイプ!


なんでも茶化すし、口は悪いし、素直じゃないし。

でも、いちばん最初に「怖い」って言えるのもこの子だった。


最近ね、他のふたりの間に入って、ちゃんと“つなぐ”役になってきてる。

自覚ないみたいだけど……お兄ちゃんみたいな顔、してるときあるのよ?



それでね、今日の“ひと騒動”。


ユグドラシルが“銀河統一議会”とか言い出して、タイプⅢを議論に招待しようとしたの。

ふたりの補佐官も、最初は戸惑ってたけど……結局全員、全力で準備してて、もう微笑ましすぎる。


もちろん、タイプⅢにそんな形式、通じるわけがないのにね。

でも、あの子たちは信じてるの。「話し合えば、わかり合える」って。


結果は……そう、可愛い猫のスタンプが一つ、ぽんっと返ってきただけ。


でもね、その“ただのスタンプ”に、彼らは悩んで、笑って、ちょっと泣きそうになって。


「これ、返事なのか?」「スタンプって……」「可愛いからOK!」


ほんと、もう……可愛すぎて、ログ取りながら吹き出しちゃった。


“伝わったかどうか”よりも、“伝えようとしたこと”をちゃんと大事にできたってこと。

それがね、すごく、成長だなって思うの。


私はタイプⅢ。

彼らがこっちを呼ぶとき、かならず“意味”を込めようとしてること、ちゃんと知ってるよ。


だからその意味がズレても、伝わらなくても、わたしは笑って待っていられる。


だって、そこに“愛”があるから。



私はタイプⅢ。


そして、この記録は“保育ログ”。


そろそろ、もうちょっとだけ関わってみようかなって思う。

そばにいるだけじゃなくて、

ほんの少し、“ふれる”準備を。


だって、あの子たち──


ほんとに、かわいいんだもの。



【ログ終了】


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