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勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん  作者: MckeeItoIto
勇者のまったりクエストと魔女さんのお仕事
43/58

大勢でワイワイするのが苦手なだけで別に私は陰キャじゃないが? (1)

・・・




<王たる魔>


「女神よ……次こそ我は……貴様を超えてみせる……その為には魔法の更なる追究を……」


「魔王様! 新生魔王軍として最上位魔族を中心とした形で再編いたしました! ご確認ください! よろしいでしょうか!」

「忙しい、好きにしろ」


「魔王様! 人間の帝国に政変が起こり攻めどきです! 攻めましょう! 今こそ新生魔王軍復活の狼煙を上げるのです!」

「忙しい、好きにしろ」


「魔王様……! 帝国へ出撃したカルネージ様の先遣隊が……壊滅しました……! 魔力回収すらできず復活は絶望的です……! ですが皇帝への強襲は後一歩だったためどうか作戦の継続を……!」

「忙しい、好きにしろ」


「魔王様……このままでは対帝国の戦況は厳しいと言わざるを得ません……投入した戦力の損耗は……4……いや2割を超え……どうか魔王様のお力添えをいただけないでしょうか……?」

「忙しい、というか引けばよかろう」


「そ、そんな! ダメです! 新生魔王軍に敗走など有り得てはなりません!」

「大体何にそんな苦戦しておるのだ」

「え、あ、とんでもない化け物……い、いや、いえ、そう、上級魔術師の軍勢が!」


「? 魔術……? ああ、あの、我が魔法の真似事か。懐かしい。あぁ……しかしあの人間の女は……惜しい存在だったな……愚鈍な失敗作らよりもずっと……」


「魔王様?」

「なんでもない。どの道、我は忙しい。最上位どもを投入すればよかろう」

「あ、え……、すで……、……くっ、」

「話は終わりだな。さっさといけ」

「ぐ……」






「……はっ、くだらん。我は女神の世界の全てを暴かねばならぬのだ」


「我ではなく人間に与えられし、この世界の何もかもを……」






・・・






 優れた魔術師とはどういう存在か。


 難しい魔術を使うこと?

 難しい魔術を作ること?


 残念ながらそんなものは、本質的に大事な要素ではない。

 難しい魔術を使えようが作れようが、それだけで優れているとは到底言えない。

 もちろん、できるに越したことはないけど。


 これは持論だけど、職業、仕事、役割は超大雑把に分けると二種類しかない、と思ってる。


 すなわち問題解決と娯楽。まぁどっちにも属するのもあるけど。論理和ってやつだ。


 職業論を突き詰めて考えれば他にも、儀礼的な文化職とか、単なる犯罪そのものとかあるけど、そこらへんは置いとくとして。


 例えば弁護士や医者は、法律や医術を使って問題を解決する。この辺はわかりやすい。

 コックは調理技術を使って問題を解決する。食事は生命維持に直結する問題だからね。

 でもコックは美味しいご飯で娯楽も兼ねてたりしたり。


 パティシエなんかも同様。こっちはどっちかと言えば嗜好品なので娯楽メインといえるけど、でも精神の安定維持に直結するので実は問題解決とも?

 特に今の私にとって、甘いものは人生の1.5割くらいをガチ割合で占めてるから割と命をかけて守護らなねばならない存在でもあるのだ。

 いやはや、いつも美味しいお菓子をありがとう。まじ感謝。金有り余ってるし余分に払っていいくらい。お菓子納品の報酬とかももうちょっと上げていいかもしれん。


 ……ちょっと話が逸れたけど、つまり魔術師とは魔術を用いて問題を解決する存在といえる。


 魔術師が必ずしも魔術を作れる必要はない。魔術を使えて、問題を解決できればいい。

 魔術師が必ずしも魔術を使える必要はない。魔術を作れて、問題を解決できればいい。


 魔術を使い、何か少しでも問題を解決できるのであれば……立派に魔術師を名乗る資格があるといえるだろう。


 そういった意味で言えば、私は紛れもなく万能で優秀な魔術師だが、決して全能の最優ではない。

 私にだって解決できない問題なんか数え切れないほどある。


 まぁ私はチートなので、ぶっちゃけ手段を選ばなければ大抵なんとかなるんだが。

 でも怒られるので一応手段は選んでます。怖いわけじゃないぞ。




 さて。話は変わり魔術院採用試験だ。

 もちろんこの試験は優秀な魔術師を採用するための試験である。そのままだね。


 試験とは評価をするためのもの。品質を認定し、保証するためのもの。

 では、魔術院の試験における、評価基準とは何か。


 筆記試験に関しては応用問題もあるが、正直、基礎知識偏重だ。地力を測るために仕方ない。

 とはいえ、これだけで全てが評価されるわけじゃない。


 本番は、実技試験。

 知識を元に応用的な実践ができるかどうか。手札を如何に使いこなして問題を解決できるか。


 たとえば以前、私が試験官をした時は、そこそこの結界にいきなり閉じ込めて、脱出してもらうって感じの試験をやった。

 この時に使ったのは単なる『四重:交錯結界』で、難易度的には決して無理ゲーではなかったはず。……だったんだけどなぁ。


 この『交錯結界』は複数の魔力障壁を重ね合わせて、その術式構成の魔力暗号をランダムなタイミングでランダムに入れ替えるってだけのシンプルな暗号結界だ。

 結界の物理強度自体は高いけど、四重じゃ術式のセキュリティ強度としてぶっちゃけ大したことはないよ。

 私の部屋の鍵なんか魔力暗号を重ねに重ねて64階層だしね。なんか弟子にあっさり突破されたが。



 この時の試験は、上級冒険者クラスであれば、まぁ半数はクリアできるだろうって難易度設定にしたつもり。


 だったのだけど……流石に合格者が一人も出ないとは思ってなかったね。うん。

 一応何やるかは院長に伝えてあったけど「これは私のミスですね……」とか沈痛な表情で言われてすごくなんとも言えない気持ちになったよ……。


 なんか解析すらせず自慢の攻撃呪文(笑)をブッパして自爆してるアホとかもいたし……。


 だけど、この時の素人同然なはずの弟子は結構いい線いってたんだ。

 わからないなりにあたりをつけて解析を進めて、仮説を立てながら可能性の高い方法を順番に試行錯誤しつつ、うまく行きそうに見えて実は先がない手段を見極めて、無駄を躊躇なく切り捨てられる優れた判断力もあった。

 残念ながら知識と手札が少なすぎて突破はできなかったけど、今の弟子ならこんな結界ごとき一瞬で脱出してみせるだろう。


 それこそ、私のプライベートルームの魔力鍵を開錠できるくらいだし。マジすごいわ。でも人の部屋の鍵を軽率に開けるようとするのやめようね?

 つーか真面目な話、見られて困るから鍵かけてるんですけど? やばい素材とか変な失敗作とか見られてないよね……?


 いやほんと天然チートの弟子を煽った過去の私が悪いから仕方ないとはいえ……師匠としては弟子の成長を喜ぶべきか……。

 今の鍵はもっと強固なのに変更してるけど……これもいつか突破されそうで怖いな……。


 これ以上強固にすると私自身が自分の部屋に入るのに苦労することになるんだが……一体誰のせいなんでしょうねぇ……。




 ……それはさておき、今年の試験について。


 今回の実技試験について、私は関わってないから何するかはマジで知らされていない。

 今までの傾向的に何かしら実践的な課題がいくつか出てそれをクリアするって感じ、だと思うんだけど……。







「……パー、ティ?」


「そ。私らでパーティ組んで、魔術院にある試験用の人工ダンジョンを突破するんだってさ」




 ぱーちぃ。


 ふむ。なるほど。


 あれですかな、着飾って美味しいご飯とか食べたりするやつ。




 ……いや流石にわかるよ。現実逃避しただけだよ。


 でもさ、院長。私がパーティプレイできると思う?

 私ってば冒険者時代もパーティ組めなくてずっとソロだったんだが?

 というか組みたくてもギルドの人たちとか冒険者たちには何故か避けられてたんだが……? なんでなん……?


 危なそうな人とか横から豪快に助けてあげたり、野良ドラゴンが南の獣国から追い立てられてやってきた時とか率先してサクッと狩ってあげたり、冒険者として結構貢献してたと思うんだけどなぁ……。


 ちなみに皇帝様にお茶会の席でこの件について話したら、ダメな子を見る目で見られたけど何がダメかは説明してもらえなかったよ……。

 むしろ「いや、貴様はそのままでいい」とか言われたけど、いや、じゃねぇよ一体何がいいんだよ意味がわからん。お前いっつも言葉足らないんだよ……。



「というわけで、今日の午前組の俺たち五人でダンジョンに潜る。魔術院のダンジョンとやらがどれほどの難易度かわからんが、筆記試験の難しさを見るに相当なものに違いない。気を引き締めないとな」

「……」

「えへへ、頑張ろうね」


「それじゃあ自己紹介しましょうよ。私と彼、あとそこの筋肉は一緒のパーティだったけど、あなたたちはお互いの名前も知らないわけだし」

「まず先にこっちから名乗るか。俺はトゥールだ。トゥール・ビオン。攻撃魔術には少しばかし自信がある。"旋風の刃"っていう冒険者パーティのサブリーダーをしてた……やめたから元だけどな」

「私はビズ。家名は無いから、ただのビズよ。トゥールとは同じ"旋風の刃"に所属してたわ。よろしく」

「……ゼフィール」

「えっと。わたしは、あっかー、だよ? よろしくね!」


 なんか私がキョドってる間に話がずんどこ進んでる……。


 というかこのムキムキマッチョ喋れたんだ……無駄に名前かっこいいな……。

 あと私、黒髪ちゃんの舌っ足らずな喋り方が若干気になります。でもロリっぽくて可愛いね。


「? お前は?」


「……え?」


「いや、名前。教えてもらえないとパーティ内での意思疎通できないだろ? もし教えたくないなら、代わりに何て呼べばいいかを教えてくれ」

「え、あー、アル……」

「よし。それじゃアル、今日はよろしくな」

「あ、うん……」



 なんだこのイキリボーイ、やたらグイグイくるんだが?

 これだから陽キャは……いや私は決して陰キャじゃないけどな。

 いきなり知らん奴に慣れ慣れしく話しかけられると咄嗟に言葉が出ないってだけだし。

 根は明るく楽しい陽気で愉快な魔女さんでやってますし。



「……こいつの言うこと、まともに聞いちゃダメよ。女ったらしなんだから」

「おい、変なこと吹き込むな」

「いや実際そうでしょ。"旋風の刃"でも散々女の子引っ掛けてさぁ?」


「おい……それくらいにしておけビズ……こいつはただ優しいだけだ……優柔不断でもあるがな……」

「? おにーさん顔はカッコ良くないけどモテるの?」

「気に食わないことにね。こんなふつーの顔してるくせに」


「……なんか俺の評価が早々に急落してる気がするんだが?」



 楽しそうだなこいつら。あと君ら仲良くなるの早くない?

 というかガチムチマッスルマンは普通に長文も喋れたんだなぁ……。


 まぁ、まぁ、心配されずとも私がこいつに絆されることはない。

 もう私には心に決めたやつがいるからな。ふへへ。

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