24話 魔法の限界
ー 学園都市ヴェローナ ー
ヴェローナ学園側首脳部は困惑していた。
何しろ、アッシュ・ノースフォード王子に関わる失踪や健康不良が、やたらと多いのである。
それも、サンフォーレ皇国の貴族のロペス家である。
この家族郎党含むVIPの失踪や健康不良なのである。
学園側はこの対応に追われていた。
外交問題に発展しつつあるのである。
そもそも最終的にはロペス家は一族郎党が行方不明になっているということであった。
その前に、アッシュ王子側と決闘騒動があり、アッシュ王子が関係している可能性しか考えつかなかった。
ただ、アッシュ王子は、平凡な能力しかないし、講師兼付き人として派遣されているルーナは極めて常識的でもあり、そもそも戦闘能力が低い彼らが、そのようなことができるとも思えなかった。
エピソードとしては魔法が関与しているようにしか見えないのだが、魔法はさっぱり解析できないのである。
誰かに依頼するにも、アッシュ王子一行は、拠点に帰るか、図書館に行く以外の行動はなく、怪しいところがほぼなかったのである。
昨日などは、学園で3人も体調不良者がでてきてしまい、アッシュ王子が原因なのか、そうでないのかも見分けがつかない状態になっていた。
学園側としては、これ以上アッシュ・ノースフォードが学園にいること自体が、学園全体の安全性に関わる問題として認識し、
「アッシュ・ノースフォードの追放」を決定した。
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付き人のルーナは学園の教務主任に呼ばれた。
「まことに申し訳ないのですが、
これ以上、アッシュ様がこの学園にいることは難しいように思います。」
ルーナ・ノーヴァは反駁する。
「ロペス家の失踪は、こちらは関係がないこと。
どうしてアッシュ王子を追放処分にするのか。
それとも、学園側は何か証拠をお持ちで?」
「こちらは何も証拠は持っておりません。
ただその前にひと騒動があり、
ロペス家が恨みを持つことはありうるかというだけです。」
「あの決闘にしても彼らが、
勝手にフロストヴァルドの王家に絡んできただけのこと、
本来はそこで、戦争になってもおかしくない事態です。
どうして彼らの狼藉が避難されないで、
我々が非難されるのですか。」
とルーナは激昂した。
「申し訳ありません、ルーナ様。
こちら側も、さらなる事件が起きると困るのです。
それと、申し上げにくいのですが、あの皇女様のことです。
あの方には我々は国外処分とすることができません。」
ルーナは黙るしかなかった。ルーナにしても状況は変わらないのである。
おそらく、身分でも、魔法でも格上のリリア皇女に、
何かルーナが指図できると思えない。
「我々の大変苦しい事情を、理解いただけましたらと思います。」
と言われてしまい、
ルーナも納得せざるを得なかった。
学園側は、なんとなくリリアが問題だと踏んでいるのだが、
怖くてリリアには何も言えないのだろうと考えた。
「わかりました。王子に直接伝えることは難しいので、
とりあえず『無期限の休暇』という形で扱う形でよろしいですか?」
「どんな形でも構いませんので、
とりあえず国外退去をして頂けたら大変に幸いです。」
このような流れで残念ながらアッシュは
『学園の無期限の休暇』という名目の
『国外退去』をすることとなった。
ただ、アッシュは、新鮮な『休暇』ということに単に喜び、
とくに何も詮索してこなかったのである。
アッシュは、エリザに手紙を書き、エリザのもとを訪ねる計画をし始めた。
ルーナは、アッシュがリリア皇女から距離を置くことに、ほっと安堵した。
またエリドール公国の崩壊の報が入っており、今後のことを考えると、
フロストヴァルド領にアッシュが一旦退避することが最適解のように思えた。
これで皆が、丸く収まったように思えた。
ただ一人を除いては。
ただ一人、サンフォーレの皇女リリアはこの裁定に怒り狂っていたのである。




