17話 生存本能
ー エリドール首都 リプス近郊 ー
クゼニュ公の虐殺や裏切りに怒り狂った民衆は、逃げるクゼニュ公を見つけ出し、リンチを加えた。
「あの卑怯者! 我々を見捨てて逃げるのか!」
「公国なきクゼニュ公は、もう王でもなんでもない! あいつは、ただの人殺しだ!」
民衆は、馬でクゼニュ公の馬車を追いかけ、引きずり下ろした。
民衆はその怒りをぶつけた。
「この男を殺せ!」
「この裏切り者を裁け!」
クゼニュ公とその側近たちは、民衆の怒りの前に、
抵抗することもできず、無惨に殺された。
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一方サンフィオーレ軍は、抵抗する者たちを容赦なく見せしめに殺戮し見世物にしていた。このように見せしめをして抵抗を少なくさせるのが、サンフォーレの伝統であった。そして素朴な町や村を焼き尽くしていった。
かつてのほのぼのとした辺境の地は、地獄絵図と化した、
多くの人々が命を落としたが、
生き残った者たちは、
サンフィオーレの奴隷となるか、
北の国フロストヴァルドへの過酷な逃避行を選ぶかの選択を迫られた。
生き残った者たちは、唯一の希望を胸に、フロストヴァルドへ逃避行を始める。旅先に、サンフォーレの軍勢がいないことを願って。
彼らの心には、故郷を失った悲しみなどもう既になく、
唯一生き延びることが精いっぱいであった。
愛する者も、かつて見た夢も、すべて失ったのだ。
希望はついえていた。生存本能だけが、北への逃避行を支えていた。




