天パー全裸の自己紹介!ほか
【①見た目は最高!】
のたくった髪は、透き通った白ワインの色で、たっぷり伸びた姿は、まるでマントみたいだぞ。
まつ毛も多く、ぱっちりとした目の、上品でキレイだが、可愛く幼い顔立ち。
人間のような形の両耳は持たず、代わりに透明なアングレカムの花を、左右1個ずつ生やしている。
体型は16さい女子のプロポーションを常に保つが、主な背丈は175前後、体重は160を基準に、自由に可変可能。
自意識は永遠の26さい。でも都合によって、赤子から、2万年生きた超人のフリもするぞ。
胸から足の付け根までを、のたうつ髪が丁度よく隠すから、限界ギリギリまでの露出に見えるが、普通に猥褻物陳列罪だ。
でも、後ろ側は長い天然パーマの髪が、マントみたいに広がって、背中やお尻を覆って滅多に見えないから、安心だね。
と、まあこのように容姿と声と、さらに歌声までキレイで端麗な、この微笑みの怪婦人こそが、この話の主役です。皆、よろしくね!
「我が妻以外は不要物」
「よろしくにしては当たりが強いな」
目を閉じた微笑顔で言い放つ全裸っ娘へ、モノクルを付けたトリケラトプス……レオックスが、呆れ汗をたらしてツッコんだ。
【②水の力!】
天パー全裸のメインウェポンは、水をモチーフにした極太ビームだ!
特に渦から放たれるものは、射程が遠く、範囲も広いので、最も頻繁に使われるぞ!
「うふふ! 見なさい、この威力!」
「わっ! あんなに巨大な氷山が、一撃で砕け散った~!」
空中でホバリングする天パー娘から、放たれ伸びる水の柱が、遠くそびえる大氷塊を、粉々にブッ飛ばす。
それでもなお、ビームは収まらずに、オーロラの夜空へ伸びてゆく。さながら水で作った、ピサの斜塔の悪魔バージョンだ。
ビームを撃ち終わり、すっと地上に降りた全裸女に、巨山イノシシが声をかける。
「やるわね、アンタ! ちょっと、その力を貸してくれない?」
「内容によりますが、いいですよ! 何の仕事ですか?」
全裸は、ぱっちりと開いた目の笑顔で、快く応える。
そして、小高い丘へ向かって、勢いよく水のビームが放たれた!
「……ママー。もう動いていい?」
「あら、ダメよ坊や~。せっかく、お姉ちゃんがシャワーしてくれるんだから。いい子にしててね!」
「は~い……まだかなー」
丘のような子供イノシシの壁に向かって、手加減したビームを照射し続けて、ホバリングで飛び回る主人公。
発射口である、控えめに膨らんだ胸の、なだらかな谷間を泥汚れへと向けながら、全裸は言った。
「掃除用の技じゃないんですけど~……まあ、いっか」
【③マネるぞ! 水カード】
全裸は、ビームで作った水のカードを手に取った。
そこへ突撃する、獰猛な究極カカポの雷クチバシ!
「なぜ、避けない!? 諦めたか、死ね~!」
ズガァアアン! まさに落雷のような音がして、凄まじい放電が辺りに飛び散る。
では、天パーは水属性のお約束として、電気の力に殺されたか!?
「は~ははは! 効果は抜群だっ」
「しかし、効果が無かった!」
「えっ。嘘でしょ? って、わ~! 何だ、この渦は~!?」
否。カカポのクチバシは渦の壁に遮られ、その威力は飲まれてしまった。
渦はカードから発生し、やがてカードへ吸い込まれるように消えていく。
そして、空っぽだったカードには今や、雷の矛が描かれている。
全裸はカードを持ったまま、片手をカカポへ差し出した。
「わたくしの水のカードは……渦と水面、2つの性質を持つ」
「なにぃ! 渦で相手の技や能力を取り込み、まるで鏡のような水面で反射する……コピー能力ということか!」
「自らの技で眠りなさい! サンダージャベリン!」
「しまった、うわ~!」
カードから、雷のクソデカ槍が飛び出し、カカポの体をあっさり貫く。
それに伴う放電の眩さは、誰が見てもカカポの死を確信させた。
が、しかし……。
「あ、あれ……あんまり痛くないや」
「……しまった。電気タイプに電気タイプの技は、効果は今一つでした。てへっ」
「ズコ~ッ!」
雷を操る体に、雷をぶつけても効果は薄い。皆もコピー能力を使う際は気をつけてね!
【④スゴいぞ! 必殺ワザ!】
渦壁に囲まれた、海のコロシアム。海面凝固体のタイルの上で、伊勢エビの怪物ロイヤルシーバグが巨大なハサミを振りかざした。
「ふふふ……おれのハサミ防壁は、ダイナマイト100万発分の威力さえ防ぐぞ!」
「そんな!? このままガードを固められては、タイムスコアが減ってしまう……」
「もはや勝てんなら、せめて時間を奪ってやるまでよ。はっはっは……」
「一体どうすれば……」
全裸は唇を噛んだが、次の瞬間には手に取ったカードを、胸の前に掲げていた。
先とは違った自信顔を見て、戸惑う巨大ロブスター。カードの絵柄には、同じような自信顔の天然パーマが写っている。
「カードは物真似道具に非ず。水面は、またワタシの理想さえ映すのです」
「な、なんだ~? や、ヤツの……あの妙な自信は!」
「ラストアタックです。まずは、雨のような水柱を!」
全裸が前方へカードを切る。すると、彼女を中心に、広範囲を無数の水柱が降りしきった。
ざんざ、ざんざと、槍のように。これだけでも、分厚い鋼鉄程度なら、一発でクズ鉄と化す威力である。
しかし当然、ロイヤルの赤い殻には、ヒビひとつ入ることはない。
カードが泡となって、消え散った。
「何だ、今のが限界か。嘘つきイキり女めっ。死んでしまえ!」
「次。渦のような水札を」
「わっ!? な、何だ……おれの周りを、巨大なカードが!」
唐突に、眩く透明な複数のカードが、エビ化け物の周りに現れ、回り出す。
全裸は足の先をキラめかせて跳び上がり、空中で膝を引きつけながら、飛び蹴り準備の姿勢に入った。と、同時に渦のカードがロブスターに突き刺さる。
「ヘブ──ッ!? クソ、何だこのカードは! 動けねえっ」
「防御消滅の時が間もなく来ます……あなたも、また硬き者です」
「ううっ……上等だァ! まだガードは解けてねえぞォ~ッ!」
「防御無視キック! 波乗りインパクト!」
どこからともなく、勢いよく噴き出す高圧水流。高波をまとった急降下キックは、ロブスターのガードを、カードの拘束もろとも容易く撃ち砕いた。
激しく水しぶきを飛ばすロブスターを背に、膝を曲げて着地する天パー全裸。
彼女の、のたくった髪の先が、ふわっと浮いて揺れ落ちた。そして眩しいキラつきも消えた。
「あが~! ばかな、恐竜絶滅クラスの隕石直撃にも耐えられる、このおれのハサミが~!」
「ふっ。次は惑星衝突にも耐えられる硬さに鍛えるんですね。次のワタシは、その先を目指します」
「おのれ、天パめ~! ぐわ~っ!」
ドゴォオオオン! エビ殻の爆裂音は、勝利を祝うファンファーレだ。
いつか女王を上回るために、全裸の修行は未だ続く。
「チッ。今回の報酬だ、ホラよ」
「ありがとうございます。どうです、渦壁。カワイイですか?」
「中身が最悪だ、バーカ。死ね」
憎々しげにアイテムを吐き出し、渦の壁は沈黙する。全裸は子供のように吹き出すと、ふわりと飛び立って、渦の深みを抜け出した。