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寝苦しい夜

その日も、血液が沸騰しそうに熱い日だつた。


深夜1時。

時というものを知らぬ、ばかな蝉たちが、夜灯の眩しさに昼を思つて、また絶えること無くジィィィィイイイイ、と煩く鳴き散らしていた。


いつものように寝苦しく、いつものように退屈な夜だつた。

何をするでもなく、横たわつたままに周囲を見渡してみれば、部屋に積まれた目を向けたくもないものばかりが飛び込んでくる。


カビ臭い原稿用紙に、黄色く濁つた滲み。

ホコリの積つた床。書棚。机。

何時の物だつたかとんと検討のつかぬ、開いた煎餅の袋。

カビ、ホコリ、煎餅、それ等の放つ異臭。それが微塵も気にならぬような。


天井の梁に、縄でぶら下がるように寝ているきみの姿。

異様な悪臭を放つて、つンと鼻を刺すような、近付きたくないような。


「好い加減に風呂へ這入るべきだと云つたのになァ」と、きつと耳に這入つては呉れぬ忠言をひとりごつ。


ずつとあの調子だ。あそこで、机の上で寝たまンまに、だんだんと痩せ細つて、いづれ骨ばかりになつてしまうンじゃア無かろうか。


きみを死んだとばかり思つている蛆虫が、ついに体を覆い尽くしてしまつて、それなのに未だ起きぬ。

飯は好いのか。調子が悪いのか。返事も無い。


そうやつて考えていると、なぜだか逃げたくなつて、ギュつと目をつむつて、何も見ぬように、

またいつものように夜が明けるのを、ジイつと、待つていた。

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