chapter8:僕らの週末は世話しない。
俺は白幡 俊哉
ここ最近登場がないだって??
まぁ、アホキャラの立ち位置にいるみたいだし仕方ない。
でも、こう見えて頭はいい方なんだ。
それもあってか、優が家に勉強を教わりに来ている。
何かに取り憑かれたように勉強をしだした時は、かなりびっくりした。
今は妹の楓と勉強をしていたみたいだが、色々日頃の疲れからか楓の膝の上で寝ていた。
「ったく、そこまでして勉強するもんかね。」
白幡家の両親は共働きで、父は出張によりしばらくは帰って来ず、母はとある企業の秘書をしている為、帰ってくることがほとんどない。そういう両親が居ない生活が幼い頃から俺らの日常だった。特に厳しくもされず、甘やかされもせずに育った。
それに愛情を感じない、なんて思ったことは少しはあるが、俺と楓はそれで泣き喚いたり、我儘を言ったりしなかった。もちろん寂しくはあった、時々帰って来た時は目一杯、甘えたりした。楓も気持ちが溢れた時は静かに部屋で泣いていたこともあって、俺もそばでそっと泣いていた時もあった。
多分、今の俺があるのは兄としての自分がそうしてくれたからだと思っている。
「はぁ、次、母さんが帰ってくるのいつだろう。」
料理の支度をしながら思いに耽っていた。
しばらくして料理が出来たところで楓たちが下りてきた。
「よう、目、覚めたか??」
「あぁ、おかげでな。」
「ふふっ、ゆうさん子供みたいでしたよ?」
「ははっ、そりゃよかったな!」
「楓の膝枕、なんてお前ぐらいだぞ、ははっ。」
ったく、人の気も知らないで。
まぁ、年下の女の子に膝枕されるのは、ちょっと、ちょっとだけだよ?
――良かったです。
少し馬鹿にされつつ、ご飯を食べて、また2階の俊哉の部屋に戻り、勉強を始めた。
「はぁー、あと少しでテストか。」
「覚えきれるかな、これ。」
俺は国語関係のものは大抵行ける。
しかし、数学や理科は公式や単語が多すぎて、頭が回らなくなる。
しかも物理やら化学やらと、分野によって違ってくるから尚更手強い。
「現代文とかは余裕なのにな。」
「ったく誰だよ、数学やら物理とか発見したの。」
すると後ろから声がした。
「ダメですよ、そんなに卑屈になってしまっては。」
声を掛けてきたのは。楓だった。
手には飲み物とお菓子を持って丁度、部屋を開けたところだった。
「これ、私からです。」
「どうですか?」
「その様子だとあまり進んでなさそうですが、、、」
「まぁね、いまいち進んでない。」
「でも大丈夫なんですか??」
「お家に居るの、雫ちゃん一人なんじゃ。」
「あぁ、それなら大丈夫だよ。」
「今日と明日、姉さんの家に泊まって勉強教えてもらうみたいだから。」
「だから、今はだれも家に居ないよ。」
「お姉さんって、夢月お姉さんですよね??」
「確か、柳沢学園の教師してるんじゃ。」
「お、良く知ってるね。」
「俊哉から聞いたの??」
「は、はい、夢月ちゃんに優さんがいつもこき使われてるって聞きました。」
あぁー、それしか学校では見てないもんな。
あながち間違いではないけれども、、、
「あはは、、そうだね。」
「学校ではいつものことだよ。」
少し休憩がてらに楓ちゃんとお話しした。
その後、時間が22時頃を回っていたこともあり、眠くなってきた楓ちゃんは自室に戻っていった。
「俺も流石に根詰めすぎると明日に響くか。」
それから少しだけ応用問題を解き就寝した。
朝起きると、リビングで俊哉が支度をしていた。
「あれ、どっか行くのか?」
「行くって、バイトだよ。」
「今日入って無かったんだけど、急に呼ばれてさ。」
「そうか。」
(今日は昼頃からショッピングにでも行こうかと思ってたんだけどな。)
(仕方ないか。)
俺は俊哉を玄関まで見送り、リビングまで戻った。
しばらくすると、楓ちゃんが起きたばかりだろうか、寝間着でリビングに下りてきた。
「おはようございます、ゆうさん。」
「あれ?、お兄ちゃんは??」
なんか凄い、雫を見ている感じだった。
少し寝癖が付き、服が少しはだけていた。
「その前に楓ちゃん、、一応男性の前だから服は正しておいで。」
「ふぇ、??」
「ん゙ん゙ん゙ーーーっ!!」
楓ちゃんは自身の体を確認し、顔を赤面させ慌てて2階へ駆けあがっていった。
あまり友達の妹だから思いたくないけど、やっぱり見掛けによらず、意外と大きいんだな。
何がとは言わないが、あれが。
その後、改めて寝間着からラフな格好へと着替えて下りてきた。
「その、、さっきはすいません。」
「いつも、起きた時はああなので。」
「気にしてないよ、雫もこんな感じだから。」
少し気まずい空気が流れていた。
一応、楓ちゃんも年頃の女の子だからな。
―――あ、そうだ。
「楓ちゃん、今から俺とデートに行かない??」
「へぇ??」
急遽、私は今、密かに思いを寄せている人とデートに行きます。
「お待たせしました、ゆうさん。」
「お、んじゃ行こうか――、、」
え!?
今時の中学生って、こんな大人びてんの!?
思わず見とれていた。
姫野とは違い、可愛らしくもある中に大人な感じが出ていた。
(あいつの時は凛としている感じに比べて、この子は愛らしさだな。)
(こんなの他の男子が黙ってないだろ。)
はっきり言って、俊哉の妹でも、同い年だったら好きになってるレベルだ。
「その私、変じゃないかな。」
「男性の人とお出掛けなんて、お兄ちゃん以外したことないから。」
「あ、うん。」
「とても似合ってるよ。」
「ありがとうございます///」
(よかった、変じゃなくて。)
「でも、ゆうさん、どこへ行くんですか??」
「それはね、、ショッピングだよ。」
それから私たちはショッピングモールに着いた。
「わぁー!!」
「大きいー!!」
楓ちゃんはモールに入るなり目を輝かせていた。
こういうところを見ると、まだまだ幼いんだなって思う。
「さ、行こうか。」
「うん!!」
到着したのが昼頃だったため、初めに昼食を取る事にした。
たこ焼き、うどん、アイスと色々、食べ歩いた。
思ったよりも楓ちゃんが食べるものだから、つい買ってあげてしまう。
(なんか、雫と正反対だな。)
いつからか、雫は我儘やおねだり、兄に対してあまり甘えるということをしてこなくなった。
母の仕送りで、雫に何か買ってあげてと、お金も振り込まれるが、貯まっていく一方だ。
(俊哉、お前案外面倒見いいんだな。)
服や、映画、色々散策をしていると夕方になっていた。
「あ、そうだ。」
「忘れる前に雫がもうすぐ誕生日なんだ。」
6月6日。
妹、雫の誕生日だ。
丁度、テスト前のこの日曜日が開いていたから、俊哉と来たかったのだ。
しかし、残念ながら我が友はバイトへ行ってしまった。
「あっ、そうでしたね。」
「私も来週、何か買おうかと思っていたんですよ。」
「雫ちゃん、かなり物欲がないというか、人に言わないんですよ。」
「この前も。もうすぐ誕生日だから何か欲しいものある?って聞いた時。」
「何もいらないわ、の一言だけで。」
「だから内緒で買おうと思っていました。」
あぁ、やっぱり、俺ら兄妹はよく似ている。
でも少し安心したというか、俺の前だけじゃなくてよかったと思ってもいる。
「そっか、じゃあ、頑固な妹のために行きますか。」
「そうですね、ふふっ。」
その後、買い物を終え、白幡宅へ帰宅した。
「お兄ちゃん、ただいまー。」
奥のリビングから俊哉が顔を出していた。
「あれ?、どっか行ってたのか??」
「あぁ、買い物に行ってた。」
「もうすぐ雫の誕生日だから、今日お前を誘おうと思ってたんだよ。」
「でもバイトだったから、楓ちゃんと一緒に行ってた。」
「そっか、すまんな。」
グイッとこっちを見て言った。
「妹に何かしてないよな。」
「アホか、するわけねぇーだろ。」
心配するのは分かる、でも信用しろよ。
「そうか...キスとかしてねぇーだろうな。」
バシッと音を立てながら言った。
「やるか!!」
この週末は世話しない、有意義な休日だった。