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chapter7:やくそくごと

 朝、俺は起こされていた。


「起きなさい、ねぇ…」


「ん、しずく、、まだもう少しだけ。」


 俺は揺すられていた手を跳ね除けようとしたとき。

 ――むにゅ。

 感触があった。


 それから2、3回手を動かした。


「ひゃっ!!!」


 え、この声――。

 雫じゃない。

 寝ぼけながらも少し目を開けて、左側に目をやった。


「あ。」


 バチーンっと音が家中に響き渡った。


「はぁ~、何やってんの、おにぃ。」


 雫も呆れた顔をしていた。


「仕方ない、、いやすみませんでした。」


 左頬が、かなり腫れていた。

 手の跡が残るぐらいには。


 今日は普通に休みでもなく、平日で学校だ。

 姫野さんの制服等はしっかりと乾いていた。


「じゃあ、雫、先に行くから戸締りよろしくな。」


「うん、行ってらっしゃい。」


 いつも俺が登校する時間に家を出た。

 まさか高校に入って、女の子と家を一緒に出て、登校するなんて思ってもいなかった。

 すると後ろから、俺を呼ぶ聞きなれた声が聞こえてきた。


「ゆう~くーーん!!」


 遠くから俊哉が手を振りながら走ってきていた。

 しかし、いつもならそのまま走って抱き着こうとするところまでがテンプレなのだが…

 彼は徐々に失速して立ちすくんでしまった。

 すると膝を付き、上を見上げて何か叫んでいた。


 一緒に登校していた叶夢が、膝をついて叫んでいた俊哉の、首の襟を掴んでこっちまで来ていた。


(あいつほんとに首を掴まれるの多いな。)


「おはよう、優。」


「おう、おはよう。」


 叶夢は俊哉を引っ張て来て、俺を見た後、姫野さんをチラッと見てまた、俺をジーっと見た。

 そして黙って、俺たちを通り過ぎて去っていた。


(え、何だったの。)

(俊哉のやつなんか叫んでたし。)


「ねぇ、お二人は、あなたのお友達さんよね?」


「あぁ、昔からの友人だよ。」


「悪いことは言わないは、付き合う人は選びなさい。」


(多分、俊哉の事だろう。)

(あいつ、普段人前ではあんな風にならないのにな。)


「いや、今日が特殊なだけだよ。」

「――多分。」



 学校へ着くと、玄関のところで、後ろの袖をグイッっと引っ張られた。


「ねぇ、黒田君。」

「こっち向かないで、聞いて。」


「あぁ、うん、なんだ。」


「昨日はその、ありがとう。」

「まだ、お礼をちゃんと言っていなかったから。」

「それと、学校内では極力、私に話しかけないでほしいの。」

「もちろん、嫌いというわけではないわ。」

「あまり注目を集めたくないのと、クラスでは一人で居たいから。」


「そっか、分かったよ。」


 俺はその時「クラスでは」という言葉に疑問を抱いた。


「なぁ、昼休みならいいのか??」


 姫野は昨日、図書室で昼食を取っていた。

 図書室は基本ほとんど人がいない。

 テスト期間中の時は、それなりに居るらしいが。


「その、つまり、俺も君と図書室で一緒しても良いかってことだ。」


「――え、うん///」

「いいわよ///」

「黒田君なら、大丈夫。」


「なら今日から、よろしくな。」


 振り向いて彼女を確認した。

 思った以上に顔が近かった。

 彼女の顔を見ると、頬を少し赤らめていた。


「ほら、行くわよ。」

「ち、遅刻するから///」


 はぁー、心臓にとても悪いわ。


 今日は、お互いにすれ違わずに済みそうだ。


 クラスの扉を開けると。

 窓際の奥の机に、頬を当てながら横を向いて、俊哉がブツブツと何か言っていた。



 教室へ足を踏み入れようとしたとき、また制服の袖を引っ張られた。


「誰にも言わないって約束よ。」


「あぁ、分かっている。」

「約束だ。」


 今日の私たちはお互いに向き合っていく。



 ――昼休み――


「なぁ、ゆう。」

「売店行こうぜー。」


 もうそんな時間か。

 でも今日は俊哉達には申し訳ないが先客がある。


「すまん、今日はパスで。」


 チラッと姫野さんの席を見ると、もうそこに姿はなかった。


「えぇー、、つれないなぁ~。」


 とても悲しそうな顔をしていた。

 すまんな、今日はどうしてもなんだ。


 俺はそそくさと昼食を売店で買い、図書室へと向かった。


「よう。」


「来たのね。」


 着いた頃には丁度、食べようとしていた所だった。


 机は少し長机になっており椅子が4つある。

 俺は姫野の対面に座った。


 今日はお互いに売店だった。

 しかし、静かだった。


(話題の一つでも考えておくんだった。)



(しかし、少し気まずいわね。)

(昨日はあんな様を見せてしまったのだし、当たり前ではあるけれど...そうだ!)


「ゴホンッ!」

「黒田君、そのテストが、もうすぐあるじゃない??」


「あぁ、そうだな」

「2週間もせずに、中間テスト始まるな。」

「それが、どうしたんだ??」

「勉強教えてくれなんて言っても嫌だぞ。多分、姫野の方が頭いいし、むしろこっちが教えて欲しいぐらいだ。」


「そうかしら、まぁ中学はクラスで一番だったけども。」


「じゃあ、競ってみないか??」

「負けた方は…どうしようか。」


「そうね――、」

「では、これはどうかしら。」

「負けた方は勝った方の昼食を持ってくる、または作って来るっていうのはどう?」

「それなら楽でいいでしょ??」


「そうだな、俊哉達と食べる時間が少なくなってしまうかもしれんが。」

「乗った!」


 それから勉強の日々が始まった。


 今、俺は俊哉宅にお邪魔している。

 中間テストまで後、1週間ぐらいだ。

 約束から数日勉強していたけれど、イマイチ捗らなかった。

 週末に俊哉か叶夢に分からない所を教えてもらうつもりで声を掛けると、泊りでやることになった。


「あ゙ぁ゙ー、、、わからん!!」


「はぁ、ったく、なんで少し難しいの解けて、これできねぇんだよ。」


「理屈は分かるんだが、どうも応用となると詰まる。」


 夕方ごろから開始して、3時間と少し。

 大分、煮詰まってきていた。


「少し休憩にするか。」

「なんか、飲み物持ってくるよ。」


「あぁ、助かる。」


 俊哉は頭がいい。

 というより物分かりがすごく早く、回転が速い。

 応用の問題も、難なくやって見せる。


「まじで俺が飲み込み遅いのか、あいつがやばいのかが分からんくなって来るよ。」


 俺も特段、頭が悪い方ではない

 そもそも柳沢に受かっている時点で頭がいい方ではある。

 その年によって偏差値は変わってくるが、60以上でないと難しいと言われていた。

 ので、決して悪いわけではない。


 ―――コンコン。


「おう、飲み物あり、が――...」


 来たのは俊哉の妹ちゃんだった。


「あ、ごめ、、んなさい。」

「その、私も勉強、、分からない、ところ、、、あって。」


 彼女は白幡 楓(しらはた かえで)

 少し内気な性格なのか、昔から遊んでいる俺らにですら、接し方が少し難しい。

 でも良い子なのは確かだ。妹の雫とも仲良くしてくれているから。


「うん、いいよ。丁度、息抜きに休憩してるから。」

「あいつ多分、飲み物系買いに行ってるだろうから、その間なら。」


「うん、、!!」


 俺は楓ちゃんを横に教えていた。

 去年の受験期間以来会っていなかったが、かなり成長していた。

 何処が、とは言わないが大きい。

 でも、なんで中学生と高校生を相手しているとこうも違うのだろうか。

 時々、不思議に思う。

 一つしか変わらない楓ちゃんと、同い年の女の子で思うところが違う。

 もちろん昔からの関係、というのもあるだろう。

 しかし恋愛感情なんて抱くことがない。

 可愛いなっと思うことはあれど。


 ――――それは1時間ほどだろうか、俊哉が帰って来る。


「おう、ただいま、、って」


「お兄ちゃん、その、おかえり。」


 楓はニコッとしていた。

 その膝には優が膝枕をされて寝ていた。

 相当疲れていたのだろう、優はここ数日、学校の休み時間も使って勉強していた。


「そのままにしてやれ、お兄ちゃんご飯作って来るから。」


「うん、!」


 深い眠りに落ちる。

 いつかの時、親しい幼馴染の子が居た。


「ゆう! こっちこっち!!」


「待ってよ! ✖✖✖ちゃん。」


 でも、その子は居なくなってしまった。

 僕が間違った判断をしなければ。


「――さん、ゆうさん...」


 体を揺さぶられていた。


「あ、、んん、、」

(俺は寝てしまったのか?)

(やわらかい、温かい。)


 目を開けると、楓ちゃんがこちらを覗き込んでいた。


「ゆうさん、ご飯が出来たみたいですよ。」


 やわらかい笑顔だった。


「あぁ、天使だ。」


 流石に、そのまま膝枕されている訳にもいかなかったので起き上がった。


「ごめん、折角の時間を、、」


「大丈夫ですよ、気にしてませんから。」


 ニコッと笑顔だった。

 うん、結婚しよう。


「また、いつでも言ってね。」

「よかったら家に遊びに来てもいいから。」

「雫も喜ぶだろうし。」


「はい! その時は勉強、また教えてくださいね?」

「約束ですよ。」


 そうして俺と楓はリビングへ向かった。

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