chapter4:僕らの今日は、すれ違いの連続だ。
俺は朝、クラスの扉を開けると大勢の女子から詰められていた。
「ねぇ!、これモデルの藤波さんよね!!」
「なんで一緒に写ってるの!!」
まぁ。大方昨日の事が原因で、もう雑誌に掲載されているのだろう。
面倒いので事の経緯を、あれやこれやと説明をした。
しかし、流石に姫野さんと出掛けていたとは言えなかった。
彼女にも迷惑が掛かってしまうからだ。
そして自分の席へ戻ろうとしたとき、
「人気者も大変ね。」
「まぁな。」
「あんなのするんじゃなかったよ。」
俺はそう言ってそのまま席へ着いた。
すると。
「おう! 人気者!!」
めんどくさいのが来た。
「全く、昨日連絡ないと思ったら、そういう事だったのかよ。」
「この俺を差し置いて、けしからん!!」
そう、昨日、俊哉から遊ぼうとLINEがあった。
しかし、姫野さんとの約束があったので無視していた。
返事をしてしまうと余計にめんどいからだ。
まぁこういう関係値だからできるものだ、皆はマネすんなよ??
「すまんな。」
「返す暇がなくてな。」
その時チラッと姫野さんを見た。
彼女も少し後ろを向いてこちらを見ていた。
目が合った。
瞬間に目を逸らされた。
うん、どうして。
その日は何もなく、いや一部の女子から朝の件について昼以降も詰められたが、それ以外は何もない。
しかし、今日は姫野さんとは話さなかった、いや、話せなかった。
声を掛けようとすると、そっぽ向かれてしまっていた。
「あ、あの姫野さ...」
言い切る前に言葉を遮られた。
「なに。」
「ここでは話しかけないで。」
そう言って今日一日、話も聞いてくれなかった。
しかも、嫌なものを見るように、かなり冷たい目をしていた。
まぁ、昨日の今日だからな。
彼女は友達とも思っていなかったのかもしれない。
(連絡先、聞きたいだけなんだけどな。)
――――…
昨日、彼とさよならをしてから、高揚感が抜けなかった。
そのせいもあって、昨日はよく眠れなかった。
つい彼を思い浮かべると、彼とのことを思い返してしまう。
(外が騒がしいわね、今日は特に寝たいのに、何かしら。)
今日は一段と騒がしい。
朝は毎日、少し早く登校している。
クラスに人が集まるや否や雑誌、clip loveにモデルの藤波 鏡花と黒田君が表紙で掲載されていたからだ。
「はぁ、鬱陶しいわ。」
そして今日の主役が来た。
クラスの女子の波に揉まれていた。
そして一旦落ち着いたのか、彼が私の前を通る。
「人気者は大変ね。」
「まぁな。」
「あんなのするんじゃなかったよ。」
彼は来て早々、疲れていそうだった。
しかし、目立ちたくないので、それ以上は話しかけることはなかった。
それからの今日は彼がやたらに声を掛けてくる。
この気持ちは何だろうか、鬱陶しい。
いや、あんなに注目を集めている彼が鬱陶しいのかもしれない。
この感情は嫉妬なのだろうか。分からない。数日前の彼を見て、一緒に2人で隣で歩いて話した。
だから、今日は特に彼と話したくなかった。
そして、私はやってしまった。
「ねぇ、話しかけてこないで。」
どんな顔をしていたか、わからない
でも、これでいいんだ。
僕らの今日は、すれ違いの連続だった。
姫野さんとの一件から、2週間が程が経過した。
俺は姫野さんとあの日、仲良くなったものだと思っていた。
しかし、いざ話しかけようとすると、鋭い眼光で睨みつけてくるからだ。
(はぁ、どうしたものか。)
朝、学校へ来るとザワザワしていた。
(ん?、なんだ、騒がしいな。)
朝はいつも俊哉と叶夢の3人で登校している。
お互いに家が近いからだ。
「なぁ、なんか俺らの教室前、すげー騒がしくないか??」
「そうだな、朝からなんだ?」
俺らは騒がしい自クラスの教室の後ろ扉から入ろうとした所で、1人、女の子が駆け寄ってきた。
「ごめん!!」
そう言われて俺は手を引っ張られる形で連れ去られた。
外の校舎裏まで来たところで、ようやく手を引っ張るのが止んだ。
「はぁ、はぁ。」
お互いに朝からというのもあるが、ここまで距離があるために息を切らしていた。
「あの、なんですか、いきなり。」
「ご、ごめんなさい。」
「教室前、あんな状態だったから、つい。」
彼女を見るとメガネをかけていて、どこか見覚えのある顔だった。
俺は「だれ??」という顔をしていたためか、彼女はメガネを取った。
「これで分かるよね。」
「この前はありがとう。」
この前のモールにいたモデルさんだった。
(同い歳なんだったんだな。)
(えっと、名前、なんだったけ??)
俺はここ数日、姫野さんの事で頭がいっぱいだった為に、彼女の名前を忘れてしまっていた。
雑誌も見ないので顔と名前が一致せず思い出せない。
「きょうか! 藤波 鏡花よ。」
「もう忘れちゃったの?」
彼女は、頬膨らませながら「フン!」とした感じで機嫌を悪くしたみたいだった。
「あはは...ごめん、ごめん。」
「それでどうして急に。」
「この前、連絡先交換したから送ってくれればいいのに。」
「いや〜、あの後マネちゃんに携帯見られてさ、連絡先消されちゃったんだ。ははっ。」
「だからどうしてもね。」
彼女はモジモジしていた。
何か伝えたいことがあるに違いない。
今更だが、彼女ここの学校だったのかよ。
「それで、何か用は。」
「あ、うん。」
「その、私とデ、デートして欲しいの!!」
は??
もう、ここ最近色々起こりすぎて何がなんだか分からない。
「いや、デートってダメだろ。」
「君、一応事務所所属のモデルさんだろ??」
「あ、うん、そうなんだけどね///」
「理由なくちゃ、ダメ、かな。」
彼女は後ろで手を組み、モジモジと上目遣いでこっちを見ながらに言った。
「はぁ~。」
俺は深くため息をついた。
どうしてこういう人ばかりなんだ。
しかし、断っても引き下がってくれなそうだ。
俺らの教室まで来ていたのが、何よりの証拠だ。
「分かった。」
「え!、いいの!!」
「断ってもどうせ諦めないだろ。」
「まぁねぇ~。」
やっぱりか。
そして朝の予鈴が鳴ったところで、急いで教室へ戻った。
教室へ戻ると皆がこちらを見てくる。
視線が痛い。
それもそうだ、彼女は人気モデルだろうから。
―――昼休み。
俺らは三人は屋上でご飯を食べていた。
「なぁ、ゆう。」
「さっきの何だったんだ??」
「はぁ、もうその話題はやめてくれ。」
授業の休み時間の間に、皆に咎められたために聞きたくないワードとなっていた。
「なんだよ、気になるじゃねーか。にひひっ。」
コイツ楽しそうだな。
人に気も知らないで。
「俺も気になるな。」
おっ。叶夢が気になるとは。珍しいな。
――まぁ、いいか。俺は事の経緯を話した。もちろん姫野さんの事は伏せる形で。
「へぇー、大変だな。」
「また、めんどくさいのに絡まれたな。」
「で?、デートはどこに行くんだ??」
「知らん。」
一応またLINEは交換したが連絡が来ないからわからない。
こっちからしてもいいのだが、とてもめんどくさい。
「えっと、藤波って確か大手の社長の娘じゃなかったか??」
「え、そうなのか。」
「あぁー、胃が痛くなってきた。」
姫野さんといい、藤波さんといい普通の人がいない。
しかし、デートはいいとして問題が多い。
6月の初めに一年生のみで林間学校がある。
一種のレクリエーションみたいなものらしいが、それの何が問題なのかというと、6人で1つのグループを作るのだが、俺、俊哉、叶夢、あと三人集めなければならない。1人は姫野さんに決めていたのだが、あの日から声を掛けれなくなった。
(はぁ、だるいな。)
(あと、頭も痛いし胃がキリキリしてる。)
「まぁ、なるようになるか。」
――――…
私は、1年B組 藤波 鏡花。
学生であり、モデルをやっています。
ある時、撮影している時、とある男子と出会いました。
当日、一緒に撮影するはずだったモデルの子が来なくて困っているところを、マネちゃんが連れてきたのです。
初めは年上なのかな?っと思っていました。
雰囲気が少し大人っぽくて、私よりも身長があったためかそう感じました。
別れ際に連絡先を聞きましたが、その時はお出掛けの連絡を送れず、結局はマネちゃんから消されてしまいました。
そこで!!
私は彼が同じ学校で、隣のクラス、1年A組にいることを知り、再度連絡先をもらう事ができました。
しかし「デ、デートしてください。」なんて。
「ゔぅ゙ぅ゙ぅーー、、あぁぁぁ!!」
なんであんな事、言ったのよ!!
結局、恥ずかしくて場所まで言えなかった。
自宅のベットの上で、黒田君の、優君のLINEを開いたままメッセージの無いトーク画面を、ただたた見ているだけだった。
「はぁ~、どうしよ。」
仕事柄上、恋愛は別に問題じゃない。
デートもキスも規制はない。
でもバレたら最後、少しはスキャンダルになるか、学校先で大騒ぎになるかのどちらかだ。
私はそこまでアホではない。
自分の認知度も理解しているつもりだ。
「ほんとに私、どうしちゃったのかな。」
その後も、結局メッセージを送れなかった。
――――…
あれからメッセージがない。
(結局あの子、行くつもりはないのか??)
(俺から聞くのもなんか恥ずかしいし、どうするか。)
黒田 優もまた、自宅のベットの上でLINEのプロフィールを眺めていた。
(しかし、未だに姫野のLINEを聞けていない。)
(たかが連絡先を聞くだけでここまでとは。)
「はぁ~、色々考えることがありすぎて、どうしていいものか。」
その後メッセージは来ず、しばらくは連絡が来なかった。
今日はお互いに、すれ違う日みたいだ。