chapter10:テスト終わりでも、日常は落ち着かない
―――俺は今、成績の順位表が載っている場所に来ていた。
「よぉ、お前も見に来たのか?」
1限目の終わりに、見に来ていた。
朝から貼ってあったようだが、チラッと見た時はかなりの人だかりができていた為、時間を置いて来てみた。
しかしながら、同じ考えのやつはいるようで、まぁ混んでいた。
「あれ?、叶夢は??」
見た感じ俊哉だけだった。
「あー、別に興味ないってさ。」
「まぁ、そうだよな。」
「あいつは、そういうやつだからな」
「もう、順位見たのか??」
「いや、てか人が多すぎて見えねー。」
スーパーのセールの時のような、主婦がこぞって集まっているぐらいに人だかりができている。
「昼休みにでも来るか。」
「そうだな、飯食う時間無くなっちまうだろうけど、しゃーねぇーな。」
その後、俺は結局、昼休みに夢月姉さんから頼まれごとをされ、見ることができなかった。
――…放課後。
俺は朝見れなかった順位を見るためにまた来ていた。
まぁこの時間になってくると、数人しかいない。
「えーっと、どれどれ。」
名前は無いだろうと思いながら見ていた。
ここに無くても明日の朝に、自身の総合順位表が配られるため、下位の順位の場合はそれを確認すればいい。
「あ、あった。」
左から右へと流れるように下位→上位となっているため、左から見ていた。
すると、
41位 黒田 優の名前があった。
「こんなに高順位だったのか、なんか意外だったな。姫野の名前はあるのか??」
自分の順位前を見ている時は、姫野の名前は無かったため、自分の続きから見ていった。
これで名前があると、嫌だが、気にはなる。
26位のところで、白幡 俊哉の名前があった。
「あいつ、高すぎだろ。」
17位に音無 叶夢。
そして、少しして彼女の名前があった。
5位 姫野 茜。
「おい、どうなってんだ。」
多分、俺はそもそも勝てない勝負を吹っ掛けられたみたいだ。
今回のテストは、全部合わせて800で満点だ。
少し驚きながらも、横を見ると隣に人がいた。
見ると、背丈は高くなく、小柄で白髪の髪色をしていた。
別に人が、学生が居るのは不思議じゃない。ここは学び舎だ。
しかし、彼女を見ると目が惹きつけられてしまう。
美貌のせいなのか、凛とした空気間が姫野と似ているからか分からない。
すると彼女がこちらを見た。
(あ、やべっ!、流石に見すぎたか。)
「どうかしたの??」
綺麗な声をしていた。
それは、とてもとても綺麗な声。
「あ、いや、なんでもないよ。」
「ごめん。」
俺は慌てて、前を向いて目を逸らす。
「ん、そう。」
「君は今回、このテスト頑張った??」
彼女も前を向き直し、俺に言った。
「うん、かなり頑張ったと思う。なんなら受験の時より必死になったかも。」
「でも。そんなに頑張っても、ここに載るぐらいしか行かなかったけどね。」
「君はあったの??」
「えぇ、当然よ。」
「だけど不思議ね。」
「私は5位以内に入ると思ったのだけれど、6位だったわ。」
順位表を見ると、6位 柊 天音
(なんか聞いたことあるような、なんだったか??)
どこかで聞き覚えがあるが、クラスだけでも8つあるので多すぎて分からない。
再び彼女の方を向くと、奥の方から良く知っている人が歩いてきていた。
しかも少し下を向きながら来ていて、小走りでこちらへ来ていた。
明らかに俺の方だった。
そして通り過ぎたと思ったら、手を引っ張られた。
「ちょっと、こっちへ来なさい。」
思うがままに引っ張られ連行された。
しばらくして、校舎の玄関前だろうか、やっと止まった。
「おい、どうしたんだ。」
少し落ち着いたのか、背を向けていた彼女がこちらへ振り返った。
まぁ、何か言いたげな顔をしていた。
俺が不甲斐ない順位だったからだろうか。
それとも、彼女、柊天音と偶然その場に居合わせたことだろうか。
「どうして彼女といたの。」
「しかも話していたし…。」
あー、これまためんどくさいやつだ。
俺はそこまで鈍感じゃない。
ある程度の事は察しが付く。
「君が思っているようなことじゃないよ。」
「たまたま居合わせただけだし、話したといってもほんの少しだよ。」
「そう――。」
「なら、いいわ。」
姫野は少し下を向いて、俺の左袖をギュッと人差し指と親指で掴んだ。
過去に何かあったのだろう。
聞きたいところだが、またギャーギャーと言われると、テスト明けの俺には少し辛い。
「帰ろうか。」
「何も、聞かないの、、?」
「別に?」
「言いたくないんだろ?」
「ならいいじゃねぇか、一つや二つ、言いたくないこと、隠し事があったって。」
「ほら、帰んぞ。」
「うん。」
――その帰路。
「あ、ところで明日から約束どうり昼食持ってくるから、食べるもん持ってくるなよ。」
「てか、順位高すぎだろ。」
「見てびっくりしたぞ。」
「そう?」
「ほとんど勉強したつもりないのだけれど。」
「え、煽ってんですか?」
少しピキッてしまった。
それもそのはずで、全力を出して挑んだのに、友達二人にも届いておらず、しかも惨敗もいいとこだ。
正直、一生寝込んでいたい。
「いえ、ごめんなさい。」
「そういうつもりではなかったわ。」
まぁ、自頭がいいのだろう。
しかし、今回は流石にへこむ。
そうこうしていると、姫野が住んでいるマンションへと着いた。
「それじゃ、私はここでいいわ。」
「明日、楽しみにしているから。」
満面の笑みを浮かべて帰っていった。
しばらくして、俺も家路へと着いた。
俺は何もする気が起きず、リビングのソファでうつ伏せで寝ころんだ。
でも放課後の彼女が頭から離れない。
気になるとは違うがどうも頭の片隅から離れないあの目と雰囲気。
初めて姫野と対峙した時と似ている。
しかし、最近考えることが多い。
林間学校だって人数がまだ足りておらず、未だに姫野に連絡先を聞いていない。
「明日、流石に連絡先とか聞くか。」
僕らの日常は落ち着かない。