表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

chapter1:僕たちはまだ、お互いを知らない。

 私立柳沢学園高等学校。


 柳沢財閥が保有し経営している、この学園は中等部と高等部が一緒の中高一貫校となっており、全生徒は中等部と高等部合わせ、おおよそ1500人の大きな学園で、専門科が設けられていなく、普通科のみとなっている。


 この学園は、内部進学者と外部進学者で分かれており、内部進学者のほとんどはお金持ちのボンボンか、親が政治家など特権を持っている組となっている。学園そのものが、かなりの敷地を持っていて、かなり広く部活連なども活気に活動を行っている。


 そして、黒田 優は(くろだ ゆう)この学園に入学してからというもの、ここ数週間がたったのだが外部進学生ということもあって、ろくに新しい友達が出来ていない。


 クラス内には、元々同じ中学のやつが何人かいるが、その内の二人は、進学先が同じになり、中学のころから親友といっていいほど、とても仲良くしている。


 そう言ってると早速お出ましだ。


「ゆう~くんー!!」


 そう言って俺を見るなり、とてもキモイ呼び方と共に抱きつこうとする男がいた。


「おわっ!!って、くっつくな!!」


 とてもキモイこいつは、【白幡しらはた 俊哉しゅんや】見た目は凄くイケメンで、身長は178cm、右耳に髪を掛け、ピアスを開けているチャラチャラしている外部進学でもある昔馴染みの友人だ。


 入学してすぐ、1年生の女子の間では、一軍と言われるほど人気があるそうで、こんな現場を見られたら俺は女子に殺されそうだ。


 そして、その少し後ろで呆れた顔で見ているやつがいた。


「ったく、こら、離れろ!」


 そう言って、俊哉の後ろ首襟を掴んで離したのは、【音無おとなし 叶夢かなた


 こちらも俺と俊哉と同じ外部進学の昔馴染みの友人で、高身長の180cmのイケメンさんで、男の俺も惚れそうなぐらいにイケメンである。

 もちろん男子の中では一軍に入るだろう。


 あ、自分はどうなのかって?

 俺の身長は175cm


 まぁ、このふたりと並んだら輝きで押しつぶされるから、並びたくない。


「ああ!!痛い!痛い!」

「話せ!バカ!!」


「はぁ~、ったく」


 そう言って襟を離してあげていた。


「そうだ、丁度よかった。」

「今日、俺当番なんだ。」

「だから先に帰ってていいよ。」


「えぇー、一緒に帰ろうよぅ~」


 と、うるうるした目で言ってくる俊哉。

 こういうところがなければ、マジで超イケメンなのにな。


「それキモイからやめなよ。」


「同感だ、ほらそろそろ行くぞ。」


 そう言われて、また後ろ首の襟を掴まれてうるうるした目で、こちらを見ながら退場して行ってしまった


「はぁ~、あの二人がいるだけでも高校生活が退屈しないや。」


 正直ほんとに2人には助かっていた。


 ―――その日の放課後。


 クラスの日直は毎日変わっていき、よくわからん順番で2人で回していている。

 今日は俺ともう一人女の子、姫野 茜(ひめの あかね)さんが今日、金曜日の当番だった。


 そして、俺らは担任から日直以外のことを押し付けられて、教室で作業をしていた。


「ねぇ、黒田くん。」


「は、はい。」

「どうしたんですか??」


「それ」


「え?」

「は、はい??」


「その敬語やめて。」

「私たち同い年だから、タメで大丈夫よ。」


「は、はい、わかりました。」


「ねぇ、」


 彼女は少しばかり、呆れた顔をしていた。


「わ、わかったよ。」

「敬語はやめるよ。」


(てか、俺はなんで彼女と一緒にやってんだよ、一人でやった方がよかったな。)

(絡みなんて全くなかったし、すげー気まずいよ。)

(なんかすげー冷たい感じするし。)


 彼女は同い年か、という程、雰囲気が大人びていた。

 いや、冷たいだけかもしれないが、所作とかが一般人の俺らのそれじゃなかった。まぁお金持ちでも疑問には思わないが、このクラスに居るとは考えにくい。


「それより、これ、全然終わる気配しないね、、」


「そうね。」


 まぁ、はっきり言って二人でやる仕事量ではない。

事の経緯は生徒会のメンバーが二人、三日程欠席したために作業が滞っていたため、生徒会選任担当の、俺らの担任が今日、日直の俺ら二人に仕事を投げたのだ。


 みんなが帰って1時間と30分ほど経っただろうか、黙々と作業をしていて気が付けばもう夕方の18時を回りそうだった。


 外はかなり雨が降っており、もう薄く暗くなっていた。


「あの、その、姫野さんは時間は大丈夫??」


「大丈夫なわけないでしょ。」


「そ、そうだよね、はは...」

「もし、急ぎの用とかあるんだったら、姫野さんだけでも先に帰ってていいよ。」

「雨も結構降ってるし、残りは俺がしておくから。」

「俺なら大丈夫だから。」


「それはできないわ。」

「この量をあなたに押し付けると、夜までかかりそうだから。」

「それと後々、何か言われても困るから。」


「ははっ、、」


 そうして、また二人は黙々と資料の整理し、あらかた終えた。

気が付くと、時計の針が19時を回っており、校内で練習をしていた運動部の声も、もう聞こえなくなっていた。


「はぁー、やっと終わったね。」


「そうね、随分とかかったわ。」


 作業をしていたものを片付けて、教卓の上に置き、俺と姫野さんは玄関へ向かった。


「――あ。」


「どうしたの?」


「傘持ってくんの忘れちゃったかも。」


 外は一時間ほど前よりかなり激しくなっていた。


「――はぁ~...」


 彼女は深くため息をついていた。


「私の傘に入ってもいいわよ。」


 呆れた感じに言っていた。


俺は、彼女の世話になってもよかった。

しかし、いやな記憶が蘇ってきた。

こんな大雨の日だったろうか。


 中学2年生の頃、俊哉と叶夢の他に、昔からよく遊んでいた幼馴染の女の子がいた。いつもは4人で帰っていたのだけど、その日は僕とその子だけで、たまたま傘を忘れてしまった為に僕は玄関で立ち往生していた。


「あ。」

「傘忘れたかも。」


「えぇ~、何してんのさ。」

「もう、まったく、傘小さいけど入る?」


 俺は甘えて傘に入れてもらった。


 しかし、他のクラスの女の子グループに現場を見られてしまっていたようで、勘違いを生み出してしまい、彼女がそのグループからいじめられるようになった。


 そして、その日から彼女を取り巻く日常が変わってしまった。


 後々分かったことだが、いじめグループの一人が、僕のことを好いていたらしく、嫉妬のあまりにいじめていたらしい。


 俺は雨の降る空を少し見上げ、


「大丈夫だよ、このまま走って帰るから。」


 彼女の不安を煽らないようにニコッとして走って帰った。心のどこかで、ほとんど初対面の僕に少しでも親切に取り合ってくれている彼女が怖かったのだと思う。


ザァーザァーと頭に響くくらい、うるさい雨音。

仕舞には、雷の音まで鳴っていた。


 俺は走った。自宅までは歩いて30分ほどある。走ればおおよそ15分かかるぐらいだろう。

 しかし、雨の中走り続けることは容易ではなかった。制服は濡れて重くなり、体温が下がっていき体力が奪われていく。


(はぁ、はぁ、どこかで一回休憩しよ。)


 俺は近くに屋根付きのバス停があったので少し休憩をすることにした。


 かれこれ10分程経っただろうか、かなり体が冷えてきた。家までは後7~8分だろうか。短いようで、とても遠く感じてしまう。


 すると、一つの人影が僕の前に来た。


「あなた、馬鹿なの?」


「あ、ご、ごめん。」


 眼前に居たのは、姫野さんだった。彼女の肩が少し濡れていて、少し息も切らしていた。恐らく少し走って来たに違いない。


「何があなたをそうしているのか知らないけど。」

「いいわ、私の家ここからもうすぐだから。」


 そう言って、彼女は傘を入れと言わんばかりの顔をしていた。


「わかったよ。」


 俺は大人しく彼女に甘えることにした。


 ―――その道中。


「黒田くんは、一人暮らしなの?」


「ん? いや、妹が一人家にいるよ。」


「ご両親とは一緒に住んでいないの?」


「そうだな。」

「話すと少し複雑なんだけど、聞く?」


「黒田くんが話しても大丈夫なら聞くわ。」


「はは...あまり面白くない話だけど。」

「小学生の頃かな、両親が喧嘩をしちゃってさ、それがエスカレートしていって離婚しちゃったんだ。」

「多分、喧嘩の他に多くの問題があったんだろうけど、俺は何も聞いてないからわからない。」

「離婚をした後、俺と妹、姉の親権が母になった。」

「元々住んでいた家は母のものだったから、父が出ていく形になって、幸い転校してみんなとお別れなんてことはなかった。」

「それから母が会社の社長になっちゃって、ほとんどホテルとか会社での泊まりだから妹と二人で暮らしてるんだ。姉はもう自立してしまってるから家に居ない。」

「でも盆と正月は一日だけ帰ってくるから、心配はしていないよ。」

「まぁ、少し寂しい気持ちはあるけれど、妹を守るっていう気持ちが強いから特段、会いたいって思わないかな。」

「あと、それと、、」


 俺は彼女に会いたい人がいると言いかけた。だけど、他人に話してもどうなるものでもない。


「それと??」


「いや、なんでもない。」


「そう。」


 そして彼女の家?に着いたのだが...

 ――え。何この高層階ビルは。


「ここよ。」


「え?」


 ここら辺りの景色に、見覚えがある。俺は昔、幼い頃に轢き逃げにあったことがある。その日もこういう雨の日だった気がする。


 それにしてもこれは...


「ん? あの姫野さん、ほんとにここなの??」


「そうよ、何か問題でも?」


「あ、いやー、その、」


「なに?」

「こんなところに住んでいるのが意外だった??」


「いや、違くて、」


「だったらなんなのよ。」

「さっきから気持ち悪いぐらいにソワソワして。」


 彼女はお嬢様か何かなのか??

 そんな事は疑う余地もなく、目の前の光景でもう答えはでている。


「ほら、行くわよ。」


「う、うん。」


 俺は色々、頭に疑問を抱えながら彼女の家へと案内された。


「姫野さんって一人暮らしなの??」


「ええ、そうよ。」


 ん?と俺はふと今の状況にまずくないかと思った。年頃の男女が二人、一つの屋根で一緒いる。しかも片方はびしょ濡れだ。


「なに立ちすくんでいるの。」


「え、あ、このまま上がったら床濡らしちゃうから。」


「大丈夫よ、あなたがお風呂に入っている間に拭いておくから。」

「ほら、早く入りなさい。」


「あ、でも。」


「せっかく、ここまで来たのに風邪引きたいの?」


 彼女の眼差しは凄く強かった。

 今、ここで引き返すと一生口を聞いてくれないんじゃないかという程、目が物を言っていた。


「わかった、世話になる。」


 彼を風呂へと案内させた。

 その間に私は床を拭いていた。


「はぁ~、なんでこんなことやってるんだろ。」


 ふと我に返る。

 私らしくない。

 もう人とは極力関わらないようにしてきた。

 高校も中学の子たちがなるべく居ないところを選んだ。

 私から話しかけることもないから、入学しても友達と呼べる子は一人もいない。

 別にそれだからって寂しくもない。

 そう、友達なんていなくても。


 俺は風呂から出た後、帰ろうとしたが、制服や鞄を彼女がすべて洗濯してくれていたため、乾くまで待つことにした。


 それから食事を取る事になった。


「あの、姫野さん、、??」


「なにかしら。」


 彼女はじーっとこちらを見ていた。


「そんなに見られると凄く集中しずらいんですが。」


「ええ、知っているわ。」

「気にしなくて大丈夫よ。」


 俺は今日、居させてもらう代わりに料理を作って欲しいと頼まれた。作るのは構わないのだが、彼女の口に合うのだろうか。明らかに両親がお金持ちなのは確かだ。


「ねぇ、姫野さん。」

「言いたくなかったら言わなくていいんだけど、もしかしてかなりのお嬢様だったり??」


「そうね、言いたくないわ。」


「そう、ごめん。」


「どうして謝るの。」


「いや、聞いちゃいけないことだと思って。」

「そうでもなかったかな?」


「いいわよ、あなた達にしては、しょうもない理由よ。」


 話している間に、料理ができた。


「あら、意外とおいしいわね。」


 作ったのは、肉じゃがとキャベツと豚肉の炒め物。

 凄くオーソドックスな食事だ。


「まぁ、普段から家で作ってるからな。」

「不味くなる方がおかしいよ。」


「えぇ、まぁそうね。」


「今度、機会があったら姫野さんのご飯食べさせてよ。」


「うっ、、」

「え、遠慮しておくわ。」


 目を逸らした。え、なぜ??

 今すげー、作るわ、っていうそんなノリだったじゃん!!


(さてはこやつ、料理できないな。)


 まぁ大方、食材があるのも、定期的に誰かが作ったりしている感じだった。台所に立った時に不思議に思った。手入れも行き届いてるし、これはもしやのもしやだな。


「まぁ今度でいいよ、学校で調理実習もあると思うから。」


彼女はうぅー、とした顔をしたままだった。


 ご飯を食べて、帰ろうとしたとき、外の状況がどうなっているか見ることにした。


「え。」

「はぁ...」


 カーテンを開けると、結果は土砂降り。お互いに窓を見て、俺は呆然と、彼女はやっぱりという顔していた。

 外は穏やかな中と違って、かなりの大荒れだった。台風ほどではないが豪雨になっていた。


「まだ5月だよね。。」


「そうね、まだ5月よ。」


 そして俺は苦渋の決断にでた。

 俺もこんなことはしたくない。

 彼女の方を見て俺は目をうるうるさせて土下座した。


「お願いします!!」

「もう濡れて帰るのは嫌なんです!!」

「泊めてください!」


 もう濡れるのは嫌だ!

 ほんとに嫌だ。

 無理、風邪引きたくない。


「はぁ、元からそのつもりよ。」

「あと、みっともないから、顔上げて。」


 そう言って彼女は憐れんだ眼をしていた。



 それから少し時間は経って、時刻は22時を回っていた。

 何もすることがない。共通する話題もない。


「ねぇ、」

「なにか面白いこと言ってちょうだい。」


 あー、これ絶対友達いないだろこいつ。


「ん。だまれ。」

「あ、そういえば。」


 ふと忘れていた事を思い出した。

 妹に今日は帰れないと伝えていなかった。


「なぁ。俺のスマホってどこに置いた?」


「荷物類はソファの裏に置いてるわよ。」


「そうか、ありがとな。」


「う、うん///」


 ソファの裏に行くと、俺が風呂を借りている間に乾かしてくれていたであろう教科書類とスマホが置いてあった。

 てっきり、そこまではしてくれているなんて思っていなかった。


「ほんとに、ありがとう。」


 スマホを確認すると妹から50件以上もLINEが来ていた。

 俺はそのまま通話をかけた。二回のコール音が鳴ったところで妹が出た。


「お兄ちゃん、最初に言うことは?」


「あ、その、すいません...」

「ご飯はもう食べたのか??」


「もう食べたよ。」

「で、今日は帰ってこないの?」


「うん、外が荒れてるから、知り合い...」


 姫野さんをちらっと見るとニコニコでこっちを見ていた。

 顔が笑ってるようで笑ってねぇーよ。


「友達の家に泊めてもらうことにしたんだ。」


「ふーん、俊哉君家??」


「いや、今日、クラスの日直でさ、よくわからん仕事押し付けられちゃって遅くなってさ。」

「その時に一緒だった人の家に泊めてもらってるんだ。」


「はぁー、お兄ちゃん。」

「濁して言ってるみたいだけど、その人、女性の人でしょ。」


 俺はギクッとした。

 女には女としての感というものがやはりあるのか。


「あ、うん。」

「でも何もないよ!」

「むしろ助けられてるし、そういう人じゃないから!」


 また俺は姫野さんをちらっとみた。

 すると今度は頬を膨らませて、むすーっとした顔をしていた。


 えっ?なんでだよ。

 何、その顔。

 すんごく可愛いんですけどっ!!


「お兄ちゃん!!聞いてんの!?」


「あぁ、すまん、なんだっけ。」


「明日学校休みだろうから、帰ってくるときなんか買ってきて。」

「ちなみに拒否権無いからね。」


「わかったよ、アイスなりなんか買ってくるよ。」


 そう言って通話が終わった。慌ただしかった。

 とても人前で見せれる会話ではない事は確かだった。

 しかし、彼女の方をまた見ると少しニコッとしていた。


「妹さん、いい子ね。」


 ――ん?

 今の会話で何処が?と疑問に思った。


「そうかもしれないが、ただの我儘で世話の焼ける妹だよ。」


「そう、羨ましいわ。」

「そういう家族がいるのが、とても羨ましい。」


 彼女は少し悲しいというより、寂しそうな顔をしていた。

 まぁ、ほかの家庭の事情だ。俺から聞けることはない。それに、まだ知り合って、話して、一日も経っていない。

 もし、これから先、友人としての関係値が深まった時に、話してくれる事を待とう。


 僕たちは、まだお互いを知らない、他人に過ぎないのだから。


 俺は床で寝ることになった。

自身としては初めての投稿です。

初めの物語ということで、かなり長くなってしまい読みづらい点などあったと思います。

至らない点などあると思いますが、是非今後とも見ていただけると嬉しいです。

次からは、この半分ぐらいで区切っていこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ