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150と151の狭間で

作者: 南野 東風也

いつもとは

違う日常に

強引に引き摺り込まれても

避けられない事を知って尚

意志を持って立ち向かう

大好きな君へ

一途な気持ちを込めて


「次は笑って会えるようにするから。だからお願い。絶望しないで。」



「絶望…か。」


下を向いて悩む彼。



最後に自分の都合のいい期待を込めて。

しんどい事は全て他人任せにして、彼に言う。


最悪な女だと思われてたかも知れない。少しの心配があったけど。


でも彼の気持ちは変わらなかった。


心底思う。


強い人。


彼は笑いながら

「ここは樫切山かしきりやまって言うらしい。ホントに貸切だね。」

って言ってきた。


よく冗談を言う、彼のそういう所が好き。


「そうだね。」私も涙が溢れてるクセに少し笑顔になる。



私は最後の言葉を言ってから、振り向いて歩き出そうとしたんだけど、

そこにはワガママな自分がいて、


彼の手を手離せなかった。


「今まで生まれて来て一番幸せな夏だったの。」


「僕も。」


そこで彼のスマホからカウントダウンの声が静かに伝えられる。


彼の持つ特別なAIの声だ。


「AM4:00まで残り100秒です。」


お願い。急かさないで。夜明けなんて。今日は来ないで!

2人の時間を奪わないでよ!!!



この場に彼が居られる限界の時間をスマホのAIがコールしていると思って、


盛大なヤキモチを焼いた。


これから暫く会えない彼の側で、一緒に居られるAIにヤキモチを焼いたんだ。


みにくいなぁ。自分で自分をそう思った。



けれどそんな私を見て、彼は優しい笑顔で話し出す。


「僕は臆病で寂しがりだからさ、あと少しだけ僕の方を見ててほしいんだ。見送ってくれる?」


「うん。・・・わかった。そのかわり、・・・忘れないでね。


あなたに全てを任せて自分では何もしない今日のずるい私を。


あなたのお父さんのお陰で醜く生き延びてる私を。


あなたの選択が無駄じゃなかったって知ってる私を。



今度は忘れないでね!」


涙が溢れて折角近くで見れる彼の顔がぼやける。あぁ。もったいない。




「次は忘れない。もう忘れる事なんて出来ないよ。

だって何度も何度も君に、その色に救われてきたんだ。


【今後】の事はわからないけど、まだまだ君に救われる気がする。


いつか、恩返しはしないと。まだできてないんだ。

だからそれまで待っててくれると嬉しい。


泣かずに  笑って待っててくれると。」


彼は必死の笑顔をとうとう保てなくなってボロボロ涙を流しながら


「そうしてくれると、嬉しいんだ。」と言った。




彼が繋いだ手をほどき出す。




未練がましく最後まで触れ合っていた私の気持ちなんてわかってないのかな?


触れ合っていない事に気づけたのは彼の感情が流れてこなくなったから。



以前、私の好きなモンスターのゲームで

【ミウ】に似ていると言ってもらったのを思い出す。


だったら彼は


望んでこうなった訳じゃない未来を恨む

【ミウツー】になるんだろうか?


図鑑番号 150番と 151番で こうも運命が違うのだろうか?


離れる事で

その2つの数字の間に大きな隔りが、

見えない壁が出来た気がした。




「20秒前。」


私を見ながら後ろ向きに歩き出す。もう言わないで!黙ってよ!!


無神経なAIに必要のない怒りを覚える。


情け無い。


彼は少しずつ、少しずつ離れてく。


あぁ。弱虫な私はこのままずっと泣くんだろうなぁ。



そんな私を見てリングの付いた紐を投げてきた。


「10秒前。」


リングを持って彼を見直すと


私の方を向いてもう何メートルも離れていた


私は彼に最後のわがままを言う。


気持ちが伝わる特別な紐で、たった一本のこの細い紐でまた彼と繋がれた。


無理した笑顔でいられる時間が差し迫る。


心臓がキュっと痛む。私はガマンできず最大のワガママを口にした。


「もういちど!!もう一度、またいつか一緒に昨日の花火見ようね!!」


「5秒前。」


なんて酷な。いつできるかもわからない約束を。彼ならできるとまた人任せにして。


「3秒前。」


その時、彼は笑顔で笑いながら上を。空を指差したんだ。


泣いてるのに、無理やりいつものイタズラな顔で歯を出して笑ってた。


指を差した先は私の嫌いな夜の闇。黒が一面を覆ってる。

ほんとは見たく無いその色を、彼が指差したから見つめる。


なんで笑ってるの?


不思議に思って彼の行く先の空を見上げると。


「0。」


一筋の光が、私がさっき願った【光】が。上に向かって伸びていて。


ハッとして彼を見ると、口を開けた私を見て更に笑って。


その後すぐに私と同じ方向を向いたんだ。




そこには約束の花火が。たった一発だけど。


昨日上がるはずだった最後の一発。


一番大きな花火が空に舞い上がって、


北の空を大きく明るく照らして。


はじけて。


消えた。


直後に胸を打つ大きな音ともに。




「キレイ。」マヌケな私はそんな言葉しか出なかった。


最後に白くて純粋な感動を貰えた。


彼にとって、こんな約束、簡単だったって事だね。


にやける口元が見えて同じ風に笑って見せる。


あぁ。また弱い私を、暗闇を。恐れていた黒から救ってくれた。そう思った。


その直後、笑えなくなった。もう彼と離断されたんだ。


「じゃあ。お互いの夢に向かって。」


彼は目つきを変えて北へと歩き出す。


私も行こう。 軽くうなずいて自分に納得させる。



もうこれからは私の近くに君はいないんだね。


私の代わりに闇に向かって行くんだね。


それでも前に足を進める事ができるんだね。


「ありがとう。」


ボロボロ涙が溢れ出す。


彼と反対方向に足を踏み出す。

彼が後ろ髪を引かれない様に、振り返らない様に。心配させない様に。


いつかまた会えた時に胸を張っていられるように。




この言葉まで、この思いまで、

しっかり彼の目に、耳に、


心に届きますように。










「大好き。」




















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