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言葉を重ねるしかないんだ(一日一詩(あくまで目標)

甘冷え

マスクは息苦しいのであまりしたくない

耐え難い毎日は変わらずに耐え難いまま


自分のことばかり考えてないで少しは我慢しろと

躾けてきた大人たちが補償だ補償だと大声をあげている


その程度のことでつらいだなんて甘えだと

叱ってきた大人たちが些細な死の香りだけで激昂している


みんな大変なのだから思いやりを持ちなさいと

慰めてきた大人たちが不公平だと泣き叫んでいる


買い占めた物品 閉まった商店街 食料品店の人集り


そんなに生きたいなんてどこか不思議だ

まるで虫を見ているようだ

己が生きるべき存在であるとどこで学んだのだろう


そしてなにが違うと言うのだろう

疫病より確実に首を括れば命は終わるのに

彼らが小さな耐えるべきことだと私たちに課してきた

強烈な死の想起


他人に我慢しろと言いながら彼らが酒を飲んでいる頃

屋上から見下ろすコンクリートをずっと眺めていた


他人に甘えだと言いながら彼らが甘えられる相手を物色している頃

手首から流れる赤と皮膚の深さと剃刀の刃をずっと眺めていた


みんな大変だと言いながら彼らが美味しいものを食べている頃

水しか口に出来ずに電車の速度を考えながら線路をずっと眺めていた


甘えていてごめんなさいと泣いて朝を迎えながら

目に入る人々は遠く ただ生き生きと生存本能に従い続け

まるで虫を見ているようだ

彼らはやはり集団でいて とても同質で


自分たちが罰を受ける理由などなにひとつないのだと

その堂々たる姿に

貴方達は個で在りたがるくせに他の恩恵と支配を望み続けている

そのことは罪なのだろうと説き伏せたくなるけれど


怒られるだけなので黙っている

おそらくこの疫病が新しい世界の個の在り方を映し出す


この期に及んでまだ死にたいと思っている

感情がやわく冷えている

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