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僕たちはこれから、エルフの国へ歩いて行くといわれた。
国境までは遠くなく、エルフ領地に入れば休憩も簡単だという。
「ここから国境までは一日歩く。体調に異変を感じた者はすぐに報告するように」
早朝、日が昇ってからエルフの国へ向かう。
エルフ軍の活躍によって、道中は非常に安全だ。
見たことないような生物や見たことある生物も、見たことはあるが違和感を感じる生物も、倒してくれる。
出てきても対処されるものだから、どっきり成分の多いアトラクションのような感じだ。
国境までは難無く越えられた。
怪我をした人は、魔法のような何かで治療されていた。
一瞬で傷を直すようなものでなく、傷の回復を早めるといったものだったけど、ファンタジーは十分に感じた。
「一日ご苦労だった。あと二日でリゼ・グラッティアにつく」
リゼ・グラッティアというのは向かっているエルフの国だ。
名前がかっこいいけど、英語で書かれたら絶対にわからない。そもそも、英語がわからないのだから、当然である。
そして、国境を越えてエルフの国に着いたときには、フィンおじいさんが混ざっていた。
「のお、ワカバよ。お主のスキルを聞いてもよいかの?」
僕の奇天烈な行動に困惑したフィンおじいさんがそう尋ねてきた。
この世界でスキルというものは絶対で、軍人のような戦闘職はスキルを知られると対策される可能性があるため、聞くべきではないとされる。
ただ、生産職といった分類のスキルではスキルの内容を知らないと、仕事の斡旋ができないので、聞いてもよしとされる。
少なくとも、【落ち葉拾い】は戦闘職ではないので、おじいさんも聞いてきたんだと思う。
「【落ち葉拾い】っていうスキルです。散らかっているのを見ると、どうしても掃除したくなるんですよね」
「ほぉ、珍しいの」
おじいさんによると、戦闘職のスキルは明確に内容が定められているものが多く、生産職は曖昧といえるほどの範囲を持つという。
「【剣作成】よりも【武器作成】スキルを持っている人のほうが多いんじゃ。どちらかというと、極端な性質を持つスキルのほうが、より強いスキルだといわれている」
他にも、【戦闘】【白兵戦】【剣術】【振り下ろし】など、細かく分かれる戦闘スキルもあるのだそうだ。
「わしは、魔法を使うスキルじゃの。戦闘の中でも、剣を持って振るうような近距離と魔法を撃って戦う遠距離に大きく分かれるからの」
その割に、生産スキルは作成系から処分系、二つの複合に分かれ、そこから無限のように分かれるのだそうだ。
【落ち葉拾い】はその性質から処分系といわれる分類で、他には【処分】や【掃除】といったスキルがあるらしい。
今更だけど、スキルについて説明する。
早い話、厳しく縛られたロールプレイングゲームのロールで、スキルに対応した行動を行うことで、経験値とお金がもらえる。
難易度の高い行動、珍しい行動、実現不能のような行動を行うことで、より多くの経験値とお金が手に入る。
「中でもの、戦闘スキルは手に入る経験値が多くてお金が少ない。生産スキルは手に入る経験値が少なくてお金が多いんじゃよ」
そして、経験値が溜まるとレベルが上がるそうだ。
レベルが上がると、ゲームシステム的な「HP」と「MP」、基礎的な身体能力が少し増加し向上するそうだ。
HPが高いと健康的で、MPはスキルによって使われる特殊な行動--僕で言えば、落ち葉の収納や排出--をすると減るものだ。身体能力の向上は最もわかりやすいが、そこまで大きい増幅率ではないとのこと。
僕も落ち葉を拾っているから、レベルが上がっているはずなのだが、実感がわかない。
「そりゃあ、自分で自分の内臓を見ることは適わんからの。誰かに見てもらうか、レベル石を使うことじゃの」
相手のレベルやスキルの隠れた効果を調べることができる戦闘系のスキルを持つ人もいるそうで、その人に頼めば、調べることができるそうだ。
そして、もう一つはレベル石というもので、レベルを調べることができる石だ。触るだけでレベルが数値化されるそうだ。
レベル石は大きな岩だから、簡単に持ち運ぶものではないとのことだが、ここでエルフからツッコミが入る。
「エルフの国では、レベル石なんかよりも精霊樹や世界樹のほうがポピュラーだよ。許可を取れば誰でも使用できるから、着いたら案内するよ」
仲良くなったエルフの人が教えてくれた。
「リゼ・グラッティアは精霊樹がある街。精霊様の気まぐれで神隠しにあわないようにね」