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「君はあのおじいさんを知っているのか?」
エルフの五人組のリーダーをしている人がそう聞いた。
「知っているも何も、昨日ここに連れて来られたばかりです。おじいさんとおばあさんにはご飯をご馳走してもらいました」
「本当にそれだけなら、まあいい」
エルフの人から話を聞くと、あのおじいさんとおばあさんは只者ではないらしい。
見た目からして、エルフではないのだろうが。
「名前は聞いたことないか? 人族最強の魔導士フィン・ウィズダムを」
倒置法を使って言われても、知らないものは知らない。
「吟遊詩人すら来ないような場所に居たのか?」
ええ、吟遊詩人なんて見たことも聞いたこともないですよ。
現代日本ではね。
「そうか……三時間程度の講習を開きたいところだが、仕事があるのでな。そちらを優先させていただく」
三時間も何をするんですかねぇ。
おじいさんとおばあさんを丁寧にエスコートしていった。
そのあと、残りの四人がこっそり教えてくれた。
「隊長はあのとおり、魔導士フィン様を敬愛しています。だから、実際に会うことができて浮かれているんです」
どうやら、頻繁に長い長い話に付き合わされているらしく、だからこそ、顔が強張ってしまったのだそうだ。
おじいさんがエルフについて詳しかったのは、一時期はエルフ軍に所属していたことがあったからだそうだ。
自然に愛されたエルフの軍隊は森の行軍では、隣に出るものはいないということまで教えてもらった。
「じゃあ、君も付いてきてくれるかな。隊長は先に行っちゃったけど、僕らも付いていかないといけないんだ」
エルフの軍隊にこの街を攻撃する意思はないそうだ。
これから自分たちの街となる場所を荒らしても、メリットがないからだと説明された。
「戦争って言っても、僕らは血を流すのも流されるのも流れてしまうのも嫌いなんだ。森に流れる川の水は綺麗だろう? だから僕たちは刃傷沙汰なんて最初から望んでいないのさ」
ちょっと詩的でいいなって思った。