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周りは木に囲まれて、困る。
遠くには石造りの何かが見えるから、そこまで行けば情報が手に入るかもしれない。
それよりも気になるのは、目の前に浮かぶよくわからない半透明の板だ。
もう一度言おう、よくわからない半透明の板だ。
重力にも逆らっているし、まず半透明ってのがわからない。
触れる?
やめておこうか……
なんて思っていたら、勝手に起動した。
『ようこそ、異世界へ。あまりに幸運なあなたは死後、異世界へとわたる切符を手に入れました。といっても、もうここは異世界ですけどっ』
少しだけ腹が立つような板だが、目をそらしても音声が飛んでくるので、諦めて読むことにする。
『諦めや引き際って肝心ですよね。殊勝な心掛けで結構ですよ』
どうしてまあ、ここまで上から目線なんだろうか。
『私はこの世界を管理する神様の代弁者。あなたが天文学なんて幼稚園児の遊びになっちゃうような確率で異世界に来ちゃったから、面倒だけど、案内したげる!』
もっとまともにしゃべってほしいものだが、こいつからは何かオーラを感じる。
そのオーラはまるで、よくわからない半透明の板のようなものだが、只者ではないと感じさせるものだ。
『まずは、スキルの確認から行きましょうか。この世界ではスキルが絶対です。まずはスキルと念じるところから始めましょう』
スキル。
………スキル。
………………スキル。
『まあ、そんなことしてもスキルが確認できるわけじゃないですけど。大事なのは、自分のどこかにあるなにかに意識を向けること。心臓、丹田、脳、人によって場所は違うと言われてるんだ』
『ま、見れるようになったら言ってよ。それまで暇をつぶしているから』
と、言い出して、文字を見せることなく、縦横無尽に半透明の板が飛び回っている。
死ぬ前に見た、地底から出てきた空を飛ぶ魚に似ている動きだ。
『あ、こっちでスキル見せることできたんだった。じゃあ、これね』
と板が言えば、プリンターのように一枚の紙が吐き出される。
そこに書かれていたのは、
スキル【落ち葉拾い:F】
というものだった。
次話 11/2 5:00