プロローグ4
機体を造るにあたって重要になってくるのが、目に見えないコストである。ゲーム画面から確認することはできないが、それは確実に存在する。全く違う種類のパーツを合わせると上がり似ているとそのままか、下がるのだ。最新のパーツと古代のパーツを合わせるのと、最新のパーツ2つを合わせるのとだと、約1.5パーツ分最新2つの方が多く付けることができる。
さらにシリーズと呼ばれるパーツはある程度付けると特有の効果を発揮する。それはコストの増加もしくは削減であったり、特殊効果の付与であったりと様々である。故に自分の愛機は「古代のパーツ」と「ある程度同年代のパーツ」だけで組んでいる。
「古代のパーツ」は特にこの「ある程度同年代のパーツ」であることが重要になってくる。実を言うと「古代のパーツ」を機体に組む人はかなり少ない、というのも、「ある程度同年代のパーツ」でないと機体が自壊してしまうからだ。大体2世代くらいの内でなければ自壊してしまうと判明している。なのでゲームの中で歴史を勉強・研究し、それでも分からなければパーツの出土した場所でどの程度の年代のモノか調べなければいけないという面倒が待っている。ゲームでそんなことをするために頑張る人はそうはいない。なので、「古代のパーツ」は結構不人気である。武器以外は。古代の武器は基本誰でもつかえるのだ。その理由を自分は知っているが公表するつもりはない。
ただ一人で何も知らないところから始めて協力されたことも無いのに何故教えてやらんといけないのか。自分には理解できない。稀に外に出た時に図々しく教えろとのたまう輩がいるが理解できない。
いや、いまはそんなことはどうでもいい、大事なのは何故「古代の動力機関のカケラ」が必要だったのかという事である。そもそもの理由はPVで観た映像が発端である。その機体は装備を幾らでも出していた、それはもう際限なく出していた。壊れても新しい装備が何度も出てくる様子は大人になった自分の幼い頃の厨二魂を思い起こすものであった。PVにでた機体はある程度造り方が載っていたので、多くの者が挑戦し、古代のパーツの面倒臭さに諦めていき、最後に動力の宛が鬼畜仕様であることに気付き去っていった。
「古代のパーツ」は「ある程度同年代のパーツ」でなければならない、当然、動力とその周りのパーツも「ある程度同年代のパーツ」でなければいけない。では、動力の周りのパーツが「黄金の王時代」というほぼ最古の時代と思われるモノであり。PVに出ていた装備を幾らでも出す能力が「黄金の王時代」特有の能力であり、2世代以内の動力機関が全て壊れている状況でどうやって起動させることができるのか。
その答えが「古代の動力機関のカケラ」1/10000である。しかもこのカケラ、ユニークなのである。誰かがこのカケラを1つでも手放さなければ完成することが無いという、当然運営には批判が殺到したが、それはゲームがそういう歴史を歩んだ結果なので手は加えないと断言した。結果、自分以外の人は諦め、自分のもとに全て集めることができたのは僥倖というべきか。
そして今、ホームに帰還し、カケラを研ぎ・洗浄し・組み立てていく、出来上がっていくごとに興奮と達成感がせり上がってくる。いまこの瞬間のために頑張ってきたのだと素直にそう思える。出来上がっていくごとに動力機関は輝きを増していく、起動しているわけではないのに輝く様は神聖ささえ感じさせる。
「おお、これが完成品か・・・」
それは見たこともない動力機関であった。四角いキューブを中心に細長い輪っかが浮いており、さらにその周りを雷型の薄い石板のようなモノが回っていて、時折光の玉が石板から輪っかへ、輪っかからキューブへと奔っていく。これでまだ起動していないのだ。起動した時が楽しみで仕方ない。