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帰り道

 



 馬車が出発すると父も母もレティシアを褒めたてた。


「レティシア、よくやった。お前は役に立たんと思っていたが皇弟の息子と仲良くなるなんてな。」


「そうよ、よくやったわ。」


 ほくほく顔の両親は四大公爵家と関係ができたことが嬉しい様子だ。


 四大公爵家とは皇弟殿下や皇女様が多く臣籍降下されている公爵家の中でも特に歴史が古い四つの家のことだ。

 イサイアスに父、皇弟殿がおられるアルハイザー家、第一皇女様が嫁がれたルシエ―ル家、第二皇女様のタナリア、そして先代皇弟殿下が降りられたオーベントーナである。


 その中でも現皇帝の弟殿下がおられるアルハイザー家は特に大きな力を持っている。皇弟殿下と陛下は仲が良く皇弟殿下は陛下の右腕として活躍しておられるとも聞く。


 レティシアにとってはそんな雲の上のような人と出会ってしまったことに今更ながら信じられない気持ちでいっぱいになった。本当に夢ではなかったのかと疑うが、両親のご機嫌は事実であったし、何よりイサイアスに握られた手の感触がまだ微かに残っているかのように温かかった。


 突然、今まで黙っていたカラメリアが不満を爆発させた。いつもは可愛く微笑んでいるパッチリとした目を吊り上げて、拳を握り合いめていた。いまにも地団駄を踏みそうなくらいで眉間にしわを刻んで私を睨みつけていた。


「ねえ、レティシア。貴方どうやって取り入ったの?アンタみたいなのがイサイアス様に近づけるわけないじゃん!」


「と、取り入るなんて。そんなことしてないわ!」


「じゃあ、どうやったのよ。」


 今にも掴み掛りそうな勢いで向いのイスから身を乗り出してくる。カラメリアのあまりの剣幕にレティシアはおずおずと今日あったことを話し出した。ただ、食事中に言われた「待っていて」の言葉は伝えなかった。レティシアとイサイアスの約束はなぜかカラメリアには言いたくないと思ってしまったのだ。


「なんだ。じゃあ、イサイアス様は介抱したお礼でレティシアと一緒に踊ったのね。なーんだ、心配して損したわ。そうよねイサイアス様がレティシアなんかを気にかけるのはおかしいと思ったのよ。」


 つまらなさそうに呟いたカラメリアはふと名案が浮かんだという風ににっこりと笑った。


「そうよ、次レティシアがイサイアス様に会うときは私も連れて行きなさい!イサイアス様と仲良くなったんでしょ?私をイサイアス様に紹介して!」


「あら、いいわね。レティシアなんて魔力なしの器量の悪い子じゃなくて魔力も豊富で可愛いカラメリアちゃんなら彼の婚約者になれるかもじゃない!」


「そうだわ!ふふふ、イサイアス様なら私の旦那様にもふさわしいわね、お母様!」


 黙って見ていた母はカラメリアの提案に飛びつくと二人で勝手に盛り上がっていく。当事者のレティシアそっちのけで話しが進んでいく。父も兄も特に異論はないようで、カラメリアが婚約者になれば家の格も上がるとすら考えているようだった。


 何も与えられずに生きてきた10年間。やっとできた友人も妹に奪われてしまうのだろうか。待っていてと、助け出すとそういってくれたあの人はほんとに私の味方になってくれるだろうか。

 信じたいという思いと、信じてもしょうがないという思いの両方がレティシアの心の中で渦巻いていた。



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