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九話

二話目の投稿遅くなって申し訳ありません!

夜は夜でも深夜と言うことでどうか一つ……


「話がある」


 そう言った銀髪の男性は俺の腕を掴んで近くにあるオシャレなカフェに入って行こうとする。


「ちょ、どこに行くつもりなんですか!?」


 細身な身体の割に思いの外力が強い。

 まずい、この人絶対堅気じゃない。

 ぶつかったいちゃもんつけられて、慰謝料取られて挙句の果てには……。

 でも抵抗できる力も無いし、諦めるしかないのか。

 取り敢えず有り金を全部渡すことから始めよう。

 俺は諦めて連れられるまま銀髪のお兄さんとカフェに入った。

 内装は純喫茶という感じで、端的に言えば古臭かった。

 

「座れ」


 俺に対面の席を指さしてホットコーヒーを二つ頼む銀髪のお兄さん。


「あ、あの……」


 「俺はこういうものなんだが」


 さて、どのタイミングでお札を出そうか考えていると、お兄さんはジャケットの内ポケットから白い紙きれを取り出して差し出してきた。


「え?」


 どういうことだ? 状況が読めず恐る恐るその紙切れを受け取って見てみると、そこには『ジアース事務所 宍戸龍』と書かれている。

 これが一体何なのだろう?

 脳みそをフル回転して考えるが全く分からない。

 挙句の果てに、


「と言うわけだ」


 「……いやいやいやいや!」

 

 何をもう分かっただろう見たいな雰囲気出してるの!?

 相変わらず無表情のままなので感情を読み取れない。


「……分からないのか?」


 このジアース事務所と言うのはヤクザの組か何かなんだろうか?

 どこぞの印籠のようにこれを出して「誠意のあるお詫びをよこせ」ということかもしれない。


「えーっと、本当に意味が分からないです。あの、ぶつかったお詫びならしっかりさせて頂くつもりですので……」


「は? 何を言っているんだ?」


「ええ? 何をって、謝罪ですが……」


 そう言うと宍戸さんはポカンとした顔をして、


「ああ、そうか。本当に君は何も知らないんだな」


 と言った。


「す、すみません」


「いやいい、謝ることじゃない。少し説明させてもらっても?」


「構いませんが、あの慰謝料とかはなるべく控えめにしていただければ……」


「違う! 俺はヤクザ者じゃない。そもそも軽くぶつかっただけで慰謝料とか何を考えてるんだ」

 

 宍戸さんは「ありえないだろ」とため息を吐く。

 ――命の危機も感じていたのは秘密にしておこう、うん。


「で、でも! 何も言わずに喫茶店に引っ張られましたし、何かしらトラブルが起きると思いますよ、普通」


「そうだな、すまない。今度からは気を付けよう」


 今度は来ないでいいです、怖いから。

 でも謝罪じゃなければ一体何だろう?


「それで、その話って言うのは?」


 気になって話を進めると、宍戸さんは思い出したと言わんばかりに切り出す。


「ああそうだったな。君は『ジアース事務所』って知ってるか?」


 ジアース? 確かどこかで見たことがあるような……。

 ――ダメだ、思い出せない。


「申し訳ありません」


「そうか、ならそこからだな。ジアース事務所っていうのはモデルを雇っている会社だ」


「も、モデル、ですか?」


「そうだ。ジアースというファッション誌も手掛けている。結構有名だし、この宿原を歩いてるならみんな知っていると思っていたから説明はいらないと思ったんだ」


 あ、そうだ。思い出した!

 確か義妹の真帆がリビングで読んでるの見かけたことがあるような気がするな。

 っていうかこの商店街宿原って名前だったのか! もろパクリじゃないか、むしろ第二の原宿とかの方が潔くていいと思うのだが。

 やむにやまれぬ事情でもあったんだろうか……。

 いや、今はそんなことを考えている場合じゃないな。

 話を進めよう。


「確かに少し聞いたことあるかも知れないです、ジアース。でもその有名雑誌が何の御用でしょうか?」


 質問を聞いた宍戸さんはサングラスを外して俺と目を合わせ、静かに言った。


「――うちの雑誌の専属モデルになって欲しい」


「は?」


 彼は今何と言ったのだろうか。

 モデル? 彼は目が腐ってるのか?


「いやだから。君をモデルとしてうちのファッション雑誌に出て欲しいんだ。当然お金は払うし学生だろうから時間も考慮する。どうだ?」


「いや、その、あのー……、は?」


 だめだ、混乱しすぎて言葉が出てこない。 


「だから――」


「お待たせいたしました、ホットコーヒーお二つになります」


 宍戸さんがより詳しく説明しようとしたところで、ホットコーヒーが届く。

 彼はコーヒーに何も入れずゆっくり口に運んで、「はぁ」と一息ついて、先程までの無表情が嘘のように、とても困った顔をしていた。


「君、名前は?」


「……言わないと、いけませんか?」


「もしかして詐欺だと思ってるのか?」


「そりゃ、俺が雑誌のモデルなんて本当に意味が分かりませんからね。うちの高校ならもっといい人沢山いますよ」


 声を掛けるのが俺じゃなければ或いは信じたのかもしれないけど、クソ陰キャと言われ続けてきた俺をスカウトするなんて、もう詐欺ですと言っているようなもので、

 それを全部話すと、宍戸さんは心底信じられないという顔で一言だけ、「何の冗談だ?」と言った。

 暫く「冗談」、「冗談じゃない」という言い合いをした後、


「……君は何かのモデルとかになったことは?」


 と相変わらず困った顔の宍戸さん。


「そんなのあるわけ――」


 すぐに否定しようと思ったが、頭の中を清野さんが横切った。


「……あの、カットモデルはモデルに入りますか?」


「そうだな、立派なモデルだと思う」


「そうですか……」


「ちなみにそのお店は?」


 店の名前を聞かれ言うか悩んだが、個人情報では無いしこれは言っていいだろう。


「『futuro(フトゥーロ)』という美容院です」


「『futuro』?」


 美容院を聞いた宍戸さんの眉がピクッと動く。

 

「どうしました?」


「いや、その『futuro』に清野ってやつはいるか?」


「え、清野さんを知ってるんですか!?」


「ああ、高校の時同じクラスでな」


「そうなんですか!」


 世の中は狭いというのはどうやら本当らしい。

 まさか昨日知り合った清野さんの友達に今日声を掛けられるとは。


「清野はどうだった?」


 宍戸さんは懐かしむように笑いながら言う。


「少し強引だけどとてもいい人でしたよ、あ、そうだ。この後清野さんのところに行くので一緒に行きますか?」


 そこで本当に知り合いなら詐欺師ではないと信じよう。

 清野さんの友達にきっと悪い人はいないと思うから。

 しかし宍戸さんは顎に手を当てて少し悩んだ後、「悪いがこの後残っている仕事を片付けなきゃならないから無理だ」と言い、断った。

 残念だけど、宍戸さんのことは清野さんを通じて後で聞けばいいか。


「そうですか……」


「取り敢えずスカウトのことは考えておいてほしい。そうだ、お互い知り合いなら丁度いい。俺が明日清野のところに寄るからそこでもう一度相談しよう」


 一気にコーヒーを飲みほした宍戸さんは腕時計を確認しながら、財布から千円札を出して机に置いて立ち上がった。


「俺はもう行くけど君はゆっくりしていってくれ、お代はこれで足りる筈だから」


「え、宍戸さん!?」


 出会った時とは別人のような柔和な笑みを浮かべて、俺がお礼を言う間も無く急ぎ足で店から出て行ってしまい。


「急展開過ぎるよ……」


 俺は温いコーヒーを啜りながら明日のことを考え始めるのだった。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

雑誌の名前のセンスの無さはもうどうしようもないです、ゴメンナサイ。

また事務所やモデルも全て想像で書いているので、深く突っ込まないでくれると嬉しいです。

あくまでフィクションですので……。

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