八話
大変お待たせしました。
俺は早退した後、清野さんのところに向かって商店街を歩いていた。
「今度こそ最後の散歩だな」
昨日は清野さんに捕まって自然な流れで自殺を止められたからな、今日こそはやるぞ。
でも昨日もある程度商店街は見て回ったし、今はメガネがないから風景は抽象画みたいにしか見えない。
「あ、でも1つだけ昨日行けなかったところがあったな……」
俺は、 商店街を左を曲がったところにある、もうひとつの商店街に目をやった。
商店街の隣に商店街があるというのもおかしな話だが、向こうは商店街というよりかは……、なんというか規模の小さい原宿のようになっていて、角を曲がった瞬間若者の街になるのだ。
昨日は人目が怖くて行けなかったけど……。
今なら見えないお陰で視線も気にならないし、もしかしたら行けるかもしれない。
女子高生の視線と、高い声から発せられるコソコソ話は、自分の話をしてなかったとしても影で生きてる人間としては尋常じゃないほどに心に来る。
でも俺は今日あの原黒に言い返したんだ、そこら辺の女子高生の視線くらいなら大丈夫、それにどうせ死ぬんだから落ち着いていこうっ――。
ひとつ大きく深呼吸して若者の街に一歩足を踏み出した。
「結構賑わってるんだな……」
平日でまだ15時前だと言うのに制服を来た女の子達がわらわらとお洒落な服屋の前に群がっていた。
買いたいものがあってここに来てる訳じゃないので、道を塞いでいる通行人を避けながら真っ直ぐな道を進んでいく。
歩きにくいな……。
絶対に女子高生には触れないように大袈裟に避けながら歩いていたのだが、
「うおっ」
「ひっ」
隣の女子高生に気を取られすぎて、正面の男性に気が付かなかった。
男性の顔を見ると銀色の髪をしていてサングラスを掛けている。
耳を見れば至る所にピアスが空いていて、いかにもな感じだった。
これは、殺されるやつだ。
男性はサングラスをかけているので一体どこを見ているのかは分からないが、俺の前でじっと突っ立っている。
やばい、マジで殺される!
この人は今俺がどういう対応をするか見極めようとしているんだ……。
ならば、俺に選択肢はない。
今この場で選べる手はひとつ。
俺はものすごいスピードで地面に膝を着くと、
「ぶつかってしまい、申し訳ありませんでした!」
大声で誠意を示しながら、地面に手と頭を擦り付けた。
周りの喧騒は急に静かになり、周りに人だかりが出来ていく。
しかし正面の男性はそんなことを気にした様子もなく、ゆっくりとした動作で目の前にしゃがむと、俺の肩に手を置いて、
「話がある」
と言った。
その言葉に俺はとある確信を得るのだった。
――あ、死んだな。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
今話はかなり短いので、夜にもう1話上げられたらいいなと考えております。