五話
遂に五月三十一日、晴れて現実恋愛のジャンルにおいて日間ランキング一位を獲得することが出来ました!
この小説を読んでくれた皆さんのお陰です。
これからも頑張っていくので、よろしくお願いします!
「たのもー!」
威勢よく教室に入って行く謎の女性。
教室は彼女の声とは裏腹に、シンと静まり返っていて担任の動きもフリーズしていた。
「なんだ、ホームルームの途中だというのにこんなにも静かなんて。何かあったのだろうか?」
「確実にあなたのせいです……」
これはもうKYとかいうレベルじゃない。
この人は最早空気を壊す存在だ。
「い、一体何だ!? 人のクラスのホームルーム中に急に突撃してきて!」
クラスの人間より少し早く石化が解けた担任が捲し立てるように彼女を責めた。
「いや、私がホームルームに行く途中、彼と偶々鉢合わせてね? なに、どうやら喧嘩でもしたのか教室に行きづらそうな雰囲気だったので送って来たまでさ」
フフン、と誇らしげに語る彼女。
そして次は俺にみんなの視線が集まる番だった。
一斉に向けられた視線に思わず身体が硬直し、身を屈めてクラスから逃げそうになる。
「なあ、アイツ誰だ?」
突然クラスの男子が言った。
「それな。俺らのクラスにあんな奴いたっけ?」
そのままざわざわと騒ぎは波及していき、最終的にギャル三人組が、
「あんなイケメン居たら忘れるわけないよね」
「マジそれ」
「つかうちらのクラスに転入? させればいいんじゃん?」
と話して、それがクラスの総意となった。
やはり彼女たちの影響力は底知れない。
「な、なあ。君は本当にこのクラスなのか? わざと違うクラスを言ったりは……」
「し、してないです……」
恐らく新手のイジメだろうと思ったが、彼女には言えなかった。
他人を巻き込みたくない。
ギャル三銃士たちの獲物は俺だけでいい。
――どうせ今日死ぬんだから。
「そうか。それならばより分からないな……。おい、そこの君、本当に心当たりは無いのか?」
「ぼ、僕!? ですか……?」
彼女の声に教室の一番前に座っていた男子が反応した。
声からして恐らく鈴木だろう。
ごめんと言いながら殴る彼の声を忘れる筈が無かった。
「そうだ、知らないのか?」
「え、えっと……」
じっと俺の顔を覗き込む鈴木。
眼鏡が無くてもはっきり表情が読み取れる距離まで近づいた後、
「……もしかして、榊、君?」
え?
何故こいつは俺の名前を言った?
言えば自分のイジメを加速させるだけだ。
もしかして……本当にわかってなかったのか?
瞬間クラスがどよめく。
「あれが榊な訳無い」「整形でもしたのか」「別人だろ?」といった声が次々に耳に届く。
本当に分かっていなかったのか!?
イジメでも何でもなく、ただ純粋に分からなかっただけ……。
胸中に渦巻く不思議な気持ちを抱えたまま謎の女性の顔を見ると、やっぱりボヤけて分からなかった。
そして彼女はうんうんと頷きながら俺の背中を軽く叩いた後、
「どういうことだ?」
と言った。
分かってなかったのかよ!
返答に困っていると、ツカツカと数人がこちらにやってくる足音が聞こえる。
前を向くと派手な格好に身を包んだ女性三人組、『ギャル三銃士』が向かって来ていた。
俺は恐怖で思わず女性の背中に隠れてしまう。
「どッ、どうしたのだ!?」
戸惑う彼女を尻目に『ギャル三銃士』は目の前に立ちはだかった。
「キャハハ! クソ陰キャが影武者用意してきたのかと思ったけど、その反応見るとマジであんた榊らしーね」
俺の反応を嘲りながらじっと顔を見てくる。
悪意の籠った目つきだ。
――怖い。
無意識のうちに女性の制服にしがみ付いてしまっていた。
「つか、榊ってそんな顔良かったんだねー。昨日石なんか投げないで無理やり襲っちゃえばよかったかも」
「あ、それ名案ー!」
「最近欲求不満気味だったしねー」
「「「キャハハハ!」」」
下品な声で笑うギャル三銃士。
女性の後ろに隠れる俺。
その間に挟まれた彼女は何を思ったか、
「ハハハハハハハ! なるほどな!」
ギャル三銃士に負けないくらいの大声で叫ぶように笑った。
「何、この人。頭おかしーんじゃないの?」
「頭がおかしい、か。そうだな、そうかもしれん。……君がこのクラスに行きたくない理由がやっと分かったよ」
「え?」
「榊、と言ったか。先程は些事と言ったことを謝ろう」
彼女は急にこちらを向いて頭を下げた。
「……構いませんよ」
予測不能な展開に驚いて、そう言うと。
彼女はさらに驚くべきことを口にした。
「榊。先程の相談の礼と、今回の詫びを兼ねて――君の悩み、私が解決しよう」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
話がなかなか進まなくて申し訳ないです。
次回、やっと謎の女性の正体が明らかに!――なればいいと思ってます。
また次回お会いしましょう、それでは。