二十四話
「「ハァッ、ハァッ」」
終了の声が掛かった途端二人して地面に倒れて激しく息をする。
「榊慎太郎! いい……勝負だった!」
「うん!」
短い会話のみだが妙な達成感と、急な親近感が沸いた。
さらに源田君は続ける。
「それと……昨日はすまなかった。正直言うと君に八つ当たりしてしまったんだ、我ながら恥ずかしいと思うよ」
「そっか……」
いきなり告げられた源田君の本音。
確かに昨日言われた言葉は一晩中俺を苦しめたのは間違いない。
でも不思議と今は憎しみの感情は全くなかった。
むしろあの言葉のおかげ、というのも変だけど、それがあったから今日ここまで頑張れたんじゃないかとさえ思う。
「なあ慎太郎。一つお願いがあるんだが、聞いてもらえるか?」
「ジュースを買って来いとかは断るよ」
「お茶ならいいのか?」
「まさか」
お互いに軽口を叩きあう。
ああ、友達ってこんな感じなんだろうか?
そうやってお互い笑った後源田君が大きく息を吐いて。
「これからも私と競い合ってくれないか」
「え?」
予想外の言葉。競い合うって今日のランニングみたいにってことだろうか?
頭に疑問符を浮かべていると源田君が自分の過去を語り始めた。
曰く「自分は優秀過ぎた」「周りに競い合えるような人間がいなかった」「それを求めてモデルになることに決めた」と。
なんだこいつ、めちゃくちゃ正反対の人間じゃないか。
「随分と調子乗ってるね」
あまりの輝かしい人生に思わず毒を吐く。
「ああ、そうだ。でも私は君に会って井の中の蛙だって気づけたよ、ありがとう。それと今一度君に謝罪をしよう、今回の暴言は本当に申し訳なかった。だからこれからは君のライバルでいさせてくれ――」
きっとこれは彼の心の声なんだろうな。
「分かった、これからよろしくね。源田君」
「ああ!」
それから源田君に黒川君を紹介したり、俺自身の学校の話などをして親交を深めて行った。
学校のイジメの話をしたときは顔を真っ赤にして怒ってくれたし、黒川君は逆に顔を真っ青にして心配してくれた。
三日も経てば三人とも仲良くなって、本格的なモデルのレッスンに入っても励ましあって耐えてきた。
木崎君は黙々と一人でやっていたけど。
何度か話しかけたけど、「俺に近づくな」の一点張りだったし。
いつか仲良くなれるといいんだけどな……。




