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十五話

投稿が遅れていしまい、申し訳ありません。

暖かい感想に励まされながら執筆させていただきました。

せめて週一のペースで投稿します……。


 翌朝、土曜日。

俺はいつもより少し遅めで、かつ義理の親子が起きていない時間に目を覚まし、あくびを噛み殺しながら散らかっている洗濯ものや洗い物、軽い掃除を済ませて家を出た。

 今日は宍戸さんに会ってスカウトの話をする日だ。

 私服は持っていないので制服で朝方の街に繰り出す。

 昨日は急いで『futuro(フトゥーロ)』を出たので集合する時間帯を決められなかったので、三時間ほど暇つぶしをしようと思って昨日宍戸さんに連れられて行った喫茶店に行くことにした。

 しかし、この俺がモデルか。

 全く実感がわかない上に本当に務まるのかどうかすら怪しい。

 おそらく今のままではいけないだろう――、そう思った俺はおもむろにコンビニに入りジアース六月号を手に取っていた。

 さて、このジアース、買うのはいいけどレジを通すのが滅茶苦茶恥ずかしい。

 ただのファッション雑誌なのだが、こんな芋を具現化したような人間が買ったらレジの店員さんに嘲笑されてしまうのでは……。

 列に並びながら癖になっている卑下が始まる。

 futuroでみる自分はいつも、まるで生まれ変わったかのように感じられるのに、一歩外に出てみればこれだ。

 笑われたらどうしよう、恥ずかしい、死にたい。

 列が短くなっていくたびに心臓はより激しく高鳴る。


「お次の方どうぞー」


 おそらく女子高校生であろう店員にとうとう呼ばれ、手に持ったファッション誌を手渡した。

 彼女は受け取った後に、「ああ」と一つ呟くとそのままスムーズに会計を済ませてくれた。


「ありがとうございましたー」


「ど、どうも……」


 雑誌を抱きかかえるようにして、足早にコンビニを去る。

 やっぱり笑われた……。

 「ああ」って言われた。モブが高校デビューでもすんのかなってテンションの「ああ」だったっ!

 

「ああ、恥ずかしい……」


 やはり俺にはモデルは荷が重いのでは……。

 そんなことを考えながら喫茶店に向かった。





~レジの女子高生side~


「いらっしゃいませー」


 はぁ、マジ退屈なんだけど。

 つか休日にこんな朝っぱらから働きたくねー。

 冴えない顔をしたままボーっとレジを通し続けながら、イケメンでも来ないかと入り口を眺める。

 まあこんな時間、こんな場所にイケメンなんて来るわけ無いよね。

 

「次の方どうぞー」


 機械のようにレジ待ちの客を呼ぶ。

 ん、この制服うちの高校じゃん。んで、買うのはファッション誌か。

 しかも『ジアース』ね。

 っていうかこれ、『女性向けのジアース』だけど……、まあそういう趣味があるのかもね。

 それでどんな顔してんの?

 フッと男子生徒の顔を見上げると、「ああ」という声が思わず漏れた。

 え、めっちゃイケメンじゃん。これってモデルやっててもおかしく……そうか。

 きっと街中で撮られた自分のチェキかなんかが出てるのかな?

 でもこんなイケメンうちの学校いたっけな?

 とりあえず後でみんなに知らせないと……。

 

「ありがとうございましたー」


 客を無事捌き切った彼女はすぐさまラインを送った。

 

 『未確認のイケメン発見。女装趣味かも』





~慎太郎side~


 無事喫茶店についた俺はファッション誌を取り出し、そして驚愕した。

 表紙にはピンク色の文字でジアースと記されており、でかでかと女性モデルが映っていた。


「こ、これはもしかして……」


 体温がグングン下がっていくのを感じる。

 冷汗が止まらない。

 ぺらぺらとページを捲ればすべてのページに可愛らしい装飾が施されており、挙句の果てに『彼氏とのデートファッション』なる見出し。

 

「こ、これは女性向け雑誌!?」


 ジアースは実は女性向けファッション誌だったの!?

 え、なんで俺スカウトされたの!?

 え!? え!?

 女装しろと暗に言われているのだろうか。

 それとも宍戸さんはそういう趣味が……。

 そういえばさっきのレジの「ああ」っていう言葉ももしかして、変な方向に察してくれたのかもしれない。

 よし、モデルのお話は丁重にお断りさせて頂こう。

 何よりも固い意志でそう決めて、冷えた体に追加のホットコーヒーを頼んで、暇つぶしにファッション誌を見ることにした。


「それにしてもいろんなタイプの洋服があるんだな、モデルさんもみんな綺麗だ」


 少し落ち着きを取り戻した俺は、先程とは変わって一ページずつゆっくり写真を眺めていく。

 すると、何となく見覚えのある女性がいてふとページを捲る手が止まった。

 写真の彼女はとても美人で、大人っぽい服装をしていて全体的に落ち着いた配色の洋服を身にまとっている。


「んん? どこかで見たことがある気がするんだけど、この人。それこそつい最近……」


 ページの半分ほどを占める彼女の写真をじっと見つめていると、モデルのインタビュー記事が掲載されていた。

 その記事を流し読みしながら最後まで行くとそこには信じられない名前があった。


「や、やや柳詩織!?」


 ま、まさか!? あの詩織先輩なわけが……!

 しかし見れば見る程昨日見た先輩にそっくりで、写真の雰囲気は昨日と真逆でさらに混乱した。

 昨日の詩織先輩はもっと元気で、やんちゃなイメージだったけど……。

 再び写真を見るととても高校生とは思えない彼女の姿があった。

 写真でここまで感じるイメージが変わるものなのか。

 

「清野さんが昨日言っていたギャップって言うのはこういうことか……!」


 後学のために間違えて買ってしまった女性向けファッション雑誌で、思いがけずモデルの魅力を感じ取ってしまった俺だった。

「だけど、やっぱり女装はなぁ……」


 慎太郎は未だ男性向けの存在に気付かずコーヒーを啜る……。


ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

投稿間隔にかなり穴が出来つつありますが、改めて言わせていただきます。

絶対エタらないのでご安心を!

それではまた次回お会いしましょう。

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