十二話
さあ、今回の更新は早めですよ!
ブリーチを終え、一度髪を洗い流した後清野さんに眼鏡を返してもらって鏡に映る自分を見て驚愕した。
「ええええええ!? これ、本当に俺ですか……!?」
今朝も似たようなリアクションをした気がするが、今回は本当に自分ではないと感じた。
短く整えられた髪型と、ムラなくきれいに染まった金色の髪の毛。
唯一前の自分が残っているのだとしたらそれは分厚い眼鏡だけ。
髪型と色だけでこんなにも人相が変わるものなのか……。
「ふふ、慎太郎君今、髪型と色だけでこんなに変わるのかって思ったでしょ」
清野さんがニコニコしながら後ろで笑っている。
「はい……。正直自分じゃないみたいです……」
鏡に映る金髪の少年が自分だなんて、本当に信じられない。
「慎太郎君のイケメンの種類が変わったね! 黒髪の時はスポーツ系のイケメンだったけど、今はやんちゃ系っぽい!」
何故か鏡を通さず真横から見つめる三木さん。
でもそうか、ギャル三銃士の手下も金髪の男子が多かった気がする。
「あいつらと同じ髪色は、ちょっと嫌かもな……」
「ん? 慎太郎君何か言った?」
小さな声で呟いたのだが、横に立っている三木さんには微かに聞こえてしまったようだ。
「いえ、何でもありませんよ。なんか生まれ変わったみたいで」
「そっか、そう言ってくれるとこっちも嬉しいよ。まあこれからさらに染めるんだけどね」
「え?」
清野さんは今何といったのだろうか。
口に出さなかったけれど、生まれて初めてのブリーチはかなり痛かった。
ヒリヒリして遠火で頭皮をあぶられているような感覚とでも言えばいいのだろうか。
それをもう一回なんて無理無理無理!
「ああ、安心してよ慎太郎君。次はブリーチじゃなくて色を入れるから痛くないよ」
そんなに顔に出てたのかな、嫌がってるの。
それにしても清野さんの言っていることがいまいち理解できない。
色を抜いたのにまた入れる? 一体どういうことなんだ?
「あ、やんちゃ系イケメン君理解できないって顔してるね! ここは優しいお姉さんが教えてあげよう!」
横からしゃしゃり出てきた三木さん。
教えてくれるのはありがたいけど敬称がイケメン君に戻ってるし、ついでに枕詞までセットしてやがる。
どうせ訂正しても名前で呼んでくれないんだろうなと思いながら、一応「慎太郎です」と小さく呟いた。
「それで、どういうことなんですか?」
「うん。分かりやすく言うと、金髪に染めるって言うのはね、髪の毛の黒色を消しゴムで消すようなものなの!」
「消しゴムで消す?」
「だって黒色の上に青とか赤とか色を足しても黒色は黒色のままでしょ? だから黒色を一旦白色に戻すことによって、黒色以外の新しい色を髪に乗せるんだよ!」
「そ、それじゃあ俺の髪はこれから赤と青になるってことですか!?」
まるでキカ○ダーじゃないか!
「ハハハ、それは三木の例えだよ。これからモデルになろうって子にそんな奇抜な髪色にはさせないから安心して」
「じゃあ俺の髪はこれから一体何色に?」
「そうだね、モデルをやるっていうからどんな服にも合うような色がいいと思って――」
「思って?」
「慎太郎君の髪はこれから無彩色に染めようと思う」
「――むさいしょく?」
ん? 聞いたことない色だ。
むさいしょく。一体何色なんだろう、もしかしてどことなくムサイ感じな色なんだろうか?
「フフフ、イケメン君。無彩色って言うのはね、何色でもないんだよ!」
ああ、三木さんがとうとう意味の分からないことを言い始めた。
「フッ」
「あ! イケメン君鼻で笑ったな! このぉー!」
あ、マズイ。
思わず心の声がそのまま出てきてしまった。
三木さんは中腰になってタックルをかまそうとしてきている。
「まあまあ三木、落ち着けよ。初めて髪を染めた慎太郎君が無彩色なんて言って分かるはずない」
「それは、そうですけど……」
清野さんの説得によって、三木さんの腰が徐々に上がっていく。
助かった……。
「無彩色って言うのは文字通り色が無いって意味なんだけどね。いろいろな色を混ぜて、茶色とも黒ともグレーともつかないような色にするってことさ。やり方としてはまずベースになる色を慎太郎君の髪に入れて、そこからさらに青みがかった黒色を混ぜるんだけど……」
清野さん、全く分かりません。
そもそも無彩色自体よくわかっていないのに。
でもスキンヘッドにして、バカには見えないとか言われなくて本当に良かった。
「まあとにかく時間が掛かるんだ。今が大体午後六時くらいだけど、慎太郎君の都合が悪いなら明日でも俺たちは構わないよ。どうする?」
どうする、か。
正直この状態で家には帰りたくない。
あの他人たちに今の自分を見せるのは避けたいし、何を言われるか分からないからだ。
なので俺は、
「いえ、まだ帰らなくても大丈夫です。続けてください」
と告げた。
―――あいつらに復讐するのは最後だ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
作中に出てくる無彩色ですが、文章で説明するのが非常に難しく……(文章がへたくそでごめんなさい)
次回でもわかりやすく説明するつもりですが、もし気になってしょうがない! という方がいれば調べてみると想像しやすくていいかもしれません。
それと毎回誤字脱字報告を下さる皆さん、本当に感謝しています。
いつもありがとうございます。
それではまた次回!