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国際結婚(妻の寂しさ)ーノスタルジアに寄せて

作者: ヌベール

28年前、私の妻は留学生としてとある国から日本にやって来た。

日本で日本語を学びながらアルバイトをしていたが、その頃私と知り合い、私の熱烈な求愛に折れて私と結婚し、日本で生活することになった。

数年後男の子が生まれ、妻は、子供が恥ずかしい思いをしないようにと一層日本語の勉強に励んだ。公園デビューもはたし、日本のママさんたちの輪の中で、ただ一人外国人として友人を作り、日本食もマスターし、子供を日本の食事メニューで、冷凍食品は一切使わずに育ててきた。

子供が小学校に上がると、いじめを受けたりしないようにと、あえて日本語の本の読み聞かせに参加したり、クラスの役員を務めたりしてきた。

その甲斐あって、子供はすくすくと成長し、友達もたくさんできた。

一方で、私の安月給にもめげず、大変な生活のやりくりをこなしてきた。

妻は、自国にいるより、日本のほうが遥かに苦痛の多い生活を強いられたのは事実だ。

子供が中学生の頃、妻は私の親兄弟とうまくいかず、日本では親族の付き合いもなくなってしまった。

そんな頃、妻の母親が肺癌で亡くなった。遠い外国にいるから、母親の死に立ち会うことはできなかった。

そして、その数年後、父親も逝った。

妻は、つまり両親とも、看取ることができなかった。

深窓に育ち、あれほど大切に思っていた両親とは、いずれも亡くなってから、抱えている仕事を片付け、飛行機を予約し、自国に飛び、それからの再会だった。

そして日本にとんぼ返りし、また日本の生活に埋没して生きてきた。

妻の故郷は発展とともに変り果て、今は昔の面影はない。

こうして28年が過ぎ、果たして妻は日本に来て幸せだったのだろうか。

私は今になって、求愛、結婚と、自分のしたことは本当に良かったのかと自問する。

夜、ベッドに入ると、たまに妻が口にする言葉がある。

「寂しい」

 外国人の妻の寂しさは、私の想像を遥かに超えたものであるに違いない。

「寂しい」

 妻がそういう時、私は心の中で叫ぶしかない。

 本当にごめんね。

 そして本当にありがとうと。



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