異世界 1ー3
何がヤバイって?蜂だよ蜂。
また走って逃げろって言うんでしょ。
何か無理っぽい。
蜜蜂ではないのだ、スズメバチっポイんだよ。
ちょっと違うか、いや違わない、大分違うけど。
形はスズメバチだよ、でも大きさが雀位あるんだよ。
デカイよ、恐いよ、無理だあんなの相手にするとか。
どこにいたか、どこに巣があったと思う?
土の中、根っ子にへばりつくようにあった。
なので、木が無くなり、巣の上に大量の虫達が落ち、栗鼠ポイのとか蛇とか、落ちてったのだけど、みんなスズメバチと思われるものに瞬殺とまではいかなくとも、集団リンチのごとくぼこぼこになって死んでいった。
そして、俺に向かって来るではないか。
今から逃げようとしても間に合わない。
こうなっては戦うしかない。
虫属性には、火属性が有効。
一応定番、というわけで火を放つ。
火の玉でも、火球でも、火炎でもなんでも良い。
火を連想しながら、火を打ちまくった。
どの位打ちまくったのだろう、気付いたら蜂の攻撃は終わっていた。
無数に広がる羽や針、そして石があった。
物の焼ける臭いが充満しているなと思ったら、火災まで起きていた。
今度は、水を出して消火にあたる。
火が消えるのを待って、全て収納する。
残り火で火災が起きても嫌なので。
クエストアイテム鑑定結果
虫の羽 虫全般の魔物系が持っている透明感ある羽。大きさや重さ、色等は関係ない。 1枚 50円
蜂の針 蜂全般の魔物系が持っている毒針。 1本 100円
魔石・極小 極小の大きさの魔石。 1個 100円~
もう出ました。魔石ですよ。
大きさは小さいが、極小だが、魔石は売れる。
その数、500個ということは、細かいことをおいといて500匹規模の巣があったこととなる。
クエストの為にも半分いや、200個入れておこうと思い、クエスト魔石に入れておく。
神様が欲しがる理由は、想像もつかないが。
後は収納した火のついた木や、最初から収納した7本の木は全て炭にした。
異世界初めての街、村かもしれないが需要があることを祈りつつ移動をすることとする。
太陽が45度位上がっているのを見ると10時位だろうか。
12時に太陽が真上という設定ならそのくらいだと思う。
朝食には遅いが、お昼くらいには間に合いたい。
太陽の傾いている方に草原があり、太陽に背を向けるその先に街道がある。
大雑把だが、目標を決めて原生林から抜けることとする。
しばらく歩いていると、もとの場所にたどり着いた。
としおとかいう神様はもう依頼をしてこない。
椎茸の原木並べるのに忙しいのだろうか。
次の神様が依頼してくるまで、取り合えず出来ることをしよう。
原生林はもういい。
草原に目をやる。
街道があるからには、この先は街か村かあるだろう。
ここからじゃ見えないんだよね。
地図を要請しようとしたら、案の定有料なので控えておく。
10万以上持ってるとはいえ、使いたくない。
どうしてもという時のためにとっておこう。
俺は、モッタエナイ将軍なのだ。
ストレス解消の1つに爆買いと言うものも持ってるけどね。
草原を行くことにした俺だけど、鑑定しながら行くことにした。
見渡せる範囲で見る限り、鑑定出来る名のあるものは、3つだ。
クエストアイテム鑑定結果は、
薬草 毒草に似た形をする薬草。 100円
毒草 薬草に似た形をする毒草。 100円
スライム 液状の物体に包まれた魔物。
スライムは、クエストアイテムに入らないので値段はつかない。
数の比率でいうと、薬草1:毒草3:スライム0.01といったところだ。
薬草が結構あるが、毒草が多い。スライムがそこそこいる感じだ。
ゲーム序盤の敵とも、アイテムとも、言えるもの達だ。
でも、スライムは場合によっては、斬りにくい相手、魔法の効かない相手ともいうし、それどころか、武器や鎧、服を溶かす存在とも言われる。
この世界のスライムはどれにあたるんだろうな。
人間を骨まで溶かすタイプでないことを祈る。
まずは、街道を見失わないように移動しながら、スライム1匹倒してみよう。
そう思いながら、毒草を採取したり、薬草を採って匂いを嗅いでたら、スライムの方から目の前にやって来た。
そして、右手に持っていた薬草を欲しがってるように見えたにで1本あげたが、スライムはその薬草を取り込むと同時に飛び掛かってきた。
すかさず避けると同時に炎をぶつけると、スライムの体が蒸発するようなイメージで、チリになっていった。
ここで、初めて魔物がチリになることを知る。
蜂の時は気付かなかったが、グロいのを見なくて済むかもと思う。
魔物だけがチリになって、動物はチリにならないとか・・・フラグかな。
まー良い。
スライムを倒した報酬は、スライムポーションというものと、魔石極小だった。
スライムポーション ポーションより回復力が劣る。 800円
スライム倒して良いことあるのだろうか、疑問になってしまった。
街道に近いところの薬草や毒草を採取しながら進んでいく。
しばらく歩いていると、一台の馬車がいた。
馬車は、スライムに囲まれている。
これは、あれだ。
商人助けてあげましょうかな。
しかし、悪い商人ってこともあるので、鏡さんに聞いてみたところ、信用できる人達だという。
近くにいくと、声が響いていた。
「くそ、また薬草取られた」
「これで何本目よ」
「知るか、スライムは、魔法も武器も通らないんだよ」
「も、もういいよ。私が自殺して。そうすればあいつも手を出さないだろう」
「そんな事しても無駄だ、余計あいつを喜ばせるだけだ」
「そうよ。あんたの奥さんを慰めものになんか。くっ」
「くそー」
OIOIOIIOIOIOIオイオイオイオイオモイヨ重い。
何か胸くそ悪い話が流れ込んできましたよ。
どういう状況かというと、女性1人を含む3人の冒険者らしき人たちが、スライムに苦戦して、馬車の上にいる若者っぽい男がこの世の終わりを見ながらうだられてる状態。
スライムだけで、馬車の後ろに100匹近くはいるだろうか、両側に30匹づつ、前は通せん棒しているだけに見えるが、20はいる。
めっちゃ面倒なので、スライム全て氷付けにして粉砕した。
何か、めっちゃ面白い。
何がって、冒険者らしき3人の顔がだよ。
あんぐりして、固まるとはこの事だな。
っと、そんな事言ってる暇無いかな。
一番若そうなといっても、20歳くらいかなと思う男に、「ポーションと魔石取ってこい」と言うも、聞こえてないみたいだ。
頭を軽く小突いて正気に戻す。
「おい、ポーションと魔石取ってこい」
「はー何で俺が取ってボヘッ」蹴飛ばしちゃった。テヘペロ。
蹴飛ばされた男をみて、正気に戻る2人は男が30位か女が20半ばかと思う。
「おいっ。なにも蹴飛ばさなくても」
「そ、そうよ。ってアンタ誰?」
「俺か?純だ。ジュンと呼んでくれ」
「ジュン。私は、ミント。この状況何とかしてくれて有難う」
「俺は、ムックという。あいつはラントだ。たっ助けてくれて有難う」
「助けたからには、状況だけでも知りたい。聞かせてくれないか?」
「しかし、急いでて」
「さっきの状態からすぐ抜けれる手段があったら、すぐ行けば良い。無いのであるなら、俺に教えてくれる位の時間があるだろう」
「そうね、良いわ」
「おいっ」
「何か、悪い人ではなさそうだし、私たちでは勝てない力を持ってるわ。どっち道ダメ元よ、だったら可能性のありそうな方に掛けたいわ」
「そうか、どのみちこのまんまじゃ解決方法もないわけだし、簡易説明だけど良いか?ジュン殿」
「ジュンで良い。こっちも頼みがあるから。今日朝からの記憶はあるが、その前のこの世界の記憶がない。なので、身分をくれるところに案内してほしい」
「事情が全くつかめないが、出来るだろう。わかった。こっちの話はちょっとややこしいが聞いてほしい」
「良いよ」
「前に座っている男が、とある店の亭主でなマイクという。以前あるところから借金したそうだ。その代わり系列店にならないかという誘いを受けたそうだ。そこまではよかったんだが・・・」
「ドランの奴がね、あードランとはその借金の元締めね、マイクの奥さんに横恋慕してね、気付かないうちに借金を作らせて、返済を迫ってきたそうよ」
「マーラ御免よ。私が不甲斐ないばかりに」
気が散るから、ちょっと黙ってようかと思ってしまう。
でも、気持ちもわかる気がする。
めっちゃマーラという女性を愛してるんだろうな。
馬車の中を鑑定する。
恐ろしいほどの量のポーションとスライムポーション、そして、僅な薬草と大量の毒草。
何処かで聞いたことがありそうなシナリオである。
「それで、この馬車というのか?ポーションとスライムポーションに毒草か?こんなに売る宛があるのか?」
「えっ」
「えっってなんだ?」
「見えない場所においてあるのに、何でわかるの?」
「わかるものは、わかる」
「説明になってキャァ。ナンなのマイク」
「あの、毒草ってどういう事です?」凄まじいスピードで迫ってきて聞いてきた。
「言った通りだ。そこに仕舞ってあるの毒草だろ」鑑定がそう言ってる。
正確には御都合主義スキルだがね。
「全部拾ってきたっす。ダンナ」ダンナときたか、聞き分けの早い奴は嫌いではない。
「ジュンだ。ジュンで良い」
「わかったっす。ワー」ラントに降り注ぐ毒草の雨。
「なんなんすか?ってこれ毒草じゃないですか?薬草では無かったので?」
「何で、毒草とわかる?」
「臭いっす。薬草が匂うのにたいし、毒草は臭うっす」
イヤイヤイヤ、見もしないで嗅ぎもしないでわかる奴が聞く質問かという顔しないの。
全く、この2人は。
拾ってきてもらったスライムポーションと、散らばった毒草を収納すると4人からの目線を受ける。
「「「「収納、鑑定・・・何者?」」」」
「で、これらを売って金にして返そうって事で良いのか?」
「いいや、そうではない」
「と言うと」
「なぜか、薬草が一万本、ポーション千個スライムポーション千個と言うと条件で手を打つらしい」
「じゃ、何故毒草を積んでる?」
「別の街で仕入れたはずなのだが?」
「確認はしたのか?」
「したわよ」
「全部?」
「全部出来るわけないでしょ」
「そこに漬け込まれたか」
「どういう事?」
「毒草を下に敷き、上に薬草を乗せて、売るみたいな感じか?それに、スライム達は薬草が目当てなら上の薬草だけとられてしまうから毒草しか残ってないという感じか」
「そもそも、何で回復アイテムなんだ?普通、借金を返すのは金だろ」
「向こうの意向だから、わからん」
「細かいところまで話してたら、日が暮れる。最善策はなんだ?」
「この取引を成功させ、借金を返し系列店から抜けること」
「なんだ、このイベ・・・ントッじゃなかった、取引が成功すれば、全て万々歳なんだな。仮に失敗したら?」
「店は乗っ取られ、家族は奴隷にされる」
マジですか、マジでいたんだ奴隷。
「それで、このまま毒草を持って買えったら不味いな。いや終わりだな」
「その、ドランとやらは、いつ頃から横恋慕しているんだ?」
「結構前からよ」
「最初の借金という話より前からか?」
「そうね」
経営難→借金→系列店→更なる借金→取引→失敗させる→乗っ取り→イエーイってか、最初から仕組まれてたのであるなら、相手は相当だな。
毒草もワナの1つではないかなと思う。
このままでは、取引が成功しても何らかの方法でやられてしまうだろう。
「この取引が成功すれば、全ての借金が支払わされ、系列店から抜けれるってことで良いんだな」
「そうだ」
「期限は」
「4日後だ」
「それまでに往復出来る薬草が仕入れられるとこないか?」
「無いな、薬草を1万とか無理だ」
「マジでか」
気になることを聞いてみた。「その商人は役人ともグルか」
「グルだと思うぞ」アルアルだなぁ。
下手すると、門番がいちゃもんつけて没収ってなる気がした。
これだけ周到だと、見張りがいるのかと疑うが、その気配がないから微妙。
そういえば、何であんな沢山のスライムがいたんだ?そこら辺を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
冒険者3名は見ていないのだが、マイクいわく、スライムに襲われていた者が馬車に駆け寄ってきて、転けたらしい。
その時、薬草を散らかして逃げていったのだと。
スライムは、採取した薬草の匂いに敏感で集まってくるらしい。
人に襲いかかるつもりはないが、匂いに連れられたスライムと、人間がトラブルになることはあるとの事。
それって、この馬車をスライムに襲わせたのではと思う。
その証拠となるかわからないが、原生林から馬車まで誰とも会ってない。
「信用できる取引が出来るところはないのか?」
唐突に聞いてみると、定番とも思える答えが返ってきた。
ギルドだ。
商人ギルドと冒険ギルド。
冒険ギルドは置いといて、商人ギルドはその悪徳商人の影響はないのかと聞いてみたら、影響はあるが、商人ギルドの信用を失うようなことはしないとの事。
一番良さそうなのは、商人ギルドで取引を成功させると言うこと。
何とかなりそうだと思い、思考を巡らす。
そして、言う。
「俺に預けてくれないか?悪いようにはしないから」
一度言ってみたい台詞が言えたのであった。