閑話 0001 としお
わしゃ としお と言う。
年をとった男で、年男という。
なわけないじゃろ。
年をとってるというのも、男というのも間違いではない。
歳は88歳、米寿と言われる歳じゃ。
でもな、気持ちの上では中二病だ。
いい歳してみっともないじゃと。
冗談いうでない。
常識はある。
むしろ、常識をもたずに、中二病していたら・・・正直 Out だろうよ。
今何してるかというと、山に入って探索中じゃ。
自分が所有している山じゃ。
雑木林みたいなものじゃが、一軒の別荘が建ってる。
昔、建てた石造りの別荘。
何年間放置してもすぐ使えるように造られてるから、造りは至ってシンプルなのだ。
あー別荘と言っても、自分の家から車で十数分といった距離じゃ。
少なくとも電気と水道は通っているが、ガスは通してない。
プロパンも考えたが、暖炉作りにした。
薪を燃やすタイプのものだ。
その辺から薪を拾ってきて何て、気楽に考えていたが、無理とすぐに判断して、ホームセンターで買ってきては補充したものよ。
だが、今ではそれも辛い。
体は至って元気だが、無理は利かなくなったとつくづく思う。
別荘に戻ってきたわしは、庭にある椅子に腰かけた。
取り出したスマホを操作して、動画を見るためだ。
ウィーフィーっといったかな、動画をスムーズに観るための電波をとばすやつ。
そういったものは、きっちり仕込んである。
ふと目に留まる。
異世界ライフ、ライブ中?
何処かの誰かが、ゲーム中継しているにしては、アニメぽい。
スルーしてもいいが、なにか気になるから、登録登録と。
ほう、異世界の物が買えるとな。
サギ だな。
・・・おー木を斬り倒したぞ。
リアル映像なら感動も多いだろうが、アニメだとちょっと劣る。
・・・薪を作ったと聞こえたような。
あっコメント欄に薪の売値が出たな。
1kg80円だと。
微妙。
新たなサギか、或いは買ってみよう。
欲しいものは、ブナの薪と、個数というか、今回は数量で1Kg、コメントはサンプル欲しい的な。
サギだったら徹底潰してやるワイ。
画面の中のやつが反応してるな。
と思いながら見ていたら、目の前に光の枠が出来て、金いれろとあった。
80円、面倒くさと思い100円いれたよ。
反応ない。
おかしい、絶対おかしい。
お金いれたのに動かんのかい。
何処からこの光は出てるんだ?と気になる感じはするのだが。
ウム、常識に考えたら、異常だ。
お金入れたのに反応がないなんて、あり得ん。
この光の枠は何なんだ?何で出来てる?んー。
お金入れたんだから、お品とお釣くるはずじゃろ。
この光の枠に常識はないのか?
と思ったが、ここは冷静に対処しよう。
100円を一度納めて、お釣ないように80円を置く。
小銭持っててよかった。
送金の枠が浮かんできたから、送金っとポチ。
薪が出てきた。
お金を送ったその場所に。
紐のようなもので縛られていたので、薪を一本抜いて、確認してみた。
普通の薪だ。
ブナの木に間違いない。
乾燥もしっかりしている。
画面の奴は、送金したお金を確認しているようだ。
こんなことあっていいのだろうか?
本来なら、ホームセンターにいって、買って自動車で運んで積み替える事が必要で、手間である。
どこぞの企業に頼んだら、配達料を払って配達してもらう。
配達料を支払わなくていいのだろうかと。
薪が簡単に買える事は、わしにとって楽なことだから気にするのはやめよう。
そう思い、紐を持ち上げたら、薪がバランスを崩しバラバラになってしまった。
その直後、紐はチリになって消えていった。
薪はそのまま残っている。
そこは、ほら、お、驚かないぞ。
ポーションを使うと、使いきるとかな、瓶も消えちゃうあれだろ。
初めて見た。
バラバラになった薪を集め、暖炉の横の薪置き場に置く。
そして、薪を追加注文する。
スマホの位置を変えるだけで、お金を払う場所が変わるから、それを利用して、薪を大量注文したら、自分で薪を積み上げることなく所定の場所に積み上がったよ。
マジ便利。
調子のって、椎茸の原木頼んでみたら、マジで原木まで買えるようになっちゃったよ。
ちょっと買いすぎかもしれん。
原木に椎茸の菌を埋め込むまでは楽しい作業だったが、これを並べるとか過酷かもしれないと思う。
後日、微少魔石に「物を動かす能力」とつけてみたら、制限があったものの30万で買えた。
制限とは、目に見えているもので、自分から半径5mまで50Kgまで動かせるとある。
50Kgまでだったら数は問わないということ。
有効期限は1年間なら使い勝手抜群である。
若ければ、馬鹿馬鹿しい出費かもしれんが、今のわしにはありがたい。
しかし、魔石と他のアイテムを買うときの違和感がある。
アイテムも魔石同様、自動で売ってくれれば良いのに。
ストックを別に作って、在庫がなくなれば、発注出来るようにすれば良いのに、不便じゃろうが。
後、オークションも不便じゃ、オーダーメイド方式にすれば良いのに。
そう思いながら、眠りに着いた。
しばらくして、動画を見ていたらなにか疲れてしまい、ポーションを頼んだ。
奴は、ダンジョンなる場所に移動していたのー。
やはり、アイテムの受け取りのタイムラグが気になる。
これでは、奴が寝てるとき、受け取れないではないか。
わしは、この受け取りシステムに不満があると書き込みをしようとした瞬間目の前がグニャリとまわり、別の場所にいた。
待っていると少年が現れた。
歳は10歳ほどか、以前何処かであったような。
思い出した。
「思い出したか?」
「はい」
「話しづらいなら別の格好に」
「構いません」
「僕は呼ばれたようだが、何のようだ」
異世界ライフのアイテムの売買方法を買えるべきと、進言する。
魔石に満足していたので、お礼は欠かさず言った。
まず、ジュンとやらに、売っているのはこの世界に人たちだと説明した上で、ジュンが随時売れる分を、別ストックしといてもらい、買う方は、それらを買っていく。
なければ、注文方式にする。
こればかりは仕方がない。
ジュン本人が売ってみたいと思うものに限り、オークション方式をとる。
最後に、今までのオークション方式で売るものとあったものをオーダーメイド方式に変えてみてはいかがでしょう。
「そうか、そうしよう。メンテに1ヶ月か2ヶ月かかかるがいいか、それまでは、緊急性を除きストップさせるぞ、こっちもそれなりの事情がある。話がわかった証として、お主が預かってる靴をもらい受けよう。30年前僕のちょっとしたミスでそっちの世界に送ってしまった小僧が世話になった貸しを返そうではないか。しばらくは買えなくなると思うが、そのつもりでな」
そういわれた瞬間、さっきの場所に戻ってきた。
どっと疲れた。
目の前のポーション。
緑色の液体の入った瓶。
今まで、ゲーム、マンガ、アニメ、小説で見かけたもの。
一生涯手にすることはないと思っていたが、ここにある。
一気に飲み干した。
甘さのある飲み物だ。
元気が溢れてくる。
腰の痛みが消えていく。
肩のコリが無くなっていく。
若返った気分になった。
掌から瓶が消えていく。
先程の薪の紐と同じだ。
そう言えばと思い、家に帰った。
家に帰り、30年前不思議な経験をした、であった少年が残していった皮で出来た靴。
保管していた箱に手を伸ばす。
軽い。
中身がもう無い証拠だ。
この先、どの位生きられるかわからないが、楽しみが増えた。
年甲斐になく、興奮する。
これだから、中二病はとめられない。
毒薬なんて危ないものも売るだろうが、良いものも沢山ある。
さあ、夜も遅くなってしまったが、今何しているかの。
寝てやがった。
わしも寝る。
夜更かしは、体に毒じゃからの。
ZZZzzz




