閑話 XXXX あかり
私の名前はあかり。
今は動画を観ているの。
異世界ライフという名前のね動画を。
どんな動画かというと、何かアニメみたいなの。
みたいとは曖昧なと思うでしょ。
だって、人によっては漫画だと言う人もいるのよ。
私の中では、アニメは動画で、漫画は静止画だと思っているけど。
でね、私はアニメ好きだから、この動画アニメで観れるのかなって思ってググってみたんだ。
そしたら、本当に観れたんだ。アニメで。
でもね、ちょっと変なんだよ。
さっきから映ってる映像の主人公と思われるオッサンかなー?ずーっと後ろ姿でしか映ってなくて何をしているかわからないと思ったが、画面タッチで360度回せるタイプだった。
もう1つ変だと思うことがあるの。
これ、ライブ中継だね。
だって、画面の隅にライブって文字が記載されてるもん。
それにサウンドも聞こえないの。
後、このチャンネルをね登録すると良いことある何て都市伝説みたいのがあるんだよ。
良いことって何だろうね、画面のオッサンの元に転移出来て一緒に暮らせるとか。
決して良いことじゃないよね、笑っちゃうね。
このチャンネル、コメントどんなのがあるだろうかねと思い、コメント欄は書き込み不可能になっていた。
「お父さん遅いなー。」
お父さんが帰ってくるまで暇なの。
食事の準備は終わってるのだけど、先食べてても文句は言われないけど、一緒に食べたいじゃん。
お母さんは・・・まーあれだね。
そんな事より、登録どうしよう。
良いことって噂もあるけど、何か怖い。
って、何もないよね。
登録しちゃおっと。ポチっとな。
よし、登録完了ってやっぱ何も起きない。
フーっと溜め息つき、下の方を見ると先程までコメント不可だった欄に何か書いてあるのが見えた。
・登録おめでとうございます。特典が3つ付きますので確認をお願いします。
・特典1 クエストアイテム一覧から、アイテムが購入できます。
・特典2 クエスト魔石から魔石が購入できます。
・特典3 奴隷が購入できます。
「DODODODODO奴隷」
うん、流石に要らない。
魔石?魔石ってあの?
新手の詐欺かなテレホンショッピングでも扱わないよ。
でも、アイテムかーちょっと興味あるかも。
ちょっと覗いちゃおうかな。
何々、薬草が・・・安いよね。ポーションとなると・・・か。
『おいっ何があった!』
「えっ、あー動画か」
『ゴブ・・・ゴブリンにやられて・・・』
『傷はポーションで直接掛けたから問題無い』
『ありがとうございます。あっあっ妻が・・・』
『おいっ』
『妻がゴブリンに・・・連れていかれた』
『何だって!どっちかわかるか?』
『いえ・・・気絶してて、でも確かにゴブリンに襲われて』
『そうか、取り合えず探してみよう。1人で大丈夫か?』
『何とか・・・つっ妻を取り戻して・・・』
『わかった。やれるとこまでしてみる。傷は塞がっても血は戻らないんだ。直ぐには動けんだろう。大人しく待ってろ。しかし、どっちいった』
動画の主人公と思われるオッサンは、何か金属の板の様なものを取り出してフラフラし始めた。
そして、ピタッと止まると『こっちだ』と言って一直線に走り出した。
それにしても遅いなと思う。
お父さんは、ブラック会社という会社に、勤めてるらしいのだが、よくそこの社長は自分の会社を黒いと名付けたなと私は思う。
あっゴブリンの群れを見つけたみたい。
妻と思われる女性も発見だ、良かった。
長い刃物取り出して、走ってったね・・・ガラッ。
あっお父さんが帰って着たかな。
「お父さん、お・か・え・キャー」そこには、血塗れの父と、その父を抱えて片手にナイフを持った男が立っていた。
男は言う。
朝までには父が死ぬだろうからそれまで外部との連絡をとらず、おとなしくしていれば引き上げると言うものだった。
その様なことを言って父を放り投げると、家から出ていった。
現状についていけない私は、その場でしゃがみこんだ。
が、次の瞬間何とかしなきゃと思う。
救急車も警察も呼べない状態にある。
二階の窓から外を見ると、数人の男達がこちらを伺っていた。
さっきの動画は、と私は思った。
ポケットにしまってあったスマホを取り出すと、先ほどの動画が流れていた。
スライドさせコメント欄を見る。
ポーションの値段は1つ1000円とある。
貯金箱を取り出すと、小銭がジャラジャラ出てきた。
震える手を押さえながら数えると3125円だったので、3つ買えると思う。
ポーションの欄に3という数字を入れ実行押すと、コメント書きますかという欄が出た。
こっちは急いでるの、と思いつつ〈お父さんが死んじゃう。早くお願い〉と書いて発注する。
ゴブリンをバッタバッタ倒している主人公と思われるオッサンの目の前にクエストという画面が開いた。
『こんな時に、神様は空気読まねーなー。父が死ぬ?設定細か。ポーション3つダー。はい、発送』
そう言った主人公と思われるオッサンは乱暴に画面に現れたら発送ボタンを押す。
私は、周りをキョロキョロしたがポーションらしき物が見当たらない。
と思ったら、目の前に白く淡く光る枠が現れて、お金を入れてくださいと書かれていた。
私は、小銭を全部入れた。
125円損しても、ポーションが手に入ればいいのである。
小銭は枠の中に吸収され、そこからポーション3つが届き、125円が戻ってきた。
『小銭がーあーあー散らかっちゃたじゃ・・・・・・・・・』
ポーションを手にした私は、すぐに父の元にいき、シャツをめくり傷口を確認すると、ポーションを傷口に浸した。
傷口はみるみる埋まっていった。
もう1本父にポーションをぶっかけようとしたところ、父に凪ぎ払われてしまった。
勢い余って、壁にぶつけられた衝撃で、気を失ってしまった。
次に気が付いたときは、父が運転する車の中であった。
父いわく、緑の物体に襲われたのかと思い、払ったつもりが、私を投げ飛ばしていたらしい。
傷もなおっていたことに驚いたが、ものすごくだるかったそうだ。
血が足りないと言った症状なのかもしれない。
しばらく我慢して死んだふりをしていたら、夜中に男達が様子を見て帰っていったようだ。
なので、必要なものだけ取り早朝車で逃げてきたとのこと。
ナイフを持った男達の事については一切話してくれなかった。
それが、1年前の事で今は母親と暮らしている。
父は、秘境ではないかと言うようなド田舎で自給自足の独り暮らしをしている。
そして、私の元には1本のポーションが残った。
あの動画は、どういうわけか登録を破棄されて、静止画である漫画でしか見ることができないし、コメントも不可になっている。
お礼の言葉を送りたいのだが。
棚の上に置いてあるポーションをみながら、今日1日無事過ごせたことに感謝を込め眠りにつく私であった。