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作戦会議



 目的の小屋を見つけるのに時間は掛からなかった、先日の襲撃場所からさして遠くもない森の中にあり、おそらくは盗賊達が何度の通ったであろう場所が獣道のようになっていれば、そこを辿って行けば良かった。

 狩りなのか林業か分からないが、かつてはその休憩所か何かに使われていたのであろう小屋は確かに十人程度が拠点にするに充分な大きさがあった。

 「……んじゃ、突っ込んじゃう?」

 木の幹に隠れて様子を伺いながらエターナが言うのに「……いやいや、それは不用意だよ」と同様に隠れているアストが止める。 一度倒した相手とはいえ、それは相手が女の子という油断もあったのだろうと思える、だから魔法を使い侮れない相手と分かっていれば最初から全力を出してくるだろうし不覚を取ってしまう可能性もある。

 「それに昨日の連中以外にも仲間がまだいるかも知れませんから……」

 アインも自分の意見を言いつつアストに同意する。

 「……って言ってもさ、結局はみんなぶっとばすんでしょう?」

 どうしたってやる事は一緒なのだから堂々と突っ込んで行けばいいと思う、慎重になったところで無駄に時間を消費するだけとしか思えない。

 「そうなんだけど……でも、結果的に全員と戦うにしても僕達が不利にならずに出来るだけ有利に戦える方がいいと思わない?」

 「でもさ、そんなの相手の戦力とか分からないとどーしよーもないでしょ?」

 じれったそうなエターナに「だから最初にそういうのを探るんですよ」とアインが少し厳しい口調で言えば、アストも「そうい事だよ」と頷く。

 「むぅ~~~? だったらどーすんのよ?」

 エターナも力押しだけがすべてと考えてなどいないが、今の状況では力押し以外の手が思い付かないのだ。

 「まあ、ここは私の出番でしょう。 あなた達はここで待ってて下さい」

 そう言ったアインが歩き出す、向かう先はもちろん小屋だ。 

 猫の小柄な身体を木の幹や背の高い植物で隠しつつ気配を殺してゆっくりと近づいていく。 そのため多少の時間は掛かったものの小屋に近づいたアインはまず入り口の扉に近づいて聞き耳を立ててみる。

 「…………ふむ?」

 それから元来た方へ歩き出し、ゆっくりとエターナとアストのところへ戻って行く。 窓から中を覗いて人数を確認もしたいところだったが猫の身体では登れる異様な手頃な木が近くになくては無理だった。

 「……何人かの話声がしました、いますよ?」

 昨日の連中かまでは分からないが状況を考えれば他にはありえないだろう、声の感じからすると他愛のない暇つぶしの会話という風であり、今襲撃すれば不意を突いて一気に倒せるかも知れない。

 見張りもないという事は誰かが襲撃してくる可能性など考えていないという事であるから、たいして賢くもないゴロツキの集団だろうと予想も出来る。

 「……とはいえ、やはり人数が分からない以上は狭い空間での乱戦は避けたいとこだね?」

 アインの説明に、アストが少し考えてから意見を述べれば、「……ええ、慎重にいくならそうです」と肯定された。

 「ちょっと、そんなんばっかじゃ何時まで経っても何も出来ないじゃない……」

 流石に小声ではあるが、エターナは苛立ち気に文句を言う。

 「そういう事です。 では今から作戦を説明しますね?」

 「ほへ?」

 実のところアインはエターナであれば何とか出来るくらいの相手であるとは見積もっていたが、少しは慎重に考える事も覚えた方がいいとあえてアストに合わせたのだ。

 先の偵察も相手の数が分かればそれに越した事もないが、単に盗賊がいるかいないかの確認の意味合いが強かったのである。

 



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