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腹が減ってはなんとやら

 おとりちゃんに案内されたお風呂場は、檜のいい香りのする木製の浴槽だった。居間の囲炉裏とか、昔ながらの質素な台所とかを見ていたので想像では勝手にお風呂も五右衛門風呂みたいなんだろうなぁと思ったけどお風呂場は立派だった。

 洗い場で身体を洗い、檜の浴槽に浸かる。ふぃ〜。今日はさんざん自転車も漕いだし、川にも落ちたし、オマケになんだか知らないとこ(多分異世界)に来ちゃったし、神様だとかおとりちゃんだとか盛り沢山過ぎてもうお腹いっぱいなんですけど。

 とはいえ、私がなんでここに来たのかとか戻る方法とかタケミ様・・・とかの事も、そもそもここは一体何処なのかとか聞かなくちゃいけないことも盛り沢山だ。

 軽くめまいがする。これから私はどうなってしまうのだろうか・・・。


「いぶき、着替え置いとくわね」


 脱衣所からおとりちゃんの声が聞こえた。


「はーい」


 私はおとりちゃんに返事をしてお風呂から上がった。


 おとりちゃんの着物を貸してもらったが上手く着れない。


「おとりちゃん、ごめんね!着物上手く着れないんだけど」

「あっ、今行くわ」


 パタパタと足音を立てておとりちゃんが脱衣所にやってきた。

 私の後ろに回ってシュッシュッと手際よく着物を着せてくれた。


「ふふ、後でゆっくり着物の着付けを教えてあげる。妹が居たらこんな感じかしらね」


 とおとりちゃんがはにかみながら言った。くぅ!おとりちゃんはいちいち可愛い。私もおとりちゃんみたいな姉が欲しかったな。


「さ、クナトも戻ってきたし夕食にしましょう」


 おとりちゃんの後に続いて囲炉裏の部屋に向かった。

 囲炉裏の部屋ではクナト様が既に席についていた。


「いぶきもその色似合うな」


 クナト様が私を見てそう言った。「も」って言ったニュアンスではおとりちゃんの方がもっと似合ってるけどとか言いたそうだな。

 親バカならぬ嫁バカめ。


 クナト様を挟む様にしておとりちゃんと私が向かい合うように座った。

 ご飯とお魚と大根の煮物とお味噌汁。THE和食。


「「いただきます」」


 そういえば今日は昼ご飯も食べずに出かけたんだったなぁ。 お腹が空いてるわけだよね。


 串に刺さった魚を直接ガブリ。


「おいし〜い!!!」


 何これ、お魚を焼いただけなのに凄く身がふわふわしててしっとりしていて旨味がギュッて詰まってる。

 ご飯も美味しい、煮物も美味しい。私は夢中で食事を堪能した。



 夕食を終えて食後のお茶を飲みながら私はクナト様の説明を聞いていた。


「ここは裏神栖村といって、表の神栖村・・・あぁ今は息栖市だっけ?いぶきの住んでるとこの丁度反対側にあるんだ」

「・・・・・・」

「おとりもいぶきも通ってきた様に表と裏は神之池で繋がってるんだけど普段は行き来は出来ないようになってるんだ。池に落ちた人が皆こっちに来ちゃったら大変だからね」


 クナト様がわざとらしいジェスチャーを交えながら話を続けた。


「神の力が働いていないと通れない道って言えばわかるかな?今回私は力を使っていないので考えられる神は私ではない神って事は確かなんだけど、呼び出されたのがいぶきだって言うのを聞いたら考えられるのはタケミしか居ないんだ」

「私も最初はクナトが呼んだのかと思ったわ。また性懲りもなく向こうから女の子呼んだんだって」


 おとりちゃんが神様を睨みつけている。あっ、最初に会った時のおとりちゃんのほっとした様な表情はクナト様(自分の夫)が自分以外の女の子(嫁候補)を呼んだと思ったのが違うとわかって安心したからだったんだね。


「ちょっ!おとり、誤解だよ!私はおとり一筋なんだから」

「っ・・・ばか///」

「ぅおっほん。続きをお願いします」

「「・・・はい」」


 また寸劇を見せられたら溜まったもんじゃないのでわざとらしい咳払いをして先を促した。

 クナト様もおとりちゃんもバツが悪そうにしているが、キニシナイ!!


「タケミ様は何処に居るんですか?」

「それが・・・ね。さっきタケミの使者が来たんだけどタケミは3日前からとぐろを巻いたまま動かなくなってしまったらしいんだ」

「とぐろ!?」

「うん。私が白蛇でタケミは黒蛇」

「えっ?えっ?それって一大事じゃないんです?」


 神様が動かなくなってしまったって大変じゃないか。


「悠長に夕飯食べてる場合じゃなかったのでは・・・?」

「うーん、そうなんだけどね。・・・腹が減ってはなんとやら?」


 テヘペロ☆みたいな顔してクナト様がそう言ったのを見て私が心底不安にかられたのは言うまでもない。

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