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そこに愛はあるのかい?

 外で色々話している間に日が落ちてすっかり暗くなってしまった。

 おとりちゃんの家は村の奥にある森の中の神社だった。こじんまりとした社の奥に神様とおとりちゃんの住居がある。


 家に着くとすぐにおとりちゃんは夕飯の支度を始めた。あ、神様はお風呂の用意をしにいった。・・・神様って家事もやったりと結構庶民的なんですね。(遠い目)

 私は火がくべてある囲炉裏の脇に座り、水がお湯になるまでを眺めている。

 自慢じゃないけどお母さんの料理の手伝いをしたことが無いので、おとりちゃんの手伝いは出来ない。


「ここでおとりちゃんはクナト様と暮らしているんだ?」

「そうよ」

「おとりちゃんは、その、無理やりここに連れてこられたんだよね?」

「・・・そうね。でも、私が神様と一緒になる事で村が救われたのなら本望だわ」


 例え神様の勘違いでもね、とおとりちゃんは笑った。おとりちゃんは強いな。

 いや、強いのとは違うか。多少諦めもあるだろう。だって戻れないのだもの。でも、私は出来れば戻りたい。戻れる術があるのなら戻りたい。

 お父さん、お母さん、(たける)(弟)、タロウ(犬)。戻れないのかもしれないと思ったら今朝まで会っていたのに急に寂しくなってしまった。


「・・・私もね、最初はお父様とお母様のとこに戻りたいってそればかり思ってたの。だって勘違いで連れて来られたんだし」


大根をトン、トンと手際よく切って鍋に入れながらおとりちゃんが話を続ける。


「でもね、勘違いながらもクナトは私を大切にしてくれた。ちゃんと神栖村の漁も安定させてくれた。それに私もクナトが好・・・」

「当たり前だよ!おとりをくれるっていうのは勘違いだったけど、私はおとりを貰えるって聞いたときは喜びで打ち震えたんだから!」

「!?」


 お風呂の支度を終えたクナト様が現れた!仲間に入れてほしそうにこちらを見ている!・・・って違うか。

 おとりちゃんの言葉に食い気味にクナト様が割り込んだ。


「私はおとりを一目見た時から愛してしまったんだからねっ」

「ちょっと!料理中に危ない!!」


 私がクナト様を某RPGのモンスター風に妄想してる隙にクナト様が料理中のおとりちゃんを背後から抱きしめた。

 おとりちゃんの顔が真っ赤っか。・・・でも嫌じゃなさそう。そっか。そこに、愛があるんだね。愛、あったよ、あんちゃん・・・とお母さんが借りてきた昔のドラマのDVDを思い出してしまったよ。

 そんで、このラブラブ寸劇を見せ付けられて私もさっきまでの寂しい気持ちもなんだか薄れてしまったよ。

 生温かい目でイチャイチャしてる二人を見ているとなんだかお邪魔者みたいな感じになってきたのでどうしようかと思っていたら入り口の戸がトントンと叩かれた。


「あぁ、私が出るからおとりは夕飯の支度を続けてて」


 クナト様が名残惜しそうにおとりちゃんの頭を撫でてから入り口に向かった。


「あの、おとりちゃん?この村って誰か住んでいるの?神社(ここ)に来るまで一人も会わなかったんだけど」


 そう、村は物音一つしない程静かで、家の中は真っ暗だったのだ。この家に来た来訪人で初めて私達以外の存在を知ったのである。


「あぁ、皆お祭りの準備で山に行っているのよ」

「えっ、お祭りがあるの!?」

「ええ。一応クナトが村の代表する神様だから、神様(クナト)を祀るって習わしになっているの」


 お祭りと聞いて少しテンションが上がった私。

お祭り大好き♪地元のお祭りには毎年行ってたなぁ。ここのお祭りも私の世界のお祭りと変わらないといいな。


 おとりちゃんが夕飯の支度を終えて、魚を棒に刺した物を囲炉裏の火の脇に刺している。こないだテレビでやってた!炉端焼きってやつだね。


「クナト遅いわね。先に食べちゃいましょうか?」 

「ううん。待ってるよ」

「あ、じゃあ先にお風呂に入っちゃいなさいよ。池に落ちたんでしょ?風引いちゃうわ」

「えっ」

「着替えは私の貸してあげるから、ねっ」

「う、うん」


 おとりちゃんの圧が凄い。でも、確かに私川に落ちてドロドロに汚れてるからなぁ。

 私は素直にお風呂に入らせてもらうことにした。

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