おとりと白蛇
白く・・・大きな蛇。それは先程資料館で見た昔話に出てきた白蛇を彷彿とさせた。
「あ・・・ぁ・・・」
私は恐怖で悲鳴にならない声をあげた。
「クナト、怖がってる」
少女が白蛇に向かって言った。すると白蛇は
「・・・すまぬ」
と言った瞬間白蛇から人の姿になった。
元白蛇のその人は、銀色の長い髪の毛を1つに束ねたイケメンになった。時代劇の殿様の様な和服を着ている。
「???」
私が驚きのあまりあんぐりと口を開けたままでいると、少女が私に向かってこう言った。
「大丈夫よ。怖くないの。あなたを襲ったりなんてしないから安心して・・・むしろ・・・」
少女はむしろとまで言った後、何か考え込む様に黙ってしまった。え、いやいや気になるじゃん!
つか、安心してって言われてもこの状況が普段からぼんやりとしている私のおつむで理解出来るわけでもなく。
ただ呆然と少女と青年(元白蛇)を交互に見てるだけのアホの子になっていた。
そんな私をみかねてか、私を安心させるように少女が自己紹介をしてくれた。
「私はおとり。こっちの白蛇はクナト。一応私の夫よ」
「一応・・・」
一応と言われてショックを受けた様にガックリと項垂れる青年。ヘタレ臭がする・・・。
ん?てか、おとりって言った?いや、なんとなく、そこはかとなく?そんな気はしていたけどもさ。やっぱりおとりちゃん。
じゃー、こっちのヘタレくさい青年は・・・
「神様・・・」
「!?クナトを知っているの?」
「いや、知っているというか真偽不明の昔話として語られてるんだけど・・・」
「えっ?あのクナトの失態が語り継がれているの??」
「失態・・・うん、失態だよね。勘違いて」
「・・・・・・」
私が白蛇を神様だと言うと続けておとりちゃんが驚いた様に質問してきたので、私は資料館で見たままの事を話した。
私とおとりちゃんが神様の勘違いを【失態】と繰り返すので無言になる神様。やっぱりヘタレ。
「あの、さっき神様に呼ばれたら戻れないって言ってたけど、私はクナト様に呼ばれたんですか?」
私はさっきのおとりちゃんの言葉が引っかかっていたのでクナト様に質問してみた。
「いや、私ではない。私はおとりを呼んだが、お主は呼んでいない」
「そうですか・・・」
呼んだっちゅーか、引きずり込んだんじゃないかな。しかも無理やり。
「こちらに来るのは呼ばれた人だけってクナトが言っていたから・・・クナトじゃないなら誰なのかしら?あっ、あなたの名前まだ聞いてなかったわね」
クナト様が私を呼んでいないという言葉を聞いてなぜかほっとした様な表情を見せたおとりちゃんが、私の手を両手で摑んでニコッと微笑んだ。
か、かわいい。なんて美少女なんだろう。同じ女性とは・・・神様って不公平だ。・・・いや、神様は目の前のクナト様か・・・。
「あ、私は息吹です。平泉息吹といいます」
「まぁ、素敵ななまe」
「いぶき!?君いぶきなの!?」
おとりちゃんの言葉を遮るヘタ・・・クナト様。おとりちゃんがクナト様を睨んでる。
しかし、なんでそんなに驚いているのか。
「・・・じゃぁ君を呼んだのはタケミだと思うけど・・・でもアイツは今・・・」
名にやらブツブツと考え込んでいる。最後の方は聞き取れなかった。
誰だよ?そんな知り合い居ないし、ヘタレの神様が私を知ってるっぽいのもひっかかるわー。つうか、この神様口調変わってない?最初は「すまぬ」とか「お主」とか言ってなかったっけ?
「クナト。わかるように説明して」
おとりちゃんが一瞬で水が氷になるくらい冷たい目でクナト様を見てる。
「あわわ、えとね、タケミも神様なんだけどさ。タケミといぶきは恋人だったんだよ」
「は?」
「私がおとりを呼ぶ前の事なんだけどね」
えー・・・?いやいや、そりゃ全くの人違いですよ?私神様に知り合いなんていませんもん。ましてや彼氏なんて居ないし産まれてこの方モテた試しもないしなぁ。
私があさっての方を見出したのでとりあえず長くなりそうだし、立ち話もなんだからとおとりちゃんが家に招いてくれました。