穢れの原因
クナト様をぶん殴ったタケミ様。吹っ飛んだ場所でほっぺたを抑えながら涙目になっているクナト様。呆気にとられているおとりちゃんと私。
「いったァァァァァァァ!!タケミいきなり殴るなんて酷いよ〜」
おとりちゃんにぶたれたとこと同じ所だったので、痛さが倍増しているんじゃないかな?・・・痛そう。
「・・・今までの事はこの1発で勘弁してやる」
殴った方の手をさすりながら、タケミ様が言った。
「この俺様が、穢れなんぞに侵されちまったのは元はといえばこいつのせいでいぶきを失ったからだからな」
「タケミ、本当にごめん・・・いぶきも・・・」
殴られた訳を知り、クナト様が心底申し訳なさそうに両手をついて土下座した。
「く、クナト様!謝罪は要らないって言ったじゃないですか!記憶が戻っても私、クナト様を怒っていないです!もう!タケミ様もやりすぎですよ!」
「いいのよ、いぶき!事の発端はクナトなんだから」
「でも、暴力はいやです・・・。悲しいことがあったからこそ、今幸せなんじゃないですか?幸せなら、笑いましょう?ね、タケミ様」
「うっ・・・俺様の言った言葉が帰ってきたぜ・・・だってよぅ、コイツときたら俺様がいぶきと会えないってのに嫁さん貰って毎日いつでもどこでもちちくり合ってんだぜ?」
「ちっちちくっ・・・!?」
タケミ様の言葉におとりちゃんが真っ赤になった。
「俺様だっていぶきがここに居たらあんな事やこんな事とか・・・って思ってたらいつの間にかモヤモヤと、その・・・穢れがよぉ・・・」
「えっ!?じゃぁ、タケミ様の穢れの原因て、妬みと欲求不満・・・?」
「・・・・・・おぅ(小声)」
「ちょっ!神様が妬みとか欲求不満とかダメダメじゃないですか。そもそも私をこちらに呼び戻したから穢れにあてられてしまったのではなかったのですか?」
「違う。こっちに戻ってきてから俺様は日々ほんの少ーしずつだが力を回復していた。で、穢れに侵されちまって俺様もよくよくかと。どうせいぶきに逢えねーんならせめて最後にいぶきをこっちに戻らせてやりてぇと溜まった力全て使った」
「タケミ様・・・。なんとかなったから良かったですけど、神様が投げやりになったらダメですよ~」
私が呆れながら言うと
「神だって万能じゃねぇ」
と、親指をビッと立てながらタケミ様は決めポーズをした。・・・無駄に格好いいのがなんとも。惚れた弱みってやつですかね。
「とりあえず、もうこれ以上は恨みっこ無しです。これからは、また皆で仲良く暮らしていきましょう?」
「おぅ。まずはいぶきと祝言あげなくちゃだな!!」
「あ、じゃぁ明日の祭りで公開祝言やろうよ〜!皆にお披露目も兼ねて」
「えっ!?」
「いいわね!私とおミヨさんでいぶきを綺麗にしてあげる!」
急展開すぎやしませんかね?しかも祭りに乗じるとか・・・。本当にマリッジブルーになる暇すら与えてくれないんですね。私はタケミ様の有言実行にただただ驚くしかなかった。
わいわい盛り上がってる三人を眺めつつ、じゃぁ、今日が結婚前夜ってやつかぁ。なんてボケッと考えていた。
両親(仮)への結婚報告を終えて、屋敷に戻ってきたタケミ様と私。相変わらずここの狢達は毎日私に群がってきてはタケミ様にちぎっては投げ、ちぎっては投げられている。なんでこんなに好かれているんだろう。
「あ?狢達は俺様の毛だからじゃないか?」
「・・・・・・え?」
「だから、俺様の抜け毛。抜け毛に念を込めてフッと飛ばせば分身が作れるんだよ。一時期練習がてらにやってみたんだが、俺様はどうやら不器用だったみてぇで、ムキになってやり直してたらいつの間にかわらわらと・・・」
えー・・・と。西遊記の孫悟空みたいなやつ?自分の分身を作ろうとして狢量産とかって・・・タケミ様に分身の才能は無いんですね。っていうかそんなに練習して、タケミ様が禿げなくて良かったです。
「え、でも狢達はどうして分身なのに自我を持っていたり消えたりしないんですか?」
「ん?なんでだろうな!」
「えっ!?」
すんごいアバウトなんですけど。あ、もしかしたらタケミ様の遣いにしてもらったからなんじゃないかな?遣いはずっとタケミ様のお傍に居なくちゃだもん。・・・殆どの狢はもふもふで、常に人型の子はイナビとヒカリだけみたいだけど。私はタケミ様に投げられてその辺に転がっている狢を一匹抱きあげて眺めてみた。
もふもふはとてもさわり心地が良く、顔もまん丸お目目で可愛い。そしてあったかい。思わずぎゅっと抱きしめると、後ろの方からイナビとヒカリがドタバタと走ってやってきた。
「あぁっ!!ずるい!私、私も愛でてくださいませ!」
「ヒカリはちょっと遠慮して!ボクが先にいぶき様に抱擁してもらうんだからっ!」
「姉様の言う事は絶対聞くって約束でしてよ!」
「うぅっ!」
ここで初めてこの二人の上下関係の理由が判明した。そうか、狢達は皆兄弟なのか・・・。
「あのさ、この中で一番年上なのはどの子なのかな?」
私は興味が隠せずに居た。
「年齢だけでしたら、そこに転がってるお腹が白い”ましろ”ですわ。最初に作られたので、言葉も話せませんのよ」
「へぇ・・・」
「因みに私が一番最後に作られたのですわよ」
「へぇ・・・。えっ?さっき姉って」
「あぁ。一番最後って事は一番出来の良い狢って事ですので、一番年齢が若くても私がお姉さんで、立場が誰よりも上なんですのよ」
へぇー・・・。狢達の上下関係の仕組みは良くわからないが、当の本人達が納得しているのであれば問題は無いだろう。
その夜は、タケミ様と狢達に囲まれながら暖かく穏やかな結婚前夜となった。




