笑う門にはタケミ様
私はあの後再び寝てしまった様で、起きたら既に朝になっていた。・・・おとりちゃんと一緒の時もそうだったけどさ、泣いたまま眠るとかさ、本当に私は小さなこどもなんじゃないだろうか?
でも、それって一緒に付き添ってくれる人が安心出来る人だからだよね。
私は横になったまま、向こうの家族に思いを馳せた。
長い間、色々な遠回りをして、最後の最後に向こうの家族にも娘(姉)の失踪という、許され難い悲しい思いをさせてしまった。
家族達は二度と戻らない息吹を思い、一生心から安堵する事が出来ないかもしれない。
「まーた、考え事してんのかよ。ココ、シワが寄ってるぞ」
自分の腕を枕にしてこちらを向いて横になっているタケミ様が私の眉間をトン、とつついた。
「あ、タケミ様。おはようございます」
うー、もしかしてずっと私の事見てたのかな?
タケミ様は私の眉間をつついた手で、今度はほっぺをつねった。
「い、いちゃいです。タケミひゃまっ」
「笑え」
「え?」
「いーから、笑え!!」
今度は両手で私をくすぐってきた。
「た、タケミ様っ、あ、アハハハハハッ、や、やめてぇ・・・」
「笑え、笑えー!!」
「も、もぅ、アハハっ、いゃぁぁっくすぐ・・・たぃ」
暫くタケミ様の攻撃の手は止まず、私がぐったりしてから攻撃が止んだ。
「ハァッハァッ・・・ひ、ひどいです」
「いぶき。お前が気にしている事は全部俺様のせいだ」
「え・・・?」
「お前一人に責任を追わせてしまったのは俺様の力不足のせいだし、お前があっちに残してきた家族の事で心を痛めてるのもお前をこっちに呼んだ俺様のせいだ」
「そんな!」
「あぁ、そうだ。そもそもこうなったのはあのバカのせいじゃねぇか!アイツ1発殴ってやらねぇと気が済まねぇな・・・」
「えっ!いやいやいや、私が・・・私のせいで・・・っ」
「っていうか、お前が一体何をしたってんだよ?荒れた終わりかけの村を救う為に全力を尽して人間にまでなった。力を使い果たした俺様を助ける為にここに戻してくれた。なっ?なーんにも悪い事してねぇじゃねぇかよ」
「っ・・・・・・」
「全て自分じゃない誰かの為にやった事じゃないのかよ?」
「そ・・・れは・・・」
「それを、「私のせいで」とか言って、やらなきゃ良かったみたいに言ってんじゃねぇよ。お前は感謝されこそすれ、誰にも謝る必要なんかねーんだからよ」
「タケミ様・・・」
「お前の家族だって心配してるとこは、お前が辛い目や、悲しい目ににあっていないか、元気に暮らしているかどうかだろ?」
「・・・・・・」
「だから、笑え。笑って笑って、「私は幸せです」って家族に胸を張って言えるように笑えっ・・・って、おい!泣くな!!」
心に引っかかっていたのは、突然居なくなっちゃって家族に物凄く心配をさせているのに、私だけタケミ様の側でこんなに幸せでいいのかなって。私もう二度とタケミ様と離れたくない。でも、それは私の自分勝手な願いだと、そう思っていた。
「今更どうにも出来ねぇ事で悩んでる暇があるんだったら、俺様と夫婦になってガキを作って幸せに暮らそうぜ?」
「!!!・・・タケミ様、それって・・・プロ・・・?」
思わずガバッと起きて、タケミ様を見る。すると、タケミ様もムクリと起きて、私に向かって真面目な顔で
「いぶき、俺様の嫁になれ」
「でも・・・いいのでしょうか?私、幸せになっても」
「でも、とか御託は要らねぇ。俺様の嫁になるのか、ならねぇのか。返事はその2択だ」
なんて強引な。
「いぶき、返事は?」
「も、もう1回!ちゃんと丁寧に言ってください!!一生に一度なんですから!」
「なっ・・・グググ・・・」
意地悪されてばかりじゃ悔しいから、たまには私だってタケミ様に意地悪言っちゃうもんね。
タケミ様がポリポリと頭を掻きながらあぐらから正座に姿勢を正したので、私も釣られて正座をして向き合う。そして、タケミ様が私の前で両手の手の平を上に向けたので、私はその上に自分の手を乗せてお互いに握りあった。
「あー・・・、いぶき・・・さん。俺様、じゃねぇっ・・・ボ?ボクのお嫁さんになってください」
「・・・是非、是非お願いしますっ。プッあはははっ」
「〜〜〜!!柄じゃねぇ!おい、いぶきっ!笑うんじゃねぇ!」
「タケミ様、私に笑えって言ったじゃないですか!アハハッ、タケミ様顔真っ赤っか!耳まで真っ赤っか!プーックスクスクスッ」
「ぐっ!いぶき、言うじゃねぇか!このっ!」
タケミ様がガバッと私を押し倒す。そして・・・
「俺様がいつだって笑わせてやる。悩んだりする隙もないくらいお前を幸せにしてやるから」
そう言って、タケミ様は私の唇にそっと唇を重ねた。
・・・うん。笑う門にはタケミ様来たる、だね。タケミ様が来るなら、私は笑っていよう。




