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いぶき覚悟、決めました

 着物で前を隠し、タケミ様と向かい合う。


「いぶき・・・」

「タケミ様、は、恥ずかしいので先に湯船に行ってもらえますか?」

「えっ・・・」

「こ、ここまで来たら私、覚悟、キメます!!」

「わ、わかった。先に行ってるからな」


 タケミ様を見送った後、私は洗い場で身体を洗い始めた。

 わ、わかってる。言わなくちゃいけない事はわかってる。


 ゴシゴシゴシ・・・


 で、でも、何もこんなとこで言わなくてもいいんじゃない?


 ゴシゴシゴシ・・・


 こ、これがさ。男同士なら裸と裸の付き合いって感じだけどさっ。


 ゴシゴシゴシゴシゴシ・・・

 

 男女の場合は違うよね?でも、早く言わなきゃいけない事だし・・・


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ・・・

 ゴシゴシゴシゴシゴシ・・・


 ・・・あ、洗い終わってしまった・・・


 手ぬぐいに包まって、タケミ様のいる風呂へ向かう。


「おっ・・・お待たせしました」

「お、おう・・・」


 ザブザブと風呂の中をタケミ様の元へと移動する。わぁぁ、緊張する〜。

 タケミ様の隣に座ろうとしたら、、タケミ様が私の腕をグイッと引っ張って、私を自分の前に座らせた。 

 こ、こ、こ、こ、これは、あの恋愛漫画に出てくるバックハグってやつですか!?

 ま、まぁ、この格好ならあんまり裸を見られなくていいかもしれないね。

 いや!でも!相手の表情が見えないし、うなじにタケミ様の吐息がかかって、これはこれで超・恥ずかしいよ?

 いやいや、そもそも後ろを向いてちゃ駄目じゃない。ちゃんとタケミ様の顔を見て言わなくちゃダメだもん。・・・ていうか、まず、


 

 落 ち 着 け 私 ! ! ! ! ! 



 ザバッ


 私はクルリとタケミ様に向かい合って座り、ちゃんとタケミ様の顔を見て。


「タケミ様っ!私が取った行動で、そのせいで沢山心配かけて、あとっ、いっぱいいっぱい傷つけてしまってごめんなさい!!!」


 私は湯船に沈むほど頭を下げた。ブクブクブク・・・


「なっ、いぶき!死ぬぞ!?」


 タケミ様によって引き上げられる。ぶはぁっ。


「・・・長い間、待たせてごめんなさ・・・っ」


 最後まで言い終わらない内にタケミ様に唇を塞がれた。


「ん・・・っ」


 激しく、深い口づけ。息継ぎのタイミングが分からなくて酸欠になりそう。頭がボーッとして体中がピリピリと痺れてるみたい。・・・タケミ様の力かな・・・?

 タケミ様とのキスが嫌じゃないのは前回で実証済。ってか、お風呂でしかイチャイチャしてないのはどうなんだろう?


 私がタケミ様のキスに蕩けていると、ハラリ、とタケミ様が私が身体に巻いていた手ぬぐいを取ってしまった。


「や・・・ぅんっ・・・」


 言葉で抵抗しようとも、尚も唇を塞がれ続け、阻まれる。

 そして、タケミ様の唇が、舌が徐々に下の方へと這っていく。


 ゾクゾクゾクッ・・・と身体が反応してしまう。


 反射的に抵抗しようとタケミ様の身体を押し返そうとしたが、つるりと手が滑り、その勢いでタケミ様に抱きついた形になってしまった。ひぃぃ!!余計に密着する事態になってしまったYO!


「タケミ様、恥ずかしいですっ・・・あっ・・・」

「・・・今度は逃さねぇよ」


 タケミ様の獲物を射るような熱い眼差しに背中がゾクリとするのを感じた。

 向かい合ってタケミ様の膝に座る様な体勢で、タケミ様が私の腰をグッと下に引き降ろした。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」






 私は意識を失っていたらしく、目覚めた時には薄い浴衣を着せられ、肌触りのいい布団に寝かせられていた。

 ・・・・・・タケミ様の腕枕で。


 タケミ様は寝息を立てて眠っており、私は暫くタケミ様の寝顔を眺めていた。

 ふふ、まつげ長い。起きているときは、切れ長で琥珀色した鋭い瞳に目線が行きがちだが意外にもまつげは長い。

 逞しい腕に、ガッシリとした胸板。でも決してゴツくはない。

 タケミ様・・・。うっ、グスッ。あれ?なんだか泣けてきてしまった。


 愛し過ぎて、恋しくて。


 これからはずっと傍に居られるのだと分かっていても、涙が次から次へと溢れて止まらない。


 ひっ、っく・・・。ふぇ・・・。


「んぅ・・・?いぶき・・・?って、ぅおい!!なんで泣いてんだよ!?」

「なんでも・・・ないんです。グスッ」

「こんなにボロ泣きしててなんでもない訳ねぇだろ!?・・・あっ!・・・もしかして、まだ痛むのか?」

「ちっ違いますよ・・・!!ふぇ~~ん!」


 何気に恥ずかしい心配をされてしまった事が恥ずかしいのか、そもそも泣いてるのがバレた事が恥ずかしいのか、一周回って何が恥ずかしいのかがわからなくなって、なんか感情がぐちゃぐちゃで。タケミ様の胸元に顔を埋めて大泣きしてしまった。

 私が泣いている間、タケミ様がずっと私の髪を優しく撫でていてくれた。

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