いぶきVSクレナイ
ご飯を食べたあと、おとりちゃんが私に1番似合う着物を着せてくれ、とっておきの髪飾りを私に付けてくれた。おとりちゃんの髪飾りは瑠璃色の大きな蝶々のモチーフに、珊瑚の花をあしらった素敵なものだ。失くさないようにしなくちゃね。
おとりちゃんとクナト様に山の麓まで送ってもらい、ここからは私一人で乗り込む。
昨日の私とは、違う。集中して、タケミ様の居場所を探る。
ーーー居た!山の頂上からやや右斜め下。封術がかかっているけど、今の私なら問題無く突破出来そう。よし、行こう。
私は軽く地面を蹴るとそのままタケミ様の居場所まで飛び立った。
「わー、いぶき完全に覚醒したね」
「・・・愛の力ね、いぶき。頑張るのよ!」
「さて、私達はいぶきが、帰ってくるまで久々の二人だけの時間をまったり過ごそうか?」
「もう!クナトはいぶきの心配してないの!?」
「だって心配なんて要らないもん。必ずいぶきはタケミを連れて帰ってくるからね」
「・・・私だっていぶきを信じているわ」
「でしょ?だから、ね」
クナト様が差し出した手をおとりちゃんがおずおずと握って二人は手を繋いで帰ったとかなんとか。後にノロケモード全開のおとりちゃんから聞くことになるのである。
空を飛ぶ事数分で目的地近くまで来た。あれが烏天狗の里ね。里は裏神栖村程ではないが、それなりに広く里を覆う侵入者を防ぐ為の結界が張ってある。
凄い、結界の種類も分かる様になってる。
里の周りを飛んでいたカラスが、私に気付くと慌てて里に降りていった。里に報告しに行ったのだろう。
すぐさまカラスの大群が私の方へ飛んできた。空を覆うカラスの大群。数は数千羽は居そう。カラスが私に向かってクチバシを向けて襲い掛かってくる。
・・・ごめんね。まだ、私新生いぶきになったはかりだから、加減が分からないの。
私は竜巻を起こし、飛び掛かってくるカラスを巻き上げた。たちまち黒い竜巻となり、次々とカラスが地面へと落下していった。
熱い少年漫画が好きな私はこういう、多勢に無勢なシチュエーションが大きらいだ。
結界を打ち破り、里の広場に降り立った。
「クレナイは居るか!タケミ様を返してもらいに来た」
私は声を張り上げた。
「あーら、尻軽いぶき。今更ここへ何の用?」
一際立派な屋敷からクレナイが姿をあらわした。
「タケミ様を返して」
「嫌って言ったじゃない。こんなとこまで来てしつこい人ねぇ」
「もし、もし、タケミ様が貴女を選んだのなら仕方ないけど・・・そうじゃ無いなら諦めてほしいの」
「アナタにそんな事言う権利ある「あるわっ!!」」
私はクレナイの問いに食い気味に答えた。
「なっ・・・」
「今までの私は人間として何度も転生をしてきた。その間数千年。色々な人と出会い、恋をしてきたわ」
「ほら、ごらんなさいよ。とんだ尻軽女じゃない」
「でも、魂の片隅にはタケミ様ただ一人だけを愛していた氣吹戸主がちゃんと居たのよ」
「だからって他の人を選んだ事は無かった事にはならないじゃない」
「・・・人間としての一生はその時・その人だけのもの。タケミ様を知らないまま一生を終えて、次の人生へとリセットされるの。でも、氣吹戸主が選んだのはたった一人だけ。後にも先にもずっとずっと、今も!タケミ様ただ一人だけなの」
「か、勝手な人ね!そんな屁理屈通るわけないじゃないっ」
「通らなくてもいい!!私が、タケミ様を好きって事はこれからも変わらないんだからっ」
「おー、盛大な愛の告白ありがとな、いぶき」
私が思いの丈を叫び終わると、クレナイの後方からタケミ様がこちらに向かって歩いて来た、
「なっ、タケミ様!?み、見張りの者はっ!?」
「あんまし俺様をなめんじゃねぇぞ?クレナイィ?」
タケミ様・・・人型になってる。
「タケミ様だっていぶきの勝手な言い分を聞いてたのではないですか?」
「じゃー、おめぇがやってる事は勝手じゃねぇってのか?俺様が人型じゃねぇってのをいい事に好き勝手してくれやがって」
「・・・っ!」
「いぶきのおかげで充電完了、だぜ」
タケミ様がそう言って私に向かってニッと笑った。
そしてタケミ様の身体にバチバチと電気が走りだした。空は途端に薄曇り、雷雲が時々ピカッと光っている。
ゴロゴロという轟音が鳴り響いていおり、今にも落雷しそうである。
「俺様といぶきの邪魔をした罪は、重いぜ?」
タケミ様が、そう言って電気を帯びた右手を上に上げると直ぐさまバリバリバリズドーンと音が鳴り、稲妻が屋敷めがけて落ちた。




