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神之池

 ジリジリと照りつける日差しが先程までの寒気を通り越して火傷しそうなほど熱く感じる。

 信号で止まる度に自転車のカゴからすっかりぬるくなったスポーツドリンクを取り出して飲む。

熱中症になったら困るもんね。


 うー、ぬるいとあんまり美味しくない。帰ったらお母さんに保冷出来る水筒をねだろう。

 さー、神之池まであと少し!頑張って自転車漕ぐぞ〜!!

着いたら自販機で冷たいジュース買おう。それだけが今の私の心の支えだ。


 資料館から自転車を漕ぐこと20分。ようやく神之池に着いた。

もう汗という汗をかき過ぎて干からびそうというか体調おかしくなりそう。

 神之池は市民運動会や、スポーツ競技会が出来るグラウンドかあり、ちょっとした公園もある。

 隣接する建物は武道館と市民ホールなどがあり、様々な室内スポーツが出来るし、コンサートや観劇等が出来る市の中心のスポットだ。

 とりあえず、冷たいジュースで生き返った私は池の近くまで行ってみることにした。

 池一周は4km程。学校のマラソン大会や駅伝大会もここで行われる。


 真夏の一番暑い時間帯ともあれば、やっぱりここも人がまばらだ。

 時折スマホを操作しながら歩いている人は多分少し前に流行ったランダムで出現するモンスターを歩いて捕まえるシステムのゲームをやっているんじゃないかな。

 私も親のスマホを貸してもらってやった事あるが、人からの借り物だと長く続けられず直ぐにやめてしまった。

 う〜スマホ欲しいなぁ。でもそんなに使わないかもしれないしなぁ。


 そんな事を考えながら歩いていたら、池の縁に飛び出ていた小石を踏んでしまいバランスを崩してしまった。


「うわぁぁぁぁっ!!!」


必死に両腕を振ってバランスを取るのを試みてみたが、その努力も虚しくそのままバシャーンと音を立てて川に落ちてしまった。

 

 や、ヤバイ、ヤバイ!早く岸に上がらなくちゃ・・・


両腕を駆使してもがけばもがくほど、何故か沈んでいく。


 や・・・ここ、こんなに深かったの?

くるし・・・・・・誰か助け・・・・・・・・・


息が出来ず、脳裏にふと【死】という言葉がよぎった時私は意識を失った。




 ん・・・。あれ?私生きてる?

ぼんやりと直前の事を思い出す。私、池に落ちて・・・それから・・・。

わっ、そうだ!私池に落ちたんじゃん!生きてるって事は誰かが助けてくれたんだよね?お礼をしなきゃ!


・・・って。え?


 ガバッと飛び起きて周りを見ると、池の周りの風景が全く違うものになっていたのだ。

 池は・・・ある。でも周りにあった舗装された道やグラウンドは見当たらず、見知らぬ街というより村(と言ったほうがあってる気がする)みたいな所があるだけだ。


 あれ?やっぱり私死・・・??

いやいや、えーっ??だってここどこさ?


「そんなところに座ってどうしたの?」


 私がパニックになっていると、背後から澄んだ女の人の声が聞こえてきた。

 振り向いてみると、それはそれは可愛らしい私と同い年くらいの浴衣を着た少女が立っていた。

 黒く艶のある髪の毛は頭の両脇に小さくお団子にしており、残りの髪の毛はおろしたままのヘアスタイルだ。

 ふえぇ、美少女だぁ。あ、見とれている場合じゃない、返事しなくちゃ。


「え、と私川に落ちて気を失ってしまって気付いたらここに居たんです!」


 私はありのまま起こった事を説明したのだが、頭のおかしい子だと思われやしないだろうか・・・?


「・・・そう。あなた、呼ばれたのね」


淡い水色ベースの朝顔柄の浴衣を着た少女が顔色を変えず淡々と言葉を紡いでいく。


「神之池は名前の通り、神の池。神に呼ばれたら帰れない」

「えっ?帰れないって?どういう・・・」


私が言い終わらないうちに彼女の背後がざわざわし始めたので言いかけた言葉を飲み込んだ。

 何が起きるのだろうと黙って見ていると、彼女の浴衣の帯が解け、空に舞ったかと思うとみるみる内に太く大きくなっていき、大きな白蛇になった。

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